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君と、新しい日に

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします!

 すぅ、と穏やかな寝息が腕の中から聞こえてくる。

 それに一哉は愛おしそうに頬を緩めながら、背中を一哉の胸に預けるようにして眠っている楓を起こさないようにそっと頭を撫でる。すると、くすぐったそうにしながらも気持ちよさそうに表情をほころばせてくれるのだから、猫のようで可愛らしい。

 ついさっきまでは夜遅くまで起きているのが苦手なくせに、眠そうな目をこすりながら起きていたけれど、温かそう、とぼんやりとしたまま一哉の腕の中にもぐりこむと、すぐに気持ちよさそうな寝息を立ててしまった。

 それすらも愛らしくてしょうがない。

 と、一哉の表情に浮かぶのは穏やかな笑みだけである。


『――さて、年明けまであとわずかとなりました。皆さんはどうお過ごしでしょうか?』


 と、テレビから特番の司会者の楽しそうな声が聞こえてくる。

 つられるように画面の端に表示されている時刻に目を向けると、年が明けるまであと三十分を切っていた。それに一哉はふっと穏やかな微笑みを浮かべると、腕の中で心地よさそうに眠っている楓へ視線を向けて表情をほころばせる。

 こうして大切な人の温もりを感じながら年が明けるのを待つというのもいいものだと、一哉はこの幸せなひとときを噛み締めるようにそっと目を瞑る。

 脳裏に浮かぶのは今年一年であったこと。

 特に大きな怪我も病気もなく平穏に過ごせた一年だったと、心の底から思える年だった。代わりに何か特別にいいことがあったわけではないけれど、それでいい。

 楓と、小さな幸せを見つけて笑っていられるなら、それだけで一哉は満足しているのだから。大切なのは最愛の人と一緒にいられること。それさえあればいい。

 そっと、一哉は腕の中で眠っている楓へと視線を向ける。

 とても幸せそうな寝顔を見ていると、このまま寝かせてあげようかと思ってしまうけど、「年明けまで起きてるの」と言っていたので、このまま起こさずに放っておいたら拗ねてしまうかもしれない。

 ずっと寝顔を見つめていたい衝動を抑えて、楓の肩を揺すって起こすことにする。


「そろそろ起きな、楓」

「……んぅ、どう、したの?」


 楓は一哉の胸にしがみつくようにしながら、眠そうな声をもらす。

 胸にしがみつきながらとろんとした瞳で上目遣いは反則だろ、と一哉は内心で赤面しつつ、それを表に出さないように必死にこらえる。


「もうすぐ、年が明けるよ」

「……とし、あけ?」

「ああ、あとちょっとで新年だよ」


 ゆっくりと言い聞かせるように、穏やかな声をかける。

 とろん、と微睡んだような瞳で一哉の黒い瞳を見つめながら、楓はふっと穏やかな笑みを浮かべてくれる。


「……ん、ありがと」


 そっと、楓はその白い指を一哉の頬に触れさせる。


「どういたしまして」


 楓の手を握り返しながら楓の華奢な体を抱いて、一哉は穏やかに返事をする。

 それに楓はうれしそうに表情をほころばせて、一哉の腕に手のひらを添える。


「……かずくん。夢を、見てたよ」

「ん? どんな夢だ?」

「ふふ、秘密だよ」


 と、微笑んではぐらかされてしまう。

 それでもその夢が楽しいものであったことだけは、その幸せそうな表情から伝わってくるからそれでもいい。


「あっ、そろそろだね」


 楓はテレビでカウントダウンが始まるのを見て、そっとこれまでの日々を懐かしむように栗色の瞳を細める。


「……十、九、八」


 穏やかな、期待を込めたような声でカウントが刻まれる。


「七、六、五」


 楓に続けるように、一哉もカウントを口にする。


「四、三」


 と、楓の弾んだ声。


「二、一」


 と、一哉の落ち着いた声。

 それは新しい楓との日々へのカウントダウン。

 すっと、その瞬間は誰もが息を呑む。



「「――零」」



 ごぉーん、と遠くから除夜の鐘の音が聞こえてくる。

 声が重なったことに笑みを交わしながら、楓はそっと一哉の手を握って、


「かずくん、あけましておめでとう」


 と、とてもうれしそうな笑顔を見せてくれる。

 それは今年初めての、楓の見せてくれた笑顔だった。


 どうでしたでしょうか?

 今回はかなり短めのお話です。改めまして、あけましておめでとうございます。今年も一年、よろしくお願いいたします。

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