第106話 仮のパーティー○
アクアスナイプ事件後、ルーツとイルーシィは仮のパーティーの繋がりを保ちつつダンジョン攻略を進めていった。そして319層を降り、320層を攻略し、321層まで降り現在この層を探索、攻略中であった。
「じゃ行くか」
「じゃ、じゃないよ」
「ん?」
「休憩」
「休憩? ……あそうか! すまないイルーシィ」
「あそうか、って……あなたね水ぐらい飲みなさいよ」
「あ、あぁそうだな忘れてた!」
「はぁ……自己管理もできないなんてよくそれで……あ、ごめんなさい、まいいわ」
「ぷはぁ! いやそこで止められても何言われたか分かるから!」
「そっ」
「そっ……て」
「疲れた」
通路が一つのみ、袋のように行き止まりになっている青色の草が一面に生えた部屋。イルーシィは背負っていた妖精の悪戯のバッグから取り出した黄色いマットを2つに折り重ね敷きその場所に座り込み休んだ。
【妖精の悪戯のバッグ】ダンジョンのモンスターから極希にドロップする非常に珍しい高価なバッグ。見た目よりも物を詰め込める容量が多い魔法のバッグだ。入る容量の大きさや実物のバッグの大きさにより売値買値も大きく変わる。妖精の悪戯なのだろうか中に入れた食べ物がたまに齧られている形跡がよく見られる。バッグに潜む妖精のために甘い果実酒の小瓶などを中に入れておくと良いと古くからダイバーたちの間で言われ今日まで伝わってきている。
イルーシィは水を飲み、卵とハムとアスパラのサンドイッチを食べ完全に警戒を解き休憩タイムへと移行したようだ。
「あなたは食べないの?」
「ん、あぁ俺は食べると剣が鈍るから……ナッ!」
そう言うと、イルーシィから離れた場所でルーツは元気よく舞うように鉄の剣で素振りを始めた。
イルーシィは疲れを知らない彼のその様子を、呆れながら見ながらサンドイッチを一口。
「はぁなにそれ。バカみたい、はむっ」
これが獣と水のパーティーのお互いの距離なのだろうか。ダンジョンに潜り試しかけ合わせていくお互いのチカラ。仮のパーティーである若いふたりのダイバーたちの荒いチカラは行手を阻むダンジョンのモンスターたちとぶつかり合いまだまだ磨かれていくのであろう。




