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常識ある貴族。

なんだろ・・・・最近思い道理に書けない。

あっれー?

「おお、なにやってんの?」

「ん・・・?」


 作業をしているとリュックサックのような物を背負ったルアがやってきた。

あれ、もう昼?早いな・・・・


改めてよく見てみると、体は女らしい。肌は白いし、可愛い。まあ、胸は・・・・うん。失礼だけど、これの所為で、いや、これのおかげで女であることを隠せたんじゃないだろうか・・・・


ルアがなぜかこっちを睨んだ後、俺が作っている途中の物をじっくり見ている。角度を変えたり、少し叩いたり。


というか、なんでさっき睨んできたんだ?体を見てたことか?そうなのか?

女って恐ろしい。主に勘。


しばらくしたら、満足したのか作り途中の物を置いて、こっちに振り返った。


「ソーラ、だよね?は、魔術工業者マジッククラフターなの?」

「そうです。自分的には魔術鍛冶屋マジックスミスですけど・・・・」

「ああ、確かに。金属を叩く音が聞こえた。だからここに居たんだ」

「え?」

「ん?わかんない?ここマナスポットだよ」

「マナスポット・・・・」


マナスポットと言うのは、魔力・魔素が充満している場所のことだ。普通の場所より魔力・魔素が濃いため、魔術魔法を使うには絶好の場所ということだ。

例えば、ここに留まると普段より魔力や傷の回復が早かったり、威力・質が上がったり、常に回復できるので魔術魔法を使うのが楽だったり。


なるほど。それでさっきから余裕があったのか。

・・・・トルナロがここに来たら大変なことになるな。今は制御できるが・・・


ちなみに、多すぎる魔力は体に毒。最悪死んでしまうので、トルナロが魔力を全開放したらどうなるか・・・・


「さ、行くよ。今しかチャンスが無さそう」

「はい。じゃあ、行きますか」

「・・・うーん・・・」


 俺が返したら、唸りながらこっちを見た。

不機嫌そうな顔をしている。


「そのさ、敬語・・・」

「はい?」

「敬語をやめて!」

「え?」


 それって、まずいことじゃないのか?貴族に「不敬罪で!」とか・・・・


「・・・・なに考えてんのか大体分かったよ。不敬罪でしょ?」

「はい」

「だからやめてって!こっから旅一緒にするんだから、堅苦しいのはやめ。不敬罪だって、ボクが許してるし貴族であることを隠すから」

「ああ、そうなの・・・」


 まあ、家出してきたらしいし、ばれたら連れ戻されるか?その時一緒に居たらなんか「誘拐で」とか言われそう・・・・あれ?さっきから俺、貴族に対してすごい失礼なこと考えてないか?


「自覚があるだけまだいいか・・・?」

「?どうしたの」

「いや、なんでも・・・」

「まあいいや。早く行こう。出るのが遅くなったら門が閉まるから」


 ああ、そういえば言ってなかったな。

王都は四メートルくらいの壁で囲まれており、門は東、南、西にある。

ここらへんでもたまに魔物が現れるし、北に門が無いのは、過去に北からよく攻められていた為、それを警戒して門を造らなかった、と言われている。


「どこの門から出るんだ?」

「西から。ちょっと行きたい所もあるし」

「そうか」


 じゃ行こうか、といってルアは歩き始める。その後を俺は着いていく。

しばらく街を歩いたら門が見えてきた。あと馬車。

 ルアは馬車の近くに居る青年・・・兵士?に歩いていった。


「んあ・・・・あ、ルアさん。準備はできてますよ。あと、怒られても知りませんからね」

「わかった」


青年が意地悪そうな笑みをしながら俺だけに小声で言ってきた。


「・・・・お連れの方、ルアさんを頼みますよ?あと、がんばってください」

「はあ?がんばれって・・・・何をだ」

「旅に出て、とある街に着いたら分かりますよ。あと、これは将来の期待ですかね」

「・・・・ますます分からん」


青年は、もう一度「がんばってください」というと、向こうへ行ってしまった。

というか、将来の期待って・・・・昨日会ったばかりの男にそんな期待すんな。お前大丈夫か?


 馬車を見ると貴族や商人が乗るような大きい物ではなく、身長より少し高いくらいの高さに、寝転がったら足の半分は出るような大きさの小さい物だった。

乗り込みは後ろからである。

 馬車の中には大きい袋と何かの道具がある。大きい袋の隣にまた袋がある。

馬車を見てい居ると、俺は


(馬車、って初めてだが、酔うか・・・・?)


とか考えてる。

そしてルアはというと、ポニーより少し大きいくらいの馬を自分の側へ引き寄せてなでている。


「へへへ、久しぶり、ロン。最近来れなかったからね。寂しかった?」

「ブルルッ」


なんか、愛馬らしいな。楽しそうで何よりである。


「ソーラ、行こう」

「ん、」

「いってらっしゃい、ルアさん。お連れの方も、ルアさんをヨロシク」

「ん、任せろ」


 この青年、ルアと仲がいいのか?友人みたいに接してるっぽいけど。

まあいいや。


俺たちは馬車に乗って、ポニー(?)に引かせる。操縦はルアに任せる。

門を潜ったら、旅の始まりだ。



◇◇◇


門の近く、隠された扉の中。

この場には二つの影があった。


一人は黄色のひげを生やし、メガネをかけた男性。金髪金目の少し太った体をしている。

もう一人は紫の目に紫の髪。目の下に泣きほくろがあり、スタイルがよい女性。


二人は一つの馬車を見ていた。そして、女性は男性へ振り返った。


「ほら、私の勝ちですよ」

「負けたな。ほれ」


男性が銀貨を数枚女性へ渡す。

女性は銀貨の数を確認し、負けた人物のほうへ向いた。


「私の予想どうりですね。あの子は成人する前に家出する、と」

「むぅ・・・あと一週間待っていればワシの勝ちだったのに」


 負けた人物は諦めたようにため息をついた。

実はこの二人、ルアの両親である。娘が家出するかどうかで賭けていたのだ。なんという親。

ちなみにこの世界では18歳になると成人だ。そしてルアは17である。


「さて、これで後は一つだけですね」

「正式に婚約が決定するまでに女であることが世間・・に知れる、だったな」

「ええ。私はバレる、です」

「ワシはバレない、じゃ」


 二人は悪戯を仕掛けた子供のような笑顔で相手を見た。


「さあ、今度はどうでしょうね?」

「分からんな。こればっかりは家出してしまったし」

「あの黒髪の青年も気づいてたようですし」


 それを聞くと、男性は面白そうな顔をした。


「あの変わった服の男は誰じゃろうな?理由は・・・・ついて来い、とでも言われたか」

「そうですね・・・・少なくとも財産狙い、出世狙いではなさそうですし」

「・・・・となると、コレか?」

 

男は言いながら、左の薬指をトントン、と軽くつついた。

これは、婚約者などを表す貴族のジェスチャーだ。


「そうかも知れません。もしかすると、将来は大物かも知れないです」

「・・・・もう一つ、賭けが生まれたな」

「いえ、二つですよ」


 ふたりが思いついたのは、

・あの青年はルアの本名を帰ってくるまでに知ることができるか。

・あの青年はルアとくっつくか。


 である。

ルアとくっつくかは社会的な問題で普通無理だが、そこは伯爵級貴族の権力でどうにかするつもりだろう。


「どうでしょうね」

「今度は勝ちたいものだな・・・・」



◇◇◇



「へくしっ!」


 馬車に乗って三十分くらい。がたがたと揺られていたのだが、ルアがいきなり、前触れもなくくしゃみをした。


「あれぇ?」

「大丈夫か?」

「大丈夫だけど・・・」


 すると突然、悪寒がした。その所為でぶるっと大きく震えた。


「!?っ」

「どうしたの?」

「いや、悪寒が・・・」

「え?・・・いや、まさか。でも・・・」


 なんか、ルアが考え始めた。なんだろう・・・・

気になるが、もっと気になることが今はあった。

ルアのほうへ顔を向けて、聞いてみた。


「なあ、何で家出しようとしたんだ?仕事が嫌だったのか?それとも、親か?」

「うっ・・・・どうしても言わなきゃダメ?」

「いや、別にそういう訳じゃないが・・・・」

「ならいいや。なんか、話しにくいし・・・・」


ああそう。話しにくいのね。

なんだろ、親?親なのか?



 しばらくがたがた揺られていると、気持ち悪くなってきた。何時間乗っていただろうか・・・・

この馬車にスプリング入れたい。

 というか、ここまでよく気持ち悪くならなかったと自分を褒めよう。


 後から知ることなんだが、初めて馬車に乗る人は十分経たずに酔ってしまうのだとか。

俺は大体二時間くらい酔わなかった。船とかに乗りなれていて酔いにくい体になっていたんだな。


俺が少し気持ち悪くなってきた頃にルアがこっち向いた。


「ああ、気持ち悪くなった?酔いに強いね。キミ」

「ああうん、褒め言葉だよなそれ」

「?そうだけど・・・・皮肉に聞こえた?」

「いや・・・」


 初めて船に乗ったとき、父さんが「俺はそんな酔いに強くない」と言ってその後皮肉を言ってきたので大体酔わない人に言う皮肉は分かってるのだ。

・・・・なんだろ、思い返すと父さんの評価が少し下がった。



◇◇◇



「暗くなってきたな」

「そうだね。そろそろ場所探しかな」


 場所探しか。トルナロと一緒に居たときは壁の近く、もしくは森林だが。

馬車も馬もある。どうしようか・・・・


「あ、あそこは?」

「ん?」


 ルアがいい所を見つけたようで、指を指している方向を見た。

壁があり、少し近くに森もある。


「馬車とかもあるけど・・・・ああいうところがいいのか?」

「そうだね。んー・・・・、でもあんま変わんないと思うよ?ここらへんは魔物でないし・・・・。ソーラは旅してたんでしょ?判断は任せる」

「じゃあ、あそこでもいいな。壁があるし、何より火の燃料がある。馬とかは・・・・任せる」

「わかった」


 そういえば、魔物と遭遇しなかったな。そういうことは教えてくれなかったからなあの師匠。

後からルアに聞こう。



◇◇◇



「ふう・・・・」


今現在、いつもの様に鍛冶作業をしている。

しかし、さすがに折り返し鍛錬は時間が掛かる。

俺もそろそろ眠い・・・・


「そろそろ交代してほしい・・・・」


大変なことにかなり眠い。

トルナロとはすぐ交代できたが、相手はトルナロではなく、別の女性。

変に起こすと何か起きそうだ。というか、怖い。

ちなみにルアは馬車の中で寝ている。


しかし、ほんとにモンスター少ないな。夜になっても一匹は来るだろうと思っていたが、来ないか。

ちょっと拍子抜けである。


「くぁ・・・・ふぅ」


 眠いな。しかし何ができるか・・・・

腕もだんだん疲れてきたし、これ以上作業をすると明日が大変そうだ。


そんな事を考えていると、馬車のほうから音がした。

起こしてしまったか?ルアは体を起こして、馬車から出てきた。眠そうな目でこっちを見た。


「襲う、とか考えないの?」

「・・・・昨日も言ったよな、そんな事女性が口にするな。主に男に対して」


 何だこいつ、昨日言ったことを早々に忘れやがった・・・・まあ、そんだけ警戒してることになるか。

トルナロとは大違いだ。あいつ、初対面の男の前で警戒無しに寝るからな。これが普通の反応だろう。なんだ、常識・・・・かどうかは分からんが。


「・・・・なんでそんな目してんのさ」

「いや、やっぱり警戒心は大切だなと思って」

「はあ?」

「あのさ・・・」


 そっからトルナロについて語った。というか、思い出を話した。

話を聞き終わると、ルアはなんとも言えない顔になった。


「・・・・大丈夫かな?その子」

「いや、大丈夫じゃない。襲われる」

「キミがもう襲ってるんじゃないの?」

「そういった疑いは大変よろしい・・・・」


 というか、師匠も警戒心足りんしな。

あれ?なんで襲わずに済んだんだ自分。そんな精神強い方だったっけ?あ、忍耐の所為か。・・・あと、認めたくないがへタレ。


「・・・・何なんだよキミ」

「俺の周りは非常識が多かったからなぁ・・・・」


 そんな事を言うと、ルアが何か言いたげな目で見てくるが、何かを諦めたようにため息をついた。

というか、正直非常識が多いから俺の心臓がいちいちやばかったんだよね。カギ掛けないで体拭いてる奴とか、ライクは俺の部屋に脱ぎかけで来たことあるし。


 ほんと、何なんだ。俺の周りは・・・・


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