第6話 うまく説明できない不安。
エミールの父親が何度も頭を下げて帰って行った。
あの疲れ具合からすると…よほど揉めたのだろう。おばさまは寝込んでいると言っていたし。
何を言われたのかは見当が付く。あんたたちが姉をあんな男に嫁がせたから、姉は死んだんだ。そう言って責めたのだろう。エミールが良く愚痴をこぼしていたから。
間もなくエミールはスージ国に旅立った。ポーラにその話をしたら驚かれた。
「超エリートコースじゃないの?あなたの婚約者!なかなか入れないのよ?凄いわ!」
と、手放しでほめてくれたが…5年か…。
「なによ?5年も離れたら、寂しいの?ん?」
「うーん」
ポーラに私の不安をうまくは説明できないが…離れていても兄妹には違いがない。その感情や関係性に適度な距離が取れるようになるのだろうか?5年も離れれば?
たぶん…おじさまも同じことを考えているのだろうけど。
父にも母にも兄にも兄嫁にも…それとなくエミールと義妹の話をしてみた。
みんながみんな口をそろえて…
「面倒見のいい、いい兄じゃないか。それのどこが問題なんだ?」
と言う。そうだよね…そう言って笑うしかない。
結局のところ私は、5年待っている自信が無いと父親に泣きついて、なんとかこの婚約を白紙に戻してもらった。
ダヴィド伯爵家から、慰謝料の請求はなかったらしい。
私は…16歳で婚約者無しになった不安よりも、よくわからない不安にうなされる夜を回避できた喜びの方が大きかった。




