メリアの依頼は今
吹奏楽の人に言おう。
課題曲のⅣ、「プロヴァンスの風」、かっこいいけどめんどくさい。
全て終わった日の翌朝。開放感に満たされました。
これからすることを確認する日にする。休みにすると、後日にズルズルと引きずりそうだ。
朝食をとった後、自分の部屋(仮)に行き、ゆったりしながらやらないといけないことを確認する。
まず、メリアの依頼。ブロードソード亜種を鍛え上げること。
これはぼちぼちやっていけばいいだろう。正直言って、材料が足りん。
第二魔素変化体・・・・・・魔鉄は、昨日潰した(潰された?)可哀想な商会が所持していた物でなんとかたりる。しかし、水の魔石はなかなかに見つからない。見つかっても高い。あ、でもメリアから資金は出るから大丈夫か。
うん、でもヒューマオーガの角を混ぜる方法が微妙なんだから、もう少し後に作ることだろう。
次に、俺の記憶障害について。これが落ち人のなんかなのか、俺だけなのかは分からんが、原因は突き止めておくべきだろう。怖いし。
あと、忘れたくなかった事も、忘れてしまった。取り戻せるなら取り戻したい。
大事な記憶だしな。
他にも色々あるんだが、その中でも大切なのは約二名の女性のことだ。
あ、トルナロとメリアじゃないぞ。
その女性2人とは、まあ、師匠とハパルのことだ。
ここ数日間の間に、その二人の名前をよく耳にした。で、もしかしなくても、あの二人が黒幕だったというわけだ。
聞くところによると、ハパルは元々クライセルが気に入らなかったらしい。さらに奴がメリアに手を出して敵意に変換され、メリアの両親に手紙を出し、ライクという魔術工業者、つまり師匠の協力を得る。
で、二人が手を組む。ライクの手伝いもあり、無事クライセルが正当にちょっかいを出せなくなった。
ここで聞きたいのだが、師匠の手伝ったことは?ということだ。
割と大きく動いたように聞こえたんだが、手伝ったことはひとつだけらしい。アサンと俺を合流させることだ。まあ、ロイクがそこにいたのは予想外らしいが。本当だろうか?
その方法は、びっくりなんだが、通常の二倍の強さのヒューマオーガらしい。
ていうか、二倍て。確かに広範囲にクレーターが出来たり、風圧だけでかなり吹っ飛んだりとか、色々おかしいとは思ってたんだけど、それはロイクの『集中』の効果と、ロイクの腕前だと思ってたんだよ。本人は否定してたけど。
てか何召喚してるんだよあの人。二倍てなんだよ二倍て。頭おかしいんじゃないだろうか。
とりあえず、今のところこんなもんだ。
◇◇◇
数日後、俺は与えられた作業場(仮)で死んでいた。
いきなりだが、こう言うしか今の状況を説明できない。故にもう一度言おう。
俺は作業場で死んでいた。
・・・・・一から説明はしない。めんどうだから要所要所掻い摘んで説明して行こう。
ヒューマオーガの角を武器に入れて鍛えようと思っていた。そしてそのために、他の魔物の骨やらなんやらを金属と混ぜて鍛えようと実験してたワケだ。
結果、惨敗。
いや、混ぜることは出来たんだ。でもなんか、劣化した。
よく考えたら鉄分とカルシウムを混ぜて強化しようとしても出来るはずがない。が、それは俺が生きていた元の世界での話。この世界にはそういう技術があるのだ。実際、色々な本に方法は載っているし、いつか師匠も可能だと言っていた。でも出来ん。
「うーー・・・ん、情報不足だし、実力も足りないんだろうけど・・・・・・」
まず、骨を入れたら強化出来るってとこからおかしいのだが、魔力的なアレで強化されるのでこの世界的におかしいところはない。
本には、混ぜる物同士の魔力を維持してそんまま合成してうまく均衡を取るみたいな事を書いてあった。
どれも大雑把に書いてあって、魔力を維持するのはわかるがどのタイミングでどのように混ぜ合わせるのかという重要なところが記されていない。よって、手探りで今日までやってきたわけだ。
でも心が折れた。一体全体どうしろと言うんだ。コツコツした作業は好きだが、こう、なんの手応えもないとやる気が失せる。
降参して師匠に頼ろうとしてもどこにいるのか分からんし、ハパルに聞いても知らないと言われるし・・・・・・・。
そして今日、手応えがあってよっしゃぁ!とか一瞬喜んだが、金属が砕け散った。どうやら素材同士の魔力の相性が悪かったらしく、手応えはただの魔力の反発。俺は何かが抜け落ち、途方もない脱力感に襲われ、真っ白になった。
・・・・・・そして、俺は作業場で死んだのだった。
◇◇◇
「おおくらふたーよ、しんでしまうとはなさけない!」
「うっせえ!!」
魂が抜け落ちていたところに師匠がやってきて、某有名なセリフを言い放った。
「ていうかなんでいるんだよ!どこいたんだよ!こないだ俺は三日間もかけてアンタ探したんだよ!なにひょっこりとタイミング見計らったように登場してんの!?俺の苦労と三日間を返せぇぇ!!」
「よくもまあそんなに次々と言葉が出るな」
半年もあなた様のそばに居たらこうなるよ。自然とツッコミが上達するよ。
「まあ、私が本気で隠れたらこんなもんだ。あと情報は聞いてるぞ、ロイクから。いやあ、役に立つ弟だよなぁ」
「ああ、やっぱり姉弟か・・・・・・」
「うむ。それで、躓いていると聞いたが?教えてやろうか?」
「・・・・・・・え、そんなあっさり教えてくれるの?」
なんか違和感あるんだが。
「無論、そんなわけないだろう。やってもらうことがあるぞー」
「やっぱりな」
嫌な予感しかない。この人は色々危ないから。
「なに、お前も損は無いさ。水と風の魔石を渡すんだからな」
「魔石!?しかも二つも?さらに嫌な予感がするんだが」
ハードル上がった気がする。
俺、生きて帰って来れるだろうか・・・・・・。
◇◇◇
「おう黒髪の、どうした?こんなとこでよ」
「待ってこっちが聞きたい」
俺は師匠から依頼というか条件を受けて、脳の奥まで腐りそうな“とある本”を買ってこいと言いつけられた。なんでも、“とある業界”の中でも有名な作者の本が手掛けた限定品的な物らしい。しかもその作者は変わり者で、自分の手掛けた本は男にしか買えないように術がかけてあり、女性は欲しくても手が出せないらしい。しかし、男性がお買い上げたあとは、本に書かれている魔法陣を発動させることで術を解除できるらしい。
で、うちの師匠は自分以外の“同族”の手に渡る前にその本が欲しいらしいのだ。
しかもこの本にかけられている術は無駄に高度で、魔法陣も本来は様々な原理の理解などがあって始めて発動するのに、魔力を多少込めるだけで発動すると言うとんでもないもの。
内容は完全に“女性向け”か“青いツナギ属性の男”向けなのだが、こういった技術が込められている為研究者などからも追い求められている一品。敵は一種類ではないらしい。
・・・・・・と言うことなんだが、俺には正直さっぱりわからん。いや、理解したくないというか。
わかったことは一つで、作者の頭は既に手遅れということだ。
そんなわけで腐った本がたくさんある専門店的な店に来たんだが、なんとそこの入り口で某鉈の人ユーペスさんと再会を果たした。
こんなところでこの人はなにをしているんだろうか。
「いやあ、ここの本は内容が理解出来ん物が殆どだがな、中には掘り出しもんも混じっとるんだ。それを探しに来てな」
実はユーペスさんは魔術に関する理解が深く、自分が編み出した魔術を武器に付属してもらったりしてるらしい。
あの魔力の矢は他の人の発想だが、魔力で創った鉈は自分が考えた物だと言っていた。
勉強のため本を読んでいるとも言っていたし、そういう本を求めてここにやってきたんだろう。
でもね、俺は思うんだよ。
たぶん、今師匠に頼まれた本はそういう掘り出し物の一つじゃないかと。
ということは、目的が被っている。
ここはユーペスさんに見つからないように本を買って、すぐ帰ろう。
「・・・・・へえ、そういう物もあるんですか。いいことを聞きました」
「おう。そんで、黒髪のはなにしに来たんだ?探し物か?」
「俺は少しお使いに。師匠に頼まれました」
「そうかい。お疲れさんだな」
そう言ってユーペスさんは店の奥に消えた。
さっさと目的の物見つけて帰ろう。




