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第一話 世界の玄関口へ

この章では初めて戦闘場面が出てきます。

殺伐としたのは嫌なので、明るく書きました。


馬車が最後の丘を越えた瞬間、ミレイは思わず息をのんだ。


眼下には、どこまでも広がる青い海。

その海を埋め尽くすように、大小さまざまな帆船が停泊していた。

三本マストの大型商船、小回りの利く帆船、遠い国からやって来た異国の船。

白い帆が風を受けて揺れ、高く伸びた帆柱が森のように立ち並んでいる。

港では木箱や樽が次々と積み降ろされ、滑車がきしむ。

荷車が石畳を転がり、船員たちの掛け声が飛ぶ。

その間を、聞き慣れない異国の言葉が行き交っていた。

潮の香りに混じって、焼きたてのパン、香辛料、魚介を焼く匂いが風に乗って流れてくる。

海鳥が空高く鳴きながら旋回し、人々は忙しく港を行き交っていた。


「わあ……」

ミレイは窓から身を乗り出した。

「こんなにたくさんの船、初めて見た。」

「フルル、見てごらん、海だよ。」

ミレイの肩からぴょこんと顔を出し、驚いたように。

「ミュー」

「ロリィ、お父さんにもこの景色を見せてあげたいですね。」

「この町の人たち全員、私たちのファンにしましょう。」

「会場はあのコロシアムみたいな所かしら。」

「ここで歌い出しちゃおうかな。」

ERS三人娘は、やる気満々だ。

ヴィクトリアが笑みを浮かべる。

「ここが世界の玄関口、海運都市ニューポート。」

「世界中の国から船が集まり、世界中へ船が出ていく町さ。」


港を抜けると、白い石造りの建物が立ち並ぶ美しい町並みが姿を現した。

赤茶色の屋根が陽光に輝き、大通りには商人や旅人、吟遊詩人、荷車を引く人々が絶え間なく行き交う。

色鮮やかな看板を掲げた店が軒を連ね、露店には異国の果物や布、陶器、装飾品が並んでいた。

町全体が活気に満ち、まるで世界中の人々がこの港へ集まってきたかのようだった。


到着したのは、アストリア商会の商館だった。

港を見下ろす白い石造りの建物は、本館と来賓用の宿泊棟が回廊で結ばれている。

中へ入ると、高い天井から豪華なシャンデリアが吊り下がり、壁には美しい風景画や精巧な装飾品が並ぶ。

「私たち、こんな豪華なところに泊まるの。」

「こんなすごいところ初めて。」

「うれしい~。」

ERSの三人は大はしゃぎ。

フルルも気になったのか、ピュコッと顔を出しかける。

「だめ、人に見られる。」

「ミレイさん、肩に載せておくだけなら大丈夫よ。」

「え、なんで。」

「皆さん、ふわふわフルルだと思いますよ。」

「あ、そうかあ。フルル、肩の上に乗ってもいいよ、でも絶対に動いちゃ駄目だよ。」

「ミュウ」

ミレイはそっとフルルを抱き上げ、自分の肩へ乗せた。

フルルは肩の上で丸くなる。


二階へ続く広い階段を上がると、廊下には厚い絨毯《じゅうたん》が敷かれ、窓からは港の青い海が見渡せた。

扉が開く。

「すご~い。」

「お姫様の部屋みたい。」

「私たち仕事で来たんだよ。浮かれていたら駄目だよ。」

「何よ、リリアナ、少しぐらいいいじゃない。」

「ソフィア、リリアナの言う通り、気を引き締めていきましょう。」

「エミリアだって喜んでいたじゃないの。」

「ごめんごめん。」

「うふふ。ミレイさんのお部屋は私の隣ね。荷ほどきが終わったら、下で合流しましょう。」

そう言って、自分の部屋へ入っていった。


下へ降りると、広々とした応接室には、すでに三人が待っていた。

三人はそろって一礼した。

恰幅の良い中年の男が一歩前へ出る。

「私、販売部長のロベルトと申します。」

柔らかな笑顔を浮かべながら、落ち着いた口調で名乗る。

続いて、明るい表情の大柄な女性が胸に手を当てた。

「私、販売課長のマルタと申します。今回のキャンペーンを担当させていただきます。」

最後に、小柄で人の良さそうな男性が、少し照れくさそうに頭をかいた。

「私は社員ではないのですが、映像を担当するポロックです。」

「こちらは、私たちを守ってくださる突貫組の皆さんです。」

ミレイの紹介に合わせ、キサナギたちも軽く頭を下げる。


ミレイは社員たちの肩に乗っているふわふわフルルを指さし、嬉しそうに言った。

「皆さん、もうフルルを乗せているんですね。」

三人は笑顔で、

「はい。」

マルタが肩に乗ったふわふわフルルをそっと指先でなでる。

「若者や家族連れの多い通りを中心に、社員が肩へ乗せて歩いております。」

「かわいい。」

「何あれ。」

「どこでもそんな声を掛けられます。」

マルタが得意そうに言う。

「でも、それ以上のことは何もお話ししておりません。」

「それが逆に評判を呼んでいるようです。」

「そこで私たちがドーンと発表するんだ。」

「なんかわくわくしてきた。」

「早くコンサートしたいな。」

三人とも待ちきれない様子で笑った。


先ほどからチラリチラリとミレイの肩の方を見ていたロベルトが口を開く。

「しかし……。」

「ミレイ様のフルル……。」

「私どもの物と、どこか違うような気がしますな。」

「見ているだけで、心が落ち着くというか……。」

「何とも言えない優しい気持ちになります。」

ローザが微笑んだ。

「そうなんです。」

「これは特別製なんですよね、ミレイさん。」

「はい。」

ミレイは肩のフルルをそっと見つめる。


「この子は、私だけの特別なフルルなんです。」


ロベルト、マルタ、ポロックの三人は顔を見合わせた。

「なるほど……。」

分かったような、分からないような表情でうなずいた。

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