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『異世界のゴミ召喚士〜元自衛隊工作員、重機と野戦メシで限界集落を最強要塞にする〜』  作者: 月神世一


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13/68

EP 13

重機無双とパイルバンカーの共闘

「撃てぇぇぇッ! あの黄色い鉄塊ごと、村の防壁を粉微塵に消し飛ばせぇッ!!」

 『赤砂の牙』総頭領ガドルフの野太い号令が、荒野の熱風を切り裂いた。

 先頭に並んだ魔導装甲車六両の砲塔から、一斉に目も眩むような赤黒い閃光が放たれる。

 城壁をも容易に穿つ高圧縮マナカノン砲の斉射――直撃すれば、数十メートルの大穴が穿たれる大陸の決戦兵器だ。

 だが、20トン級大型油圧ショベルの操縦席に鎮座する赤城鷹人は、眉ひとつ動かさなかった。

 左右の操作レバーを滑らかに、だが電光石火の速度で手前へと引き倒す。

 ガガガガッ、ズズゥゥゥンッ!

 ショベルの巨大な排土板が、地面深くに突き刺さる。

 前面に溶接されたのは、地球の超大型解体現場から召喚した厚さ50ミリの耐摩耗特殊鋼板だ。鷹人は自衛隊施設科(工作部隊)で叩き込まれた弾道学に基づき、車体を斜め三十度に傾け、砲弾を受け止める「避弾経始(ひだんけいし)」の角度をミリ単位で形成していた。

 ――ズドォォォォォォォンッッッッ!!!!

 大気を引き裂く爆炎と衝撃波。

 だが、放たれた六発の魔導砲弾は、特殊鋼板の絶妙な傾斜面に衝突した瞬間、火花を撒き散らしながら天高く跳弾し、背後の誰もいない岩山を派手に吹き飛ばしただけだった。

「な……な、何ィィッ!? 魔導砲が……直撃を跳ね返されただとぉ!?」

 ガドルフが血相を変えて目を剥いた。

 硝煙を突き破り、直列6気筒ディーゼルエンジンの腹に響く重低音が荒野を震わせる。

 ――グオォォォォォン……!

「跳弾の角度計算もできねぇようなナマクラ大砲なんざ、現場の安全基準以下だぜ」

 鷹人はニヤリと笑い、右の油圧旋回レバーを一気に押し込んだ!

 ガキンッ、ブオォォォォンッッ!!

 超高圧の作動油が極太シリンダーを満たし、20トンの巨躯が猛烈な勢いで右旋回する。

 唸りを上げて横薙ぎに振り回されたのは、巨大な鋼鉄製バケット。

 岩盤を掘削するための鋭利な五本の爪が、先頭の魔導装甲車の側面に容赦なく叩き込まれた!

 バギィィィィィィンッッ!!

「ぎゃああああっ!?」

 装甲車がまるで蹴飛ばされた空き缶のように横転し、砂煙を上げて転がった。

 さらに鷹人は無限軌道(キャタピラ)を前進させ、敵が築いていた急ごしらえの木製バリケードと土嚢の列へ、排土板ごと正面から突進する!

 メキメキ、ドゴォォォンッ!

「どけ! 不法占拠のバリケードは即日撤去だ!」

 質量二十トンの暴力。人間や馬車がどれほど束になろうと、近代地球の重機が持つ純粋な物理的質量とトルクの前には、ただの紙屑に過ぎない。

 そして――ショベルが強引にこじ開けた突破口へ、背後から凄まじい地響きが雪崩れ込んできた。

「うおおおおおッ! どけどけぇぇぇいッ! 俺様の手取り十四万アタックを喰らいやがれぇぇッ!!」

 イグニスが運転する10トンダンプが、V8エンジンの爆音とともに突撃してきた!

 前面に溶接された50ミリ鋼板が、次々と山賊の魔導バイクや軽装甲車を撥ね飛ばしていく!

 歩兵たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い、『赤砂の牙』の三百人の陣形は、わずか三分でズタズタに崩壊した。

◆

「お、おいおいおい……! あいつら、たった重機二台で軍隊一個大隊を蹂躙しとるぞ……!」

 防壁の上で、ニャングルが算盤を胸に抱きながら震え上がっていた。

「キャルル、見ぃ! あんなんもう土木工事やなくて、ただの機甲師団の電撃戦やないかい! 装甲車がスクラップ工場のプレス機に放り込まれた鉄屑みたいに潰されとるで……!」

「鷹人さん、かっこいい……! でも、無茶しすぎだよぉ!」

 キャルルが長い兎耳を揺らしながら見守る中、戦場の前線では、一頭の気高き戦士が重機の脇を疾走していた。

「はぁぁぁぁッ!」

 ケンタウロス自警団長マンミアである。

 四肢を力強く躍動させ、ショベルの死角から回り込んでくる山賊の騎兵たちを、巨大盾『アグニ』のシールドバッシュで次々と薙ぎ払っていく。鷹人が昨晩施した精密なオーバーホールのおかげで、盾の重量バランスは完璧であり、マンミアの動きには一切の淀みがなかった。

 だが――。

「ええい、調子に乗るなぁぁッ! 『ギガ・バスターカノン』、最大出力装填ッ!!」

 本陣に残っていたガドルフの旗艦装甲車が、車体を軋ませながら超大型の主砲を旋回させた。

 狙いは、重機の陰から飛び出したマンミアの側面!

「団長、危ないであります!」

 遠くでフェイトの悲痛な叫びが響く。

 砲口から放たれた極太の赤黒い魔導光線が、マンミアの退路を正確に捉えていた。

 マンミアは咄嗟に『アグニ』を構えたが、零距離に近い直撃の衝撃波は凄まじく、シールド越しに強烈な爆圧が彼女の四肢を襲った!

 ドガァァァァンッ!!

「くっ……あぁぁぁっ!?」

 ミスリル蹄鉄が荒野の砂利を削り、マンミアの筋骨隆々たる巨体が激しくバランスを崩した。

 右前脚の関節が不自然に軋み、そのまま横倒しになって地面へ倒れ込む。

「ぐ……蹄が……立ち上がれ、ない……!?」

 立ち込める硝煙の向こうから、抜刀した山賊の精鋭十数人が、倒れたマンミアをミンチにせんと殺到してくる!

「死ねや、自警団長ぉぉッ!」

「しまっ――」

 マンミアが死を覚悟し、琥珀色の瞳を固く閉ざしかけた――その刹那だった。

◆

 ガガガガッッ!

 頭上を巨大な影が覆い尽くした。

 20トンショベルの巨大アームが、倒れたマンミアを庇うように頭上へ覆いかぶさり、突撃してきた山賊たちの剣戟を、鋼鉄のバケットの背でガギィィィン! とまとめて弾き飛ばしたのだ。

「なっ……!?」

 運転席のドアが蹴破るように開いた。

 中から飛び出してきたのは、煤と油に汚れた作業ジャケットの男――赤城鷹人だった。

 鷹人は着地と同時に、迫り来ていた山賊の喉元へ、左腕の金属製腕時計を巻き付けた拳を一閃させた!

 ドグシャッ!

「ごぶっ!?」

 一撃で先頭を昏倒させると、鷹人は一切の躊躇なく、倒れ伏していたマンミアの足元へ身を滑り込ませた。

「おい団長、しっかりしろ! 現場でへたり込んでる暇はねぇぞ!」

「た、鷹人殿……!? す、すまない、右前脚を挫いて……立てないのだ……!」

「脚を痛めたなら、テコの原理で持ち上げるだけだ! よっと!」

 鷹人は作業ジャケットの袖を捲り上げると、マンミアの巨体を起こすため、下半身の馬の胴体――そのしなやかで引き締まった、毛並みの美しい背中へと両腕を力強く回し、ガシッと全体重をかけて抱き上げた!

 ――ガシッ。

 逞しい男の手のひらが、馬の背の温もりを直に捉える。

「――ひゃ、ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!?!?!?」

 戦場全体に、マンミアの悲鳴とも絶叫ともつかない、裏返った黄色い声が木霊した!

 馬の耳がピーンと垂直に直立し、琥珀色の瞳は限界まで見開かれ、褐色の肌が一瞬で沸騰したヤカンのように真っ赤に染まる!

(せ、背中……! 私の……私の『処女の背中』にぃぃぃぃッ!? 生まれてこの方、四半世紀! 大人の男性を一度たりとも乗せたことのない、私の神聖なる背中に……男の手が……鷹人殿の、男らしくてゴツゴツした逞しい掌が、ガッツリと触れているぅぅぅぅッ!!)

 トクンッ! トクンッ! とマンミアの心臓が早鐘のように跳ね上がり、体内の生体闘気がオーバーヒートを起こして湯気となって噴き出す!

「お、おい団長!? 急に暴れるな、重機に頭ぶつけるぞ!」

「あ、あわわわわ……! お、お嫁に行けない……! いや、もう鷹人殿の嫁に行くしかないのでは……!? 責任を……責任を取ってもらわねばぁぁぁッ!!」

 前脚の蹄をパタパタと痙攣させ、大パニックに陥る自警団長。

 だが、鷹人はマンミアの関節を素早く手探りで確認すると、足首の腱をグイッと引き戻した。

 ――コクッ。

「よし、ただの軽い亜脱臼だ。骨は折れてねぇ。……立てるな、団長さん?」

 鷹人はマンミアの背中から手を離すと、その切れ長の瞳を真っ直ぐに見据えた。

 無精髭の口元に浮かぶのは、頼もしく、一切の迷いがない現場監督の笑みだ。

「道具(アグニ)のパッキンもスプリングも、俺が完璧に仕上げてある。……てめぇの相棒を信じて、現場のケジメをつけてこい!」

「――ッ!!(ズッキュゥゥゥゥンッ……!!)」

 マンミアの胸の奥で、恋のパイルバンカーが特大のクリティカルヒットを叩き出した。

 恥じらいは瞬時に、全身を巡る灼熱の戦闘意欲へと昇華された!

「は、はいっ! お任せあれ、鷹人殿ぉぉぉッ!!」

 立ち上がったマンミアの全身から、かつてない濃密な黄金のオーラが立ち上る!

◆

「クソがぁぁッ! バケモノどもが! 死ねぇぇッ!」

 旗艦装甲車から身を乗り出した総頭領ガドルフが、自ら巨大な魔導バズーカを構えて狙いを定めた。

「段取り通りに解体だ! 合わせろ、団長!」

 鷹人は再びショベルのキャブへ飛び乗ると、直列6気筒のアクセルを床まで踏み抜いた!

 ズドォォォォォンッ!!

 20トンの巨体が跳躍するかのような勢いで前進し、巨大なアームがガドルフの装甲車の砲塔を上から力任せに鷲掴みにした!

 油圧シリンダーが軋みを上げ、五本の爪が装甲車の鋼鉄キャビンをメキメキと引き裂いていく!

「なっ……装甲が……引き剥がされる……!?」

「今だ、マンミア! ブチ込めぇッ!!」

 鷹人の咆哮に呼応し、黄金の闘気を纏った巨馬の乙女が地平を駆けた!

「ポポロ村自警団長マンミア――推して参るッ!!」

 音速の突撃。

 むき出しになったガドルフの装甲車のエンジンブロックへ向けて、マンミアは巨大盾『アグニ』を正面から叩きつけた!

 ――ガチィィィンッ!

 鷹人が新品のフッ素パッキンとモリブデングリスで摩擦をゼロにした第2シリンダーが、完璧な圧力を蓄えてロックされる。

 マンミアが撃発レバーを引いた。

「貫けぇぇぇッ! 『真・アグニ・インパクト』ッッッ!!」

 ドッバァァァァァァァァンッッッッ!!!!

 極太の魔導杭が、火薬と高圧作動油のエネルギーを一気に解放して射出された!

 装甲車のエンジンブロックを軽々と貫通し、車体後方まで突き抜ける超破壊。

 内部の魔導機関が臨界を起こし、装甲車は四散して派手な火柱を吹き上げた!

「アバババババッ!?」

 吹き飛ばされた総頭領ガドルフは、空中で目を回しながら地面へドスンと墜落し、そのままピクピクと痙攣して動かなくなった。

◆

 静寂が、荒野を包み込んだ。

 六両の魔導装甲車はすべて横転するか解体され、三百人いた山賊本隊は、頭領の壊滅を見てことごとく武器を放り出し、地面に両手をついて降伏していた。

 完全なる勝利。村落側の負傷者は、マンミアの軽い捻挫ただ一つだった。

 鷹人はショベルのエンジンを止めると、キャブから身軽に飛び降りた。

 懐から取り出した紙巻きタバコを唇にくわえ、安っぽい黄色い百円ライターを親指で弾く。

 ――カチッ、シュボッ。

 静まり返った戦場に、硬質な着火音が鋭く響いた。

 紫煙をゆっくりと青空へ吐き出す鷹人。

「…………ふぅーーーーっ」

 その瞬間、頭の中にけたたましいファンファーレが鳴り響いた。

『超特大規模の善行を検知しました』

『事象:凶悪武装山賊団『赤砂の牙』本隊(三百名・装甲車六両)の完全壊滅』

『事象:限界集落ポポロ村の滅亡危機の完全回避および周辺地域の平和確立』

『判定:死者ゼロ・最小限の破壊による人道的大勝利』

『スクラップPt +20,000Pt を獲得しました』

(合計30,325Pt……! こいつはもう、何でも呼べるな)

 鷹人がニヤリと笑っていると、背後からドスドスと重い足音が近づいてきた。

 振り返ると、そこには顔から火が出るほど真っ赤になったマンミアが、もじもじと前脚の蹄を擦り合わせながら立っていた。

「あ、あの……た、鷹人殿……! 先ほどは……私の……背中を……その……あたたかく抱きしめていただき……ッ!」

「ん? ああ、怪我が大したことなくて良かったぜ。団長さんの背中、筋肉が引き締まってていいフレーム(体幹)してたぞ」

「――ッッッッ!!!!(大爆発)」

 マンミアの馬尾がプロペラのように超高速回転を始め、頭からプシューッと蒸気が噴き出した!

「ふ、フレーム……! 褒められた……! 私の身体が……鷹人殿に認められたであります……ッ!」

「あーあ、完全に脳みそが茹でダコになっとるわ」

 駆け寄ってきたニャングルが、やれやれと首を横に振る。

 だが、その手元の算盤は、勝利の歓喜でカチカチと狂ったように弾かれていた。

「それにしても鷹人はん、えらいことやってくれたなぁ! 山賊本隊を丸ごと生け捕りや! 捕虜が三百人……! ふふっ、ふふふふ……! こいつら全員、ポポロ村の法律に基づいてキッチリ『精算』したるわ……!!」

読んでいただきありがとうございます。

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