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【2/15 書籍3巻発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第十二章

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お狐様、月岡温泉に行く15

 翌日の朝、7時ちょうどにイナリたちの泊まる宿の駐車場に覚醒者協会日本本部の高速ヘリが着陸した。

 地元の職員による人払いも行われた中での着陸だったが……当然、例外はいる。


「おはよう、イナリ。良い朝ね」

「うむ、おはよう月子。よう来てくれたのう」

「いいのよ。変な奴が来てイナリを悩ませるのは耐えられないし」

「儂の為とは。有難いのう」


 ニコニコと本当に嬉しそうに微笑むイナリにつられて笑う月子だが……信じられないものを見る目で見ているサリナに気付くと一瞬で真顔に戻る。先程までの笑顔は幻だと言わんばかりだ。


「何見てんのよ。見世物じゃないわよ」

「いや、見世物でしょ……何度見ても本人だと思えないわ」

「うるさいわね。イナリのおかげで私が来たんだから。感謝しなさいよね、イナリに」

「そこで『私に』じゃないあたりがほんとに……でもありがと」


 事実、その辺の魔科学者がチームを組んでくるよりも月子一人のほうが頼りになるのだ。

 今後のことを考えれば絶対に良いが……そんなサリナをそのままに、月子はイナリの手を引いて宿の中へと歩いていく。


「とにかく、まずは朝ごはん食べましょ。調査の間のお金も全部日本本部から出るから気にしなくていいわよ」

「あー、うむ。そうじゃのう。一日の計は朝食にあり、と言うからの」

「そういうこと」

「ちょっと私を置いて行くんじゃないわよ」


 イナリを引っ張っていく月子の後をサリナも追うが……これが本当にあの人間嫌いかと思うと、サリナは何度見ても信じられないのだ。

 確かにサリナもイナリの家に出入りするようにはなっているが、あの家に行くと「人の意見を聞く月子」や「人前に出ている紫苑」、「爽やかなタケル」といった不可思議なものを見られるので、タチの悪い幻を見ているような気分になる。

 あの三人をどう変えたか、サリナとしては凄く気になるのだが……まあ、比較的何でも教えてくれるイナリでも、それは教えてくれないだろう。

 まあ、その話はさておいて。

 今朝の朝食は彩りも豊かな和食だ。

 炊き立てのお米をおひつからよそい、焼き鮭に卵焼き、各種のご飯のお供や味噌汁……そして刺身までついている。


「健康的な食事よね」

「そうじゃのう。特にこの、ご飯のお供じゃったか? 実に良いのう……この黒いのは海苔かの?」

「海苔の佃煮でしょ?」

「日本はやはりご飯の国じゃと感じるのう。海苔だけでも美味いのに、佃煮にしてしまうとは。しかも見よ! 焼き海苔までついておる!」

「そうね。でも私、この大きい梅干しは苦手なんだけど」

「健康に良いと聞くが……どうしてもだめなら仕方ないのう」

「挑戦してみようかしら」


 おばあちゃんと孫。

 そう言いたくなるのを必死でサリナは我慢する。

 和気あいあいと朝食を食べる、おばあちゃんと孫。

 同年代くらいの少女の同士の会話に見えるのに、浮かんでくるのはおばあちゃんと孫。

 まあ、確かどちらも20を超えていたはずだが……詳しい年齢を聞くのは乙女のマナー違反なのでサリナは聞かないけれども。


「しかし食事は彩りだとは常々ヒカルにも言われておったが……確かに見た目にも良いのう」

「でもほっとくとおにぎりだけ食べてるんでしょ?」

「他のものも努めて食べるようにしておるよ?」

「普通に食べなさいよ」


 月子が偏食を諫めるお母さんみたいになっているが、サリナが知っている月子は完全栄養食とかいう栄養バーを食べている人間だったはずだ。まあ、イナリに会って宗旨替えしたのかもしれないが、たぶん一人の時は栄養バーを食べているのだろうな……などとも思うのだけれども。


「あ、この明太子美味しいわね……」


 わざわざ言うのは無粋なので明太子をご飯に乗せて食べていれば、イナリの興味が一気にサリナに向くのだ。


「うむうむ。このめんたいこ、じゃったか? 実に美味いのう。この辺の名物かのう?」

「明太子って魚卵でしょ? 昔は博多がどうとかいう話も聞いた覚えがあるけど、今はどうかしらね」


 少なくともサリナは新潟の明太子事情は知らないが、月子は明太子事情はともかくイナリの食事事情の話は好きなようで、楽しそうな笑みが口の端に浮かんでいるのが分かる。


「ほんとご飯に合うもの好きよね」

「そうかもしれんのう。ふりかけでは食べておったんじゃが」


 まあ、昨今の漁業事情では中々イナリの移動範囲内であるスーパーでは売っていない。

 魚は今では護衛を雇って獲りにいくものなのだから。


「ふーん、そうなの? じゃあ今度、美味しいの探しておくわ」

「おお、月子がそう言うのであれば、ほんに素晴らしいものを見つけられそうじゃのう」

「あったりまえでしょ? 任せておきなさいよ。あと、この話はひとまずは他の連中には秘密よ」

「うむ、それは構わんが」


 嬉しそうな……本当に心の底から嬉しそうな月子を見て、サリナはもう何も言わない。


(いいけど……私、すごい空気ね……でもなんか普通の人に戻ったみたいでちょっと気楽だわ……)

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― 新着の感想 ―
まあこれからの関係性がこういう感じに空気が構築されるってことで常識人寄りな枠になりそうw
イナリちゃんとそれ以外で態度が全然違う月子ちゃんかわいいww 不可思議なものwwwwまぁイナリちゃん相手じゃないときの普段の様子がクセが強いもんねwww
なんか普通に温泉旅行に来た感じになってるwさて苦労人サリナの寛ぎタイムはいつまでもつのだろうかw
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