↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界のゴミ召喚士〜元自衛隊工作員、重機と野戦メシで限界集落を最強要塞にする〜』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/76

EP 7

課金勇者ゼロスの暴走と、オリハルコンの鎧

 ――ガタガタガタガタッッッ!

 荒野の砂利の上で、課金勇者ゼロスの膝が止まることなく震えていた。

 全身を包む豪奢な白銀と黄金のプレートメイルが、みっともない金属の擦れ音を鳴らし続ける。

 その視線の先では、百名いた自慢の重装私兵部隊が、赤城鷹人の敷設した指向性地雷と重機関銃の弾幕によって八割方スクラップにされ、地面を這いずりながら泡を吹いて呻いていた。

 さらに、絶対切断のユニークスキル『ソード』を誇っていた妖刀使いミラースすら、閃光弾と産業用高圧トランスの電撃で五感を狂わされ、人狼執事リバロンの名刺刃によって両肩とアキレス腱を刻まれ、地面に顔面から突っ伏してピクピクと痙攣している。

「う……嘘だろ……!? ミラースが……俺の最強の用心棒が、あんな作業着のモブと名刺持った執事ごときに……一瞬で無力化されただと……!?」

 ゼロスは黄金の大剣を取り落としそうになりながら、激しく後ずさった。

 上空を旋回する炎上神ワイズの配信ドローンからは、容赦なく全宇宙へ向けてその無様な姿が中継され続けている。

 配信画面のコメント欄は、もはや嘲笑と怒号の嵐だった。

『おいおいおい、勇者ゼロス弱すぎだろwwwww』

『ミラースが一撃で感電KOされてて草』

『悪徳テロ要塞の処刑ショーとか言って、ただの村の防衛隊にボコボコにされてんじゃねぇか!』

『金返せワイズ! スパチャ返金しろ!!』

 その時、ゼロスの耳元に仕込まれていた極小の魔導通信インカムから、天界のオフィスで発狂寸前になった炎上神ワイズのヒステリックな怒号が突き刺さった!

『ゼロスッ!! 何をもたついているのですかこの無能がぁぁぁッッ!!』

「ヒッ……!? ワ、ワイズ様!?」

『同接が二千万人を突破したこの最高潮のタイミングで、無様に逃げ腰を晒すなど万死に値しますよ! 私のチャンネルのスポンサー契約が解除されたらどう責任を取るつもりですか!? あんな作業着の土木作業員、今すぐ八つ裂きにしなさい!!』

「む、無茶言わないでくださいよ! 相手は軍隊を一個潰すようなワケの分からん鉄の筒(重機関銃)を持ってるんですよ!? あんなの生身で近づけるわけ――」

『黙りなさい! 言ったはずです、私は神界のアルゴリズム特待生だと!』

 通信の向こうで、キーボードを力任せに叩きつける轟音が響いた。

『ゴッドチューブの特別救済プロトコルを強制発動! 私の神格クレジットの当月枠を全額前借りし、天界の禁忌オークションから最高峰の概念装甲を貴方の肉体へダイレクト・デプロイ(直接課金転送)しました!』

「え……?」

『泣いて感謝しなさい、ゼロス! 神話の時代に創世神が鍛え上げ、あらゆる物理衝撃と魔法破壊を無効化する絶対無敵の結晶――【神聖オリハルコン・フルアーマー(完全神鋼装甲)】です! さらに筋力、敏捷性、反応速度の補正値を通常時の十倍へと強制ブーストしました! さあ行け、あの村ごと全てをミンチに叩き潰してきなさいッッ!!』

 ――ピキィィィィィィンッッッッ!!!!

 ゼロスの頭上に、天界の神素サーバーから放たれた極太の黄金光柱が直撃した!

 大気が激しく震動し、ゼロスの身につけていた白銀の鎧が内側から弾け飛ぶ。

 砂煙の奥から現れたのは、眩いばかりの虹色の燐光を放つ、神聖にして禍々しい超重量の全身甲冑――『神聖オリハルコン・フルアーマー』であった!

 あらゆる傷を寄せ付けず、地殻変動の圧力にも耐えうる絶対の神鋼。

 その背中からは、不正な追加課金によって注ぎ込まれた膨大な神素のオーラが、炎のようにメラメラと立ち上っている。

「ハ……? あ……あは……」

 ゼロスが自分の両手を見つめた。

 指先を軽く握りしめただけで、バチバチと黄金の放電現象が巻き起こり、足元の硬質な砂利が自重と闘気だけでメリメリと飴細工のように陥没していく。

 ステータス画面に並ぶのは、測定限界を突破したオールカンストの数値の羅列。

「アハ……アハハハハハッッ!! すげぇ……! 身体の底から、星を砕けるような力が無限に溢れてきやがるぜぇぇッ!!」

 恐怖は一瞬にして、肥大化した万能感と狂気へと塗り潰された。

 ゼロスは身の丈を超える黄金の大剣を軽々と片手で振り回し、防壁の前に立つ赤城鷹人へ向けて狂喜の切っ先を突きつけた!

「見たかよ作業着のゴミ拾い野郎ォッ!! これが神に選ばれし勇者ゼロス様の、真の『課金の力』だぁぁッ!!」

 ――ズドォォォォォンッ!

 オリハルコンの足が大地を踏み抜いた瞬間、衝撃波が突風となって吹き荒れ、防壁の土嚢が派手に揺れた。

 背後で見ていたニャングルが、猫耳を完全に伏せて悲鳴を上げる。

「ひ、ひぃぃぃ……ッ!? オ、オリハルコンや! 神話の絶対無敵金属やないかい! あんなもん纏われたら、さっきの12.7ミリ重機関銃の弾丸丸ごと跳ね返されてまうでぇぇッ!!」

「鷹人殿、危険であります!」

 マンミアがパイルバンカー盾『アグニ』を構え直し、前脚を踏み鳴らして割って入ろうとする。

「相手の生体闘気はすでに万単位の馬力に達しています! いくら貴殿の格闘術が神業とはいえ、あの神鋼の装甲を素手や銃撃で砕くことは不可能ですぞ……!」

「下がってろ、団長さん」

 騒乱をピシリと断ち切る、ドスの利いた静かな低音。

 赤城鷹人はマンミアの肩を手袋ごしにポンと押しとどめると、一人で悠然と土嚢の外へと歩み出た。

 ――カチッ、シュボッ。

 緊迫した荒野に、乾いた硬質な金属の着火音が鋭く響き渡る。

 親指の腹でヤスリを無造作に弾く。

 取り出したのは、地球の百円均一ショップで調達した、何の変哲もない黄色いプラスチック製の使い捨てライターだ。

 唇にくわえた紙巻きタバコの先端へ橙色の炎を近づけ、深く煙を吸い込んだ。

「…………ふぅーーーーっ」

 秋空へと真っ直ぐ立ち上る、一筋の紫煙。

 ツンとしたタバコの香りが、ゼロスの放つ威圧的な神素の熱気をスーッと冷却していく。

 鷹人は携帯灰皿へタバコの灰をトントンと落とすと、頭の中のユニークスキル【リサイクルマスター】を軽く起動した。

(所持スクラップPtは【113,570 Pt】……十分すぎるな)

 カタログから「解体現場用工作資材」を選択する。

――――――――――――――――――――

【所持スクラップPt:113,570 Pt】

・カタログ選択:【警察押収品・高硬度特殊鋼パイプカテゴリー】

・カタログ選択:【工業用超高圧酸素・アセチレン溶断トーチカテゴリー】

【召喚リスト】

・警察押収品:肉厚炭素鋼製・高強度足場鉄パイプ(長さ1.5メートル)(消費:10Pt)

・解体現場用:超高熱アセチレンガス溶接バーナー&高圧ボンベ一式(消費:200Pt)

合計消費Pt:210 Pt ――【召喚実行】

――――――――――――――――――――

 ――ヒュンッ!

 鷹人の右手に、ずっしりとした無骨な黒塗りの炭素鋼鉄パイプが握られ、腰のホルダーには小型のアセチレン溶断バーナーがカチリと吊り下げられた。

 その質素極まりない装備を見た瞬間、ゼロスは腹を抱えて大爆笑した。

「ギャハハハハッ! 鉄パイプぅ!? テメエ、俺のこのオリハルコンの神鋼装甲を前にして、工事現場のただの鉄パイプ一本で喧嘩売る気かぁぁッ!? 頭が狂ったか作業着野郎!!」

「道具の良し悪しは、使う奴の腕と段取り次第だ。……それに」

 鷹人は鉄パイプの先端を地面にトントンと突き立て、冷徹な眼光をゼロスのオリハルコンのバイザーの奥へと真っ直ぐ突き刺した。

「他人の金で買った分厚い装甲に閉じこもって、自分が強くなった気配になってる奴が一番脆ぇんだよ」

「ほざけぇぇぇッ! 俺のスピードに追いつけるかよ! ミンチになりやがれぇぇッ!!」

 ――ドォォォォォォンッッッッ!!!!

 ゼロスの足元の地面が爆発した!

 十倍にドーピングされた俊敏性により、オリハルコンの巨体が音速を超えて一瞬で視界から掻き消える!

 上空から振り下ろされた黄金の大剣が、空気をプラズマ化させながら、鷹人の脳天へ向けて一直線に叩き落とされた!

 一撃で山を両断する、神速の質量暴力。

 だが――赤城鷹人は、眉毛一本動かさなかった。

 ――スッ。

 『五輪書』に記された「秋水の身」――相手の速度がどれほど音速を超えようと、その重心移動の起こりをコンマ数秒前に捉える究極の脱力。

 鷹人は身をわずか数センチ沈め、大剣の切っ先を紙一重で見切ると、右手の鉄パイプをゼロスのオリハルコンの脇の下へ、吸い込まれるように差し込んだ!

「なっ……!? 避けた――」

「言っただろ。……道具に振り回されてるだけの素人は、重心がガタガタなんだよ」

 鉄パイプがテコの原理でゼロスの右腕を跳ね上げ、その勢いを利用して鷹人はゼロスの懐の内側――大剣の間合いの死角へと、鮮やかに滑り込んだ!

 神の鎧を纏った偽りの勇者と、泥水の中で技術を磨いてきた現場の職人。

 対照的な二つの魂が、ポポロ村の境界線でゼロ距離の激突を迎えていた。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、★評価やブックマークで応援していただけると励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。