第4話 後追い。
15歳になった。
今後のことも考えて、学院の高等部には行くようにと父親に説得されて、しぶしぶエミールは行くことにしたらしい。ジャクリーヌは学院までの通り道なので、ダヴィド伯爵家に寄ってエミールを拾っていくことになっていた。
その朝、正門の前で馬車を停めて、エミールが出てくるのを待っていたジャクリーヌは、制服を着たエミールを見つけて手を振った。
カバンを抱えて足早に駆けてきたエミール。長い金髪を後ろで緩く結って、高等部の紺の制服がよく似合う。
「おはよう、エミール」
私がそう声をかけた時、玄関から真っ赤な塊が走り出てきた。
「いやああああ!エミー!いやあ!」
おろおろと、使用人たちが引き留めているのが見える。
…止まるな!
私はエミールに向かってそう念じたんだが…彼の足は止まってしまった。
カバンを放り投げて、アラベルに駆け寄るエミール。抱き寄せて…頬にキスをしているのが見えた。
エミールは振り返りもせずに、アラベルを抱いたまま屋敷に戻っていく。
ジャクリーヌはその時…ものすごくはっきりと…アラベルの視線を感じた。
ゾッとするような視線だった。赤い口元が少し、笑っているような…?
「どうされますか?お嬢さま?」
付いてきた侍女に話しかけられなかったら、私は震えていたかもしれない。いや…気のせいだろう、そう思いたかった。
「あ、いいわ。もう馬車を出してちょうだい」
「妹さんが後追いをしたんですね。うふふっ。5歳ぐらいでしょうかね。あのくらいの年頃ではよくあることですよ」
笑いながら侍女がそう言う。
「あははっ、そうなんだ」
ジャクリーヌは笑ってみせた。顔が引きつっているのが自分でもわかる。
結局、その日、エミールは学院に現れなかった。
家に帰ると、エミールから謝罪の手紙が着いていたが、
【お迎えは結構です】
という丁寧なお断り文が添えられていた。




