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【短編】 盲目な君に約束の花を ~獣人を拾った魔法使いは、どうやら密売組織の摘発にも巻き込まれたようです~  作者: 廿楽 亜久


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 起伏の激しい斜面に、さらさらとした土質がオノンたちの調査を難航させていた。


「すみません……自分の目がもっと見えれば、簡単に見つかったかもしれないのですが……」


 グランの魔眼が魔力を見れるものでも、全てを見通せるわけではない。

 魔力的な壁があれば、普通の視界と同じように、その先は見えないし、あまりに小さな魔力を見分けることはできない。


 デザートウッドの吸い上げる魔力であれば、その流れは見える可能性がある。だが、豊かな森の中において、少数のデザートウッドの吸い上げる魔力は、相対的に大きなものではないのかもしれない。

 もしくは、もっと地中深くで、それこそグランの目が届かない場所なのか。


「気にするな。私だけだったら、もっと苦労していたよ」


 水の運搬の事を考えれば、行き来がしにくい場所に植えるとは思えない。

 見張りとは別のルートで、デザートウッド本体の場所へ辿り着ければよかったが、それは難しそうだ。


 オノンも少し目を細めると、町に繋がる道の方へ目をやった。


「それで売れ行きは?」

「ダメっすねぇ……前みたいな学者の多い町なら、説明しなくても買ってくれたってのに、学がねェ奴ばっかで」

「本は読む連中だって話だったんだけどなぁ」

「あ、でも、もう一ヶ所、置いてくれる店があって、このあと取りに来るって話っすよ」


 ガタイのいい男が、小柄の男の言葉に、小さく唸り声をあげながら歩いていた時だ。

 突然、背後から抑え込まれた。


「なにしやが――」


 男が叫ぶ前に、目の前に突きつけられる刃に、男は息をつめ、その刀を握る眼帯の男を睨む。

 手下である小柄の男は、大柄の男に取り押さえられ、動けないようだった。


「おいおい。穏やかじゃねェな。色男。俺らを山賊か何かと勘違いしてるのか?」

「山賊であってくれれば、話が早い。違うというなら、大人しくこちらの質問に答えろ」


 どこかの組織の人間ではあるだが、その服装は警備隊ではない。


「デザートウッドはどこにある」


 だが、問われた内容は、男たちが今行っている商売の内容だった。


 昔の知り合いから、頭のいい連中から、金を巻き上げられると聞いて始めた商売だったが、どうやら金持ちの連中に目をつけられたらしい。


「知らねェよ。俺は見張りと荷運びで雇われただけだ」


 慣れたように嘘を口にすれば、くぐもった鈴の音と共に、切っ先が揺れた。


「嘘をつくなら、少し痛い目を見てもらうことになる」

「ま、待てよ!! 嘘じゃねェ!!」


 本気の目に、男は必死に弁明の言葉を続ける。


「そもそも、俺たちの雇い主は、ここの領主だ! 領主から、水源の確保の依頼があってだな――」


 直後、男の足から血が溢れ、悲鳴が上がる。


「次は腕を切り飛ばす。腕が惜しいなら、正直に答えろ」


 脂汗を流しながら、オノンを睨む男に、オノンは冷たく刀を向けるのだった。


 ふたりを拘束した後、グランは分厚いフードの下で不快そうに耳をはためかせていた。

 今は聞こえないが、先程まで耳鳴りのように、くぐもった鈴の音が聞こえていた。


 聞き覚えのある鈴の音ではあるが、森の中で聞こえるには、違和感のある音。


「師匠。先程の音なんですが……」

「これか?」


 オノンが取り出したのは、光を放っている嘘を言うと音を鳴らす魔道具だった。


「使えると思ってな。ルミアと別れる前に、魔力を込めてもらっていた」


 ルミアには「ずっとチリンチリン言って、うるさいよ?」と心配されたが、そんなに音を鳴らすのはルミアと、先程の男たちくらいだろう。

 実際、オノンとグランだけで行動している時には、音は鳴らなかった。


「つ、つまり、先程の言葉は全て嘘だったと……」


 随分と強気に男を尋問していると思っていたが、理由はあったらしい。


「そもそも、デザートウッドに関して調査依頼をしてきたのは、ここの領主だよ」


 つまり、この魔道具が無くても、男たちの言葉が嘘だとはわかっていたということだ。


「別の町で、捕まった奴らが苗木を売った相手が、この辺りにいるという話だったが、どうやら彼らで間違いないみたいだ」


 ふたりの話では、デザートウッドは、この先の古い枯れかけた大木の根に沿うように植えているそうだ。

 この情報を領主に伝えれば、警備隊を回してくれるだろう。

 拘束したふたりを連れて行けば、証拠の代わりにもなる。


「…………グラン?」


 だが、ふとどこかに目をやっているグランに、オノンも不思議そうに声をかけた。


「はい……っ! なんでしょう?」

「何かあったか?」

「い、いえ……その……」


 カラカラと車輪の回る音と鳥竜の足音に、誰か来るのかと、拘束しているふたりと共に森の奥に隠れようとするオノンに、小さく唸りを上げているグラン。


「師匠……たぶん、ルミアさんです」

「…………は?」


 驚いたように目を瞬かせるオノンに、グランも布の上からでもわかるような困った表情で、その音の方へ顔を向ける。

 そしてすぐに、鳥竜が引く荷車に乗るルミアがやってくるのだった。


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