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【短編】 盲目な君に約束の花を ~獣人を拾った魔法使いは、どうやら密売組織の摘発にも巻き込まれたようです~  作者: 廿楽 亜久


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 荷車に乗ったルミアは、グランとオノンの姿に気がつくと、何とも言えない表情をしていた。


「いるかもなぁ……とは思ったけど、わざわざ文句言いに来た?」

「言われるようなことをしたのか?」

「してないわ。むしろ、こっちが文句を言いたいし、なんだったら、心優しいファインプレーだと言ってほしいね!」


 意外なことに、魔道具の音はしなかった。


 代わりに、口を塞がれている男たちが、何かを訴えるように声を上げていた。

 その声に、グランが慌てて振り返るが、ルミアは小柄な男の方に目をやっては、ため息をついた。


「あ、その人」

「はい……? 知ってるんですか?」

「うちの店で白濁導水を売らないかって来て、店長も少しだけならって言い出しちゃってさ」


 仕方なく、小柄な男の指定した通り、こうして荷車を引いて、仕入れに来たのだ。

 本来ならクロルが取り行くところ、白濁導水であったため、適当な理由をつけて、仕入れ役を交代してもらっていた。


「それで、どういう状況……? まだ、デザートウッド見つかってない感じ?」

「いえ、その……なんとなくの場所はわかったのですが……というより、ルミアさん、こういうの慣れてるんですか?」


 普通、こんな男たちが捕まっていたり、血を流していれば、多少は動揺しそうなものだ。

 だが、ルミアは気にした様子もない。


 魔獣の時もだが、魔法が使えるとはいえ、一般人にしては、随分と肝が据わっている。


「オノンが来る時、だいたいこんなんだよ」

「待て。それは語弊がある。数回巻き込んだことはあるが、多くはない」


 どちらの言葉にも魔道具は反応しないことに、グランも静かに唸るしかなかった。


「ふぅん……」


 今までの事を聞いたルミアは、小さく考えるように声を上げると、オノンの方へ目をやる。


「じゃあ、もうさっさとデザートウッド見つけちゃったほうが良くない? どうせ、警備隊が取り押さえても、オノンは呼ばれるわけじゃん?」

「そうだが、我々はふたりだからな。後れを取るつもりはないが、その方が安全だし、向こうも抵抗してこないだろう」

「そりゃ、まぁそうだけど……」


 ルミアは唸るように声を上げると、杖を取り出し、構えた。

 すると、ルミアの姿が消えた。


「これなら、穏便に済むんじゃない?」


 またすぐに姿を現すルミアに、悲鳴を上げたのは男たちだけで、オノンは呆れたように眉を潜めていた。


「お前はまた妙な魔法を……妙なことに使っていないだろうな?」

「使ってないって」


 燻った音が響く。


「その魔道具、止める方法ないわけ……?」

「わからないな」


 音は鳴らなかった。


「……あの、ルミアさん。それは一体……」

「これ? これは”姿隠し”っていう姿が見えなくなる魔法で――――」


 おずおずとルミアに問いかけるグランに、ルミアは自慢気に両手を広げて、今の魔法について答えるが、その途中で言葉に詰まる。

 そして、ゆっくりとグランを見上げると、開きかけていた口を閉じて、手で顔を覆った。


「どうりで、グランの反応がないわけだ」


 目が見えないグランにとっては、姿が見えようが見えないが、関係ない。

 ひとりだけ、妙に反応がなかった理由も、本当にただただ状況がわからなかっただけだ。


「あ、いえ、ルミアさんが魔法を使ったことはわかったのですが、その……ほとんど何も変わってなくて……」


 申し訳なさなのか、徐々に声が小さくなり、フードがなかったらきっと耳も尻尾も垂れていることが、なんとなく想像がついてしまった。


「大丈夫大丈夫。気にしてないって」

「す、すみません……」


 大きな背を少し丸めているグランに、ルミアは苦笑いを溢しながら、手を伸ばすと、フードの下に手を突っ込んだ。

 そして、案の定、ぺたりと垂れているグランの耳を「よしよーし」と撫でるのだった。


「それで、荷車とかは一旦、この辺に隠しておく?」

「行く前提にするな……確かに、その魔法はすごいが……」


 ”姿隠し”の魔法を使いながら侵入するなら、ルミアを一緒に連れて行かなければいけない。

 それはグランとふたりで潜入する以上に、危険を伴う。


「実際やったら、ものすごく怒られるからやらないけど、関所の持ち物検査で悪いことしてみたい的な」

「絶対やるなよ」


 本当にやりかねないルミアに、オノンも呆れたように睨むが、大きくため息をつくと男たちの方へ目をやった。


 青い顔をしている小柄な男に、ルミアのことを何やら訝しげに見つめている男。

 小柄な男はともかく、大柄な男に関しては、このまま放置してもロクなことにならない。


 オノンは、何も言わず、大柄な男を気絶させると、ルミアの方へ近づいた。


「あとでこの荷車は借りていいか?」

「こいつら運ぶの……? さすがに、新品を汚したら怒られそうなんだけど……」

「今、止血してるし、しばらくしたら止まっているさ」


 オノンの言葉に、ルミアもグランも意外そうに、オノンの方へ顔を向ける。


「あくまで、姿隠しの魔法だけだからな。他のことは、私たちに従う。いいな?」

「グラン。聞いた? 珍しくオノンが折れた」

「もしかして、ルミアさん、普段からこんな感じで、師匠に無茶振りしてます?」


 お互いこっそりと小声で口にする言葉に、ルミアも少しだけ物言いたげに、グランの事を指さし、オノンへ目をやるのだった。


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