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間にあったって本当ですか?

1. 元テラ艦隊、降伏

タッチダウンポイント近く。

機関を落とし、通信アンテナを失った

元テラ艦隊七隻が静かに漂っていた。


「降伏確認。監視は、特に必要ないだろう」

ベッリーニは、宙域図に浮かぶ七つの艦影を、一瞥した。

機関を止め、通信も破壊された元々味方の艦が、

今すぐ何かを仕掛けてくるとは考えにくい。

それより、目の前に迫る、

もっと差し迫った脅威に、意識を向けた。


「ヴァリアント駐留艦隊、接近中との報告があります」


副官の声に、ベッリーニは号令をかけた。

「全艦、迎撃態勢へ」


2. ヴァリアント駐留艦隊、急行

ヴァリアント駐留艦隊、十隻。

旗艦のブリッジで、クラウゼは、宙域図を睨みつけていた。

通信途絶の混乱の中、ようやく展開を終えた。

遅れた分を、少しでも取り戻さなければならない。

「まだ、間に合う」

自分に言い聞かせるように、クラウゼは呟いた。

元テラ艦隊が、まだ持ちこたえているはずだという、

根拠なき期待があった。


だが、タッチダウンポイントへ近づくにつれ、

その期待は、あっけなく崩れた。


「司令官。元テラ艦隊、すべて機関停止を確認しました。

 降伏している模様です」


「何だと」

クラウゼの声が、低く沈んだ。

(また、か。アンティカの時と、同じだ)

苦い記憶が、脳裏をよぎった。


3. 野良艦隊の配信

その動揺に追い打ちをかけるように、

駐留艦隊の通信網に、新たな映像が流れ込んできた。


「もう一発、お見舞いしてやる」


シノたちの野良艦隊が、テラ星系の裏側から、

追加の配信を仕掛けていた。

元テラ艦隊が降伏したという事実。

そして、これまで積み重ねてきた、

密輸の告白と、豊かな食卓のメッセージ。


「噓だろ……。テラの奴ら、もう、降伏したのか」


「本国とも連絡取れねえのに、

 これから、どうすんだよ、俺たち」


乗員たちの間に、隠しきれない動揺が広がっていく。

士気は、開戦を前にして、すでに大きく削られていた。


4. 開戦、そして乱戦

「全艦、砲撃開始!」

クラウゼの号令とともに、駐留艦隊が動き出す。

数の上では、亡命艦隊二十隻に対し、駐留艦隊は十隻。

劣勢は明らかだったが、艦の性能では、

ヴァリアントの新鋭艦が、

旧式のテラの艦を上回っているはずだった。


「性能差があるから、まだやれる……!」

だが、その目論見は、すぐに崩れ始めた。


士気を失った乗員たちの動きは、

これまでのような精彩さを欠いていた。

照準がぶれる。回避運動が遅れる。

本来なら、圧倒的な火力差を見せつけられるはずが、

いつの間にか、双方が傷つき合うだけの、

混沌とした乱戦に変わっていった。


「こちら、三番艦、砲塔に被弾!攻撃力半減!」


「五番艦も、機関出力低下!」


亡命艦隊側にも、被害は出ていた。

ベッリーニの旗艦にも、幾度かの直撃があった。

だが、それでも、駐留艦隊の劣勢は、

誰の目にも明らかだった。


5. 通信復旧と側面攻撃

その乱戦の最中、機関を落としていたはずの元テラ艦隊で、

静かな作業が続けられていた。

「司令官、通信、復旧しました」


技術士官の報告に、

元テラ艦隊司令官ソンは目の前の状況を整理した。


「目の前で、まだ、あんな戦いが続いてる」


ソンは、モニターに映る乱戦の光景を、

しばらく見つめていた。

数の上でも、士気の上でも、駐留艦隊に勝ち目はない。

それでも、その戦いは、まだ終わっていなかった。


「砲門、使えそうか」


「機関を一度落としたのでフルパワーは無理ですが、

 8割程度ならいけます」


「十分だ」

ソンは力強く命じた。

「狙いは、駐留艦隊の旗艦。横から、一撃を入れる」


復旧したばかりの砲門から、三発の砲撃が放たれた。

乱戦に気を取られていたクラウゼの旗艦は、

その側面からの一撃に、まったく反応できなかった。


「旗艦、被弾! 機関部、損傷……!」

戦艦は、大きく傾きながら、中破した。


「な、なぜ、降伏したはずの艦から……!」

クラウゼは、傾くブリッジで、呆然と呟いた。


6. 「間に合いました」

砲撃の直後、ベッリーニの艦に、一つの通信が入った。

「こちら、元テラ艦隊。ソンです」


「貴殿は……」


「何とか、間に合いました」


その短い一言に、これまでの経緯のすべてが、

込められていた。

最後の一撃を、味方として放つ。

その選択の重さを、ベッリーニは、静かに受け止めた。

「感謝する」


7. 降伏勧告、そして降伏

旗艦の中破という、想定外の一撃に、

駐留艦隊の戦意は、完全に折れた。


「全艦に告げる。これ以上の抵抗は、無意味だ」

ベッリーニからの降伏勧告が、乱戦の宙域に響き渡る。


クラウゼは、傾いた旗艦のブリッジで、

しばらく、沈黙していた。

数でも、士気でも、勝ち目はなくなっていた。

そして、元見方からの一撃で、完全に打ちのめされていた。

アンティカでの敗北、そして、今回の敗北。

二度目の撤退の判断すら、

もはや、自分に許されていないことを、彼は悟っていた。

「……全艦、砲撃を止めよ。降伏する」

その言葉には、これ以上の抗いようがなかった。


8. オードリーの述懐

元テラ艦隊旗艦で戦闘の一部始終を見届けていたオードリーは

モニターの前に立ち尽くしていた。

(降伏したはずの艦隊が、決定打になった)

その皮肉な結末を、オードリーは、しばらく、噛み締めていた。

(間に合った、か)

オードリーの脳裏に、ヘルガの言葉が、再び蘇る。

飯の話に構う余裕などない、統治の芯を腐らせるだけだ。

その言葉を、彼女は、否定しきれなかった。

だが、今、目の前で起きたことは、ヘルガの言葉を否定するものだった。

(レイモンド。あんたの言ってたこと、やっぱり、正しかったのかもな)

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