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支援するの意味がすり替えられたって本当ですか?

1. 変わり始めたキャンプの空気

アンティカの避難民居住区。

亡命政権樹立から数日後、そこに漂う空気は、

当初の安堵とは、明らかに違うものへと変わりつつあった。


「本当に、取り戻せるんですかね、テラ」

「うちの婆さん、まだあっちに残ってるんだ。

 ヴァリアントの配給列に、今日も並んでるはずだ」

「今なら、あの人たちが動いてくれるかもしれない」


飯をもらった感謝だけではもう終わっていなかった。

ここには生活がある。

ならば、故郷にも同じものを与えらえるかもしれない。

その期待が避難民たちの間に広がっていた。


その熱を、レイモンドは注意深く見ていた。

(民衆は旗を求めている。

 元査察艦隊は、帰る場所を求めている。

 商人たちは、交易再開を求めている。

 議会は、勝ち筋を求めている)

彼にはこの熱気がただ見せるためだけの料理の熱気に見えていた。


2. 「自由な星系再建集会」

ラングレーは、亡命政府の名義で、

アンティカの補給ドック発着区画に集会の場を設けた。

名目は、避難民への説明と、復興方針の共有。

だが実態は、出撃を後押しする空気を固めるための場だった。

シノたち、ベッリーニたち、議会関係者。

そしてレイモンドにも、丁重な招待状が届いた。


「代表にも、避難民へ一言、励ましをいただければ」

その断りづらい頼み方に、レイモンドは眉根を寄せた。

(いやいや、なんで俺が、そんな場に出るんですか)

だが「励ましの一言だけ」という言葉に、

結局は押し切られてしまった。


その会場入りの直前、

廊下でバローがレイモンドを呼び止めた。

「亡命官僚に、良い舞台装置にされる気分はどうだ」


「……笑えないです」


「断れるか」


「この空気で断ったら、避難民まで敵に回りますよ」


バローは、杖の先で床を小さく叩いた。

「なら、せめて、自分の言葉だけは失うな」

その一言だけを残して、バローは会場の奥へと消えていった。


3. 前のめりな現場

会場の周辺では、すでに現場が動き始めていた。

「シノさん、今行けば先行者利益ですよ。

 ルート、押さえましょう」

「ああ、これがうまくいけば、あたしらが流通を握れる:

商人たちの声に、シノは力強く返事した。

引っかかりはあった。

だが、それを口にする間もなく、

周囲の熱気に押し流されていった。


一方、ベッリーニの艦隊では、若い士官たちの間に、

久しく見なかった士気の高まりがあった。

「本国奪還だ。今度こそ、我々にも役目がある」

ベッリーニ自身も、この熱に完全に水を差すことはできずにいた。


集会が始まる。避難民、商人、元査察艦隊の乗員、

議会関係者が、発着区画を埋め尽くしていた。

ラングレーは、丁寧に、格調高く語った。

「我々は、復讐のために動くのではない。

 ヴァリアントの統制に閉ざされた故郷を、

 これ以上放置しないためだ。

 テラもアヴァロンも、支配と服従ではなく、

 共に自由な星系として生きるべきだ。

 自由な星系を、取り戻そう」


避難民たちの間から、大きな拍手と歓声が上がった。

「そして、この支援に力を貸してくださる、

 アヴァロン代表、レイモンド・クラーク閣下よりお言葉を」


ラングレーが、流れるようにレイモンドを促す。

拍手と、避難民たちの期待の眼差し。

もう、逃げ場はなかった。

レイモンドは詰まりながら、自分の言葉だけを口にした。

「俺、正直、難しいことは分かんないです。

 偉そうなことも言えません。

 ただ……配られたものを黙って食うしかないより、

 みんなが好きなものを食べられる方が、いいですよね。

 そのために必要な支援なら、アヴァロンとして、力になります」

それだけだった。


発言が終わった瞬間、会場が一気に沸いた。

避難民は歓声を、商人たちは「始まるぞ」というざわめきを、

元査察艦隊の乗員たちは敬礼を返した。


ラングレーは、すかさず声を張り上げた。

「アヴァロン代表も、支援を約束してくださいました!」

嘘は言っていない。

だが、レイモンドの曖昧な一言は、

その瞬間、明確な出撃支持へと、都合よく塗り替えられていた。


4. 動き出す既成事実

集会の直後から、すべてが一斉に動き始めた。

シノたちは補給と航路の手配を、

ベッリーニは艦隊の出撃準備を、

亡命政府は「帰還作戦」名義の文書整備を、

議会は事後承認めいた予算措置を、それぞれ進めていった。


(いやいや、俺は支援するって言っただけで、

今すぐ行けなんて言ってないんですけど!?)

その叫びは、もう誰にも届かなかった。


出撃準備の進むドックの明かりを、

レイモンドはただ、呆然と見つめていた。

そこへ、バローが静かに歩み寄ってくる。

「言葉とは、便利なものだな、若造」


「全然便利じゃないですよ」


「お前は、支援と言った。

 連中は、進軍と聞いた。それだけのことだ」


「それ、全然『それだけ』じゃないでしょう……」

レイモンドの呟きに、バローは何も応えなかった。

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