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【2/15 書籍3巻発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第十二章

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お狐様、月岡温泉に行く11

 酒、と一口に言っても色々ある。

 当然だ。酒とは人類の積み重ねた歴史そのものだ。

 日本最古の酒は縄文時代にさかのぼるとされており、神話を紐解けば須佐之男命が八岐大蛇退治に酒を用いている。

 海外でも同様であり……人類は酒と共に歩んできた。

 勿論飲み過ぎはよくないとか、健康的な飲み方の話とか……まあ、色々あるけども。

 覚醒者みたいに人類を超えた肉体を持っている者たちにそんな話をしてもあんまり意味がない。

 とにかく酒の歴史は長く、種類もたくさんある。

 軽く分類しただけでも日本酒、ビール、ワイン、その他諸々……言葉にすれば並べるだけで疲れそうな程にあるし、詳しく分類すれば呪文か何かのようにすら思えてくる。

 そこにカクテルのようなものを混ぜれば、もはや語るだけで半日は過ぎそうだ。

 とにかくそれぞれに素晴らしい歴史があり、どれが上とか下とかは存在しない。

 さて、そんなわけで旅館のイナリとサリナの部屋の机の上には日本酒とワインが幾つも置かれていた。


「おおー……結構な本数じゃが飲めるのかえ?」

「このくらいなら少ない方よ。ていうか地元の酒でもいいのを厳選したんだから」

「ふむ。新潟は米どころじゃからのう。酒が美味いのも当然というわけかの?」

「それが当てはまるのは日本酒でしょ。ワインもあるんだから」


 新潟がワインを作るのに適した土地であるという話もあるらしいが、まあとにかく新潟では日本酒も酒もたくさん作られている。

 そこに温泉もあるのだから、まさに素晴らしい……のだけれども。


「実際、どうかのう」

「何がよ」

「此処の振興のことじゃよ。ずっと気にしとるじゃろ」


 イナリは日本酒を、サリナはワインを選び飲んでいたが……イナリに言われ、サリナはワイングラスを手の中でクルリと回しながら溜息をつく。

 まあ、確かに考えていた。いた、のだけれども。


「……そんなに分かりやすかった?」

「まあ、ずーっと真面目な顔しとるからのう。なんじゃ、そんなにあのだんじょんはダメだったのかの?」

「ダメとは言わないわよ。まあまあって感じ。ただ、絶対に此処に通いつめようって思えるほどのものはないわよね」


 簡単に言えばインパクトがない。

 異界型ダンジョンであり悪魔系モンスターが出て、悪魔をイメージするようなアイテムが出る。

 それはいい。しかしそれだけだ。しかも仲間割れを誘発するようなギミックがどう評価されるか?

 ある程度の人気要素になるだろうと見込んではいるが、サリナの見込み通りにいく保証はない。

 いっそ、【翼ある山羊】の誘いを受けたほうがインパクトとして大であったのは間違いない。


「……でもなあ、めっちゃ胡散臭いしアイツ……」

―【翼ある山羊】は心外だと抗議していますー

―【暗がりの龍】が自分ならば安心だとアピールしていますー


 サリナはここぞとばかりに出てくるウインドウをパタパタと掃うとワインをもう一口飲む。

 少々強めだが甘くて飲みやすいワインだ……この近くに出来たワイナリーらしいけども、自分との契約を持ちかけてみようか、などと考えて。


―【冥界の統率者】が自分と契約しようと言っていますー


 再び出てきたウインドウをまた掃う。

 ワイナリーのことを考えているのだから、出てこないでほしいのだけれども。


「勧誘が激しいのかえ?」

「あー、まあ空中で手を動かしてたらそういう反応になるわよね……ま、そんな感じ。さっきのダンジョンで会った奴もいるわよ」

「ふむ……あまり酷いようであれば言うのじゃぞ。手だてを考えるからの」

「ええ、そうするわ」


 まあ、今のところ問題はない。無理矢理契約させられるわけでもないのだから。

 それに……ダンジョンでの【翼ある山羊】の言葉を見る限り、いざという時のための手段を残しておくのもいい。


「ねえ、イナリ」

「うむ?」

「あの神の如きもの、才ある者の確保だとか準備だとか言ってたわよね。何か思い当たることある?」

「……ふむ」


 イナリが思い浮かべたのは、東京第1ダンジョンの最下層にあったボスモンスターのことだ。

 あれもまた準備といえば準備であるのだろう。

 世界の……いや、世界を超えた大枠で何か準備が進んでいる。


「でうす・えくす・まきな……じゃったか」

「機械仕掛けの神のこと? え、何処かに居るの?」

「うむ。稼働しない代物ではあるらしい、がの……」


 とはいえ、それがいつまでもそうであるなどという根拠もない。

 だが、サリナはイナリの話を聞いて頭を抱えこんでしまったようであった。


「噓でしょ……そんなのがいるの? ええ……ラスボスじゃない。どう考えても敵に回るネーミングだし……」

「まあまあ。いざとなれば儂が壊してやるからの。安心せえ」

「可能かも、って思えてくるわ……」

「うむ。ほれ、日本酒も飲むかえ?」

「飲む。飲んで忘れるわ……」


 絶対明日以降も自分が考えてしまうことを知りながら、サリナはイナリに注がれた酒を飲みほしていた。

Tips:サリナはトップランカーの中でも常識人。だから苦労人。

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― 新着の感想 ―
『神の如きもの』であって神ではないですからね。本物の神の敵ではないでしょ。
冥界の神はどの神話かによるかな エジプト系:たぶん大当たり。エジプト神話は死に関して真摯に向き合ってる神話なので ギリシャ系:怪しい。どちらかと言えば死を危険なものとして見る文化系なのもあるが、『ギリ…
個性豊かな上位層の中で(主に常識的な枠で)奮闘を期待してます!更に知ってしまった以上は忘れられない爆弾のこともw
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