第2話 赤いバラ。
「え?エミール、学院の中等部に行かないの?」
12歳になった。
相変わらずのお茶会ではエミールは小さなお姫様と手をつないで現れた。
アラベルは赤のフリフリのドレスに、赤い髪のリボンは黒。靴も赤だ。
エミールの姉そのものを小さくした感じだ。
「うん。行かない。勉強は家庭教師でもいいし。アラベルが一人になってしまうだろう?ね?」
「……」
少しはこっちを見ろよ?ジャクリーヌはそう思ったが黙っていた。
春らしいクリーム色のドレスはなかなか似合っていると自分でも思う。侍女もほめてくれた。
「…エミー、あっち…ワンワン、いるよ?」
エミールの膝に座ったアラベルがぺちぺちとエミールの頬を叩きながら、中庭の向こうに行こうと誘っている。
「散歩にいく?ベル」
「うん」
…いやいやいや…まず私にも聞こうよ?婚約者殿?
そう思ったが…もう席を立って歩き始めた二人の後をぶらぶらと付いて行く。
この時期なら、もう少し行った先のバラ園にクリーム色のバラが咲いているはず。
ほんの少し前は、いや、もう2年も前だが…
「ジャクリーヌはクリーム色が似合うね。髪色に合って、柔らかい雰囲気がいいな」
エミールが笑いながら、私の亜麻色の髪に棘を抜いたクリーム色のバラを髪に刺してくれた。
…夢だったのかしら?
バラ園には一面、真っ赤なバラが咲いている。赤、だ。
「え?エミール、このバラ…」
「綺麗だろう?アラベルが喜ぶと思って、植え替えさせたんだ。初冬まで赤いバラが咲く様に。ね?」
「……そう」
先を行く手をつないだ二人が、微笑んで見つめ合っている。




