白の封印
「ラヴィ、セルブラントは」
ようやくのどの奥から搾り出した声はかすれている。軽く咳払いをして、彼は再び言葉を続けた。
「セルブラントは、緑の目、だと言ったね? 僕と同じような色あいの」
ラヴィーニアはもう一度確かめるようにマリオンの右目を覗き込み、うなずいた。
「ええ、あなたとそっくりの明るい緑よ」
「そして、黒い髪?」
再び砂色のラヴィーニアのふわふわした頭がうなずく。
「ありえない」
母方のローセングレーン一族に黒髪は、いない。遠い昔に黒髪の子供が生まれないようにかけられた魔法のおかげで、一族の血が一滴でも入った者たちは、一様に赤茶色か金色の髪色なのだ。特に忌まれた黒髪の者がいるということは、絶対にありえない。そして、マリオンの明るい緑の瞳は、父方の遺伝である。ローセングレーン家には、まれに緑の瞳の者がいても、彼のように黄緑色に近い明るい色の者はいなかった。シルヴァーナにごく近い血筋には、緑の瞳すらいない。ほとんどのものが青系の色合いの瞳なのだ。その両方を満たす者であるというなら、彼とセルブラントが母親を同じくする兄弟とは考えにくい。とすれば、行方不明の父の子供、ということはあるかもしれない。果たしてそうなのだろうか? それに関しては、彼には否定も肯定もできない。それを言えるほど父を知らず、行方不明の事情すらもわかっていないからだ。
あるいは、同胞、という言葉に深い意味はないのかもしれない、とわずかな期待とともに考えてみる。だが、セルブラントがわざわざ彼の本名をここに書き記し、我が同胞とまで付け加えているのは意味がないことだとは思えなかった。
白い指が赤い文字にもう一度触れる。ぴりりとかすかな刺激をその指先に感じてマリオンは、はっと指を引いた。
「これは、血、か」
赤いインクではなかった。それは血で書き込まれた献辞だった。
「奴の血か」
なんて趣味の悪い、と嫌悪に眉を寄せ、マリオンは小さく吐き捨てた。
「毒蛇のようにすばやく、悪夢のようにひそやかに、白い領域を侵すもの・・・・・・か」
「それ、なに?」
おずおずと遠慮がちにラヴィーニアが尋ねた。
「昔、ある白の魔術師が黒魔術について語った言葉の一部だよ」
セルブラントは、マリオンのような白も黒も使う魔術師ではなく、純粋に黒魔術師なのかもしれない。
「ありがとう、ラヴィ。僕はこれからこの本、少し読んでみるよ」
マリオンは、ラヴィーニアにどこか少しうつろな微笑を見せるとそれ以上何も言わず、壁際の一番明るい灯火の下へマットをひきずって行った。
「じゃあ、ね」
ラヴィーニアが小さな声で別れを告げたが、マリオンの耳にはもう入っていないようだった。岩牢の壁を背にして、灯火が一番よく頁を照らせるように立てた膝の上に置くと、文字を追うのに夢中になっている。
ラヴィーニアはかすかなため息をついて、足音を殺しながら上へ上がって行った。
『ドラゴンズシュライン――竜の神殿――』というのが本のタイトルと思しきもので、表紙に金色の文字で刻み込まれている。開くと白い頁が一頁挟まっており、次に血で書き込まれた献辞の頁がある。その次を開くと、本文は『ドラゴンズシュライン』の歴史から始まっていた。
***
カデカミナの白い竜は、もともとはこの大陸ではなく、よその大陸から流れてきたものらしく、ダゴスから少し北へ行ったラデインという町へ降臨した。町の人々は、神殿を造り、白の神官や巫女たちを集めこれを崇め奉った。白の竜は魔法を使うが、黒や他の色の竜たちとは異なり、白い魔法を使う。血の穢れを嫌い、清浄と浄化を好み、光と神聖を愛した。
ただし、白竜はその白さを好む余り、他の色を嫌い、白以外のものをすべて排除する傾向がある。少しでも穢れたと感じられるものが自分の周りにあると、自分の身内に取り込んで光の中で浄化し、かつ消去してしまうのだ。それは仕えている者たちにでも言えることで、巫女や神官がわずかに人間味を帯びた欲望をもっただけで、白竜に飲み込まれることになった。それはある意味において、血の生贄を求める黒竜となんら代わりのない白の暴力ともいえる。
人はそのすべてが黒でもなく、白でもない。光があって影があるように、死があって生があるように、黒い部分があって白い部分がある。人はそうでなければ、「人」でありつづけることができない。
自分の心の光と影にうまく折り合いをつけて、それでもなお正直に生きようとする者や、善良に暮らそうとすることが強さであり、尊いことでもあるというのに、ラデインの白竜はそのあいまいさを許さなかった。
過去にも別の白竜が影を嫌うあまり、驕り栄える国を丸ごとひとつ無に帰したことがあると古い伝説は語っている。すべての白竜がそのように狭量になってしまうわけではないのだが、ラデインの白竜もそうなるのではないか、と人々は恐れ、そのためラデインの神殿には、仕える者が少なくなっていった。
美しかった神殿はすっかり寂れ廃れていくが、あいかわらず白い竜は町に居座ったまま動こうとはしない。竜がいる神殿は街中にあり、人々はその場所を恐れ、近づこうとはしなくなった。竜の意思が届く範囲にいれば、邪な者はすべからく排除されるのだ。邪といってもどれがどう邪なのか、という判断は人にはできかねた。白竜の意思など、人の基準では簡単に計れないものだったからだ。そのため、その意思の届く範囲、神殿の周りは神聖な場所として囲いが設けられ、立ち入る者も一部の神官や巫女を除いてほとんどいなくなった。
しばらくは、安泰だった。ラデイン自体は、白竜の光の恩恵をこうむり、安全で美しくかつ、実りの多い裕福な安定した町のように見えた。
しかし、その白竜の意思の及ぶ範囲は、年々次第に広くなっていく。やがて、その囲いがラデインの町の三分の一ほども覆うようになると、故郷を捨てて離れてしまう者もどんどん多くなっていった。困った町の人たちはカデカミナに立派な神殿を造り、そちらへ移動してくれるように神官を通じて白竜に頼み込んだ。少し考え込んでから竜は、条件付きで移動することを承諾した。
「私のもとに常に白い巫女か神官が一人、必ず就いていてほしい」
ラデインの人々は、安堵し喜んでその条件を受け入れた。その頃の竜には、すでに熱狂的な信者が何十人か付いていて、いまさら巫女や神官には困るまいと思われたからだ。
だが、その白い竜が最初の巫女の一人に指名したのは、信者ではなかった。町で家族と暮らしていたごく普通の娘で、なるほど清廉潔白、正直でまっすぐではあったが、白い竜に気に入られるほどとは思われなかった。人々は竜の考えることはわからんと首をひねりつつも、その娘に最初の巫女を頼むことにした。
期限は? と、娘がその話を持ってきた町の有力者に尋ねたが、明確な答えは返ってこなかった。いつ戻れるかわからない、いつ消去されるかわからないということで娘はさすがに渋っていたが、町のためにどうしても、と皆に乞われ、言われるままにカデカミナの神殿へ入った。
そのまま穏やかに何年か経った。娘はなかなか戻ってこなかった。家の者たちは心配して、カデカミナへ何度も足を運んだが、神殿の中へは入れてもらえず、娘にも会うことができなかった。
神殿には娘のほかには何人かの信者もいたが、その信者たちも娘に会うことはなかった。稀に竜の眠る寝所の扉の奥から竜の意思を伝える娘の言葉を、聞くことができただけであった。
さらに何年か過ぎた。白い竜は健在で、時折その白い巨大な身体で、空高く舞い上がるところが目撃されていたが、相変わらず娘のほうはラデインの町へ姿を見せることはなかった。
一方、カデカミナの山脈には白い竜による結界がじわじわと広げられつつあった。いつかは、この結界が麓まで広がるのではないか? と心配していたのは、ラデインの町だけではなかった。しばらく前からラデインの町と白竜神殿の様子を窺っていたダゴスの町でも、同様の危惧を抱いており、大々的な魔術師による竜の封印を考えていた。
竜の封印役に選ばれたのは、海の向こうの大陸からやってきた魔術師だった。それはダゴスの最有力者であったキング家の召還によるものであった。彼はグラディウスと言い、白い竜の封印に前にも一度成功しているともっぱら評判の魔術師だった。
***
「キング家?」
そこまで読んで、マリオンは首をかしげた。
グロリアの先祖なのか? そして、魔術師グラディウスは、魔術史書の中でも有名な一人で、マリオンも名前だけは知っていた。彼は確かに白竜の封印を何度か試みてその度成功した、と聞いている。カデカミナの件は、そのうちの二度目の事例というわけなのだろう。そのあたりを考慮して時代を考えれば、この話は今からおよそ三百年ほど前の出来事、と言うことになろうか?
マリオンはふとページをめくろうとした手を止めた。そしてさらにもう一人、気になる人物がいる。カデカミナの巫女にされてしまった娘の名前は、どこに書いてあるのだろう?
「ちょっと年齢が合わないかな?」
と、ふと頭に浮かんだその人に思いをはせながら、マリオンは再び文字を目で追った。
***
グラディウスは、竜にまず説得を試みた。海の向こうの大陸に戻ってはどうか、と。向こうの大陸には同属の白い竜もたくさんいるはずで、人間に邪魔されず竜の住まう場所もたくさんある。
しかし、白竜は魔術師のその穏やかな提案を一笑に付した。
『私はもう海の向こうへ戻る気はない。私は一生をこのカデカミナの山脈で過ごす』、と。
では、とグラディウスはなおも説得を試みた。せめてカデカミナの白の結界が、山脈を越えてしまわぬようにしてはもらえぬだろうか、と。
白竜は今度は笑わずにこれに答えた。
『結界が広がっているのは知っている。だが、これだけは私にもどうしようもないのだ。結界は私の成長とともに広がっていく。私はまだ、成長期なのだ』
グラディウスは仰天した。今まで見た中でも特に巨大な竜でもうすっかり成獣に見えたのだが、さらにこれから成長すると告げられたのだ。グラディウスは難しい封印に頭を抱えた。
グラディウスの行おうとしている封印は、竜を殺してしまうわけではない。ただ、封印を施せば、竜は今の姿を失う。竜は実体をもたぬ光のような存在となる。竜はカデカミナの山脈の奥底の異空間に巨大な光の身体を横たえ、誰かによって封印が解かれるまで静かに眠ることになる。実体をもたない竜ではあるが、その異空間に作られる寝所の大きさは考慮されなければならない。特に魔力を持つ竜であればなおさらである。白竜を入れる入れ物の大きさを測ることができないために、封印がうまくいかないこともあるのだ。
またそれがカデカミナの竜のように、成長途中の若い竜であった場合はどうか? 成長しきってない竜であれば、封印するのが少し難しい。成長するはずの魔力が何処まで伸びるのか、魔術師には正確に読めないからだ。そのまま、静かにただ眠り続けてくれれば、それに越したことはない。大方の場合は静かに眠りについたまま、皆に忘れ去られ自然に淘汰され消えていく運命にある。消えないにしても、忘れられた者は『存在しない』ことと同じで、誰かが封印を解かない限り永遠にそのままの状態を保っていく。魔力がさほど強くない竜であればそれですむ。若い竜であっても普通は大丈夫であろう。少しだけ広めの空間に封印してしまえばいいのだ。内側から封印を解くことはできない。
だが、今回のこのカデカミナの竜の場合は、いつもとは少し事情が異なっていた。通常の竜よりも、白い魔力が強いうえに大きい。しかも、結界の広がり方から見ると、途方もない力を秘めているように思える。魔力が通常よりも大きな影響力を持っているとすれば、封じる力も強力でなければならない。いい加減な封印では、竜の眠りは浅くなるだろう。
しかたなくグラディウスは、白竜をカデカミナの山脈の奥深く封印することに決めた。だが、そのためには膨大な力がいる。グラディウスは封印のための準備をはじめた。
『中からの守りが必要だ』
グラディウスは、キングの当主にそう告げた。
『中に一人、竜の守りをすべき人間を入れて封印を行いたい』
***
マリオンは、思わず本を取り落としそうになるほど驚愕し、声をあげた。
「嘘だろ、中に誰か人間をいれて封印するって? 何を馬鹿なことを」
通常では行われえない、あるいは行ってはならない方法である。それは人柱、生贄と言ってもいい。黒魔術では時折用いられるが、白魔術では聞いたことがなかった。
「そうか、竜ではなくその人間を魔法の焦点にするつもりか? その誰かを中心にして封印を行うつもりなんだ」
魔法の焦点を人間に当て、竜を封印する。それならば竜そのものに対する封印ではないから竜が今後どう成長しようと、魔力が強くなろうと封印は破れない。
「はたして本当にそうなのかな? 理論的にあってるのか?」
放心したように本から目を離し、マリオンは宙を見つめた。頭の中で今まで積んできた経験や読んだ本、師匠のもとで学んだことなどを総合し、自分なりの魔法理論を忙しく組み立てては崩してみた。やがてマリオンは、小さくため息をつき、頭を振った。
「確かに理論はあってるかもな。でも倫理的には許されないよ」
***
キングの当主は困惑した。
『誰を? このわたしにいったい誰を人柱に決めろとおっしゃるのか』
キングの問いに魔術師グラディウスは、頭をふった。
『私にもわからない。だが、そのやり方が一番確実なのだ。そうでないなら私には封印はできかねる。別の魔術師に依頼していただきたい』
キング家の当主は深く煩悶した。もとより、竜の封印にかけては第一人者であるグラディウス以外に、頼むべき魔術師がいるとは思われない。キング家の多額の財産と時間をかけて、海の向こうでようやく探し出した魔術師なのだ。
長い時間悩んだ末、彼はひとつの答えを出した。
『では、この私自身を、それがだめなら我が娘を・・・・・・。それ以外に私には思いつくことができない』
キングの苦い答えにグラディウスはうなずいた。
『では、お嬢さんを・・・・・・。竜は女性を望んでいる、と思う』
静かに淡々と述べるグラディウスの言葉に、キング家の当主の長い苦悶の呻きが部屋の中に響き渡った。
『我が娘を・・・・・・。私のラヴィーニアを人柱になさるのか・・・・・・』
***
「え? ラヴィーニア?」
マリオンは、読み間違いか、ともう一度指で辿りながら、一行前に戻る。だが、確かにそこに書かれていた娘の名前は、ラヴィーニアと同じつづりの名前だった。
「偶然? それとも何か意味がある? いや、待てよ」
この本を原本から書き写したであろうセルブラントが、わざとその名前にした可能性も捨てきれない。キングという名字なども意図的につけられた可能性もある。だが、わからない。読み進んだら判るだろうか? 本はまだ三分の一ほど残っている。左目に覆いがかけられているせいで、かなりの負担を強いられている右目を軽くもみながら、マリオンは再び頁を繰った。
***
『だが、娘さんは死ぬわけではないのだ。ただ永い眠りにつくだけだと考えていただいてよい』
グラディウスは穏やかな声で慰めの言葉を言った。だが、たとえそうであってもキング当主の嘆きは、もちろん深い。
『私たちが死んでしまっても、このキング家が滅びてしまっても、ダゴスやラデインの町がなくなってしまっても、あの娘だけはこの世に残ってしまうのですね。二度と解放されることはないのでしょうか? 自分で言い出したことではあっても哀しい、つらいことです』
グラディウスもこれには言葉もなく、ただ厳しい顔で首を横に振るだけであった。
ところで、巫女の娘は、どうなったのか? あのラデインの娘が巫女として竜の元に出向いてから、すで二十年程がたっていた。
グラディウスが竜の神殿に向いたとき、娘は見あたらなかった。神殿の奥に優雅に横たわる美しい白竜のそばには、誰もついていない。神殿の表には何人かの信者がいたが、その中に彼女はいなかった。あの時グラディウスは、巫女はどこか、とは尋ねなかった。だが、『いまこの神殿に貴方はお一人か?』とは、尋ねた。それに対して竜は、静かな笑みを浮かべただけで何も答えなかった。どうやら彼女について何も尋ねてはいけないような雰囲気が、竜の周りに漂っていた。そして、話を拗らせたくなかったグラディウスは、それ以上つっこんで尋ねることはしなかったのだ。
本当のところ、グラディウスは、最初この巫女を封印の人柱にしようと考えていた。長い間、巫女として竜に仕えていた彼女ならば、安定と安寧を竜に与えてくれるだろうと思われるからだ。しかし、巫女は神殿に入ってから一度もその姿を人前に現していない。そこには何か深いわけがあるのだろうと、グラディウスは考えていた。もしかしたらすでに巫女は、人間としての姿を失っているのかもしれない。
『なにもかもわからないことだらけだ。しかし、封印は行われなければならない。何があっても』
***
そのグラディウスの台詞まで読むと、うーん、とマリオンは頁から再び目をひき剥がし、不機嫌そうな唸り声を上げた。
「なーんか気に入らない。いったい何様のつもりなんだろう」
竜がきて、町は好景気に沸いた。だが、邪心を食らう竜の性癖のおかげで人がその身を脅かされた。しかたなく巫女の生贄――まさしく生贄だと思われる――を出して、カデカミナに移ってもらった。だが、白の結界が広がりそうだから、人柱を立てて今のうちとばかりに、永遠に竜をカデカミナに封印することにした。
誰が悪い、とは言えない。しかし竜だけのせいだ、とも言えない。
「だいたいこれって全部、人間の都合じゃないか」
竜が悪いことを考えていたわけでもないのに、ただ人間の都合のみで封じられてしまうのがマリオンにはどうにも不条理に感じられた。
「竜の封印は行われなければならないもの、ではないはずだ。もっと他に何か考えられたはずだ」
マリオンは、右手の人差し指の第二関節を強くかんだ。これは最近、いらだちながらものを考えるときの癖になってしまっている。
「僕なら・・・・・・うーん。そう、僕なら神殿の周りに逆に結界を張る。ようは麓の町を竜の結界が侵略しなければ、いいわけだから。カデカミナ山脈をすっかり覆うほどに大きく張ればいいんだ。竜の持つ白の浄化結界は、僕の結界で効力が弱まるわけだから、うーん、どうだろ」
それならば、竜の結界の力は町まで及ばない。竜は優雅にお気に入りの巫女や信者と、今までどおりに暮らせばいい。通り抜けられないのは竜だけだから、人間は誰でもカデカミナを通ることができるだろう。ただし、竜の白の結界の効力は、カデカミナの中では有効である。
問題は、そのやたらと範囲の広い結界が何年、効力を持つかということになるが、それは魔術師の力量次第であろう。マリオンには今の自分であっても、最低でも三年は持たせられる自信があった。心配なら一年ごとに確かめにくればいい。いや、いっそのこと竜に頼んでおけばいいのかもしれない。外側の力が弱まったら教えてほしい、と。竜とても封印されるよりそのほうがずっといい。
そこまで考えて、マリオンは苦笑した。
「竜の眠りを覚ますのは嫌だとか言っておきながら、こんなことを考えてるんじゃどうしようもないよな」
これがグロリアの言ってた『何が何でも目を覚まさせたいと思うだろう』という切り札ではないだろうな、と口元にまだ苦笑いを浮かべたまま、マリオンはいやいやするように頭を振った。
「これからグラディウスの書を読む時に、いろいろいらぬ偏見持っちゃいそう」
納得いかねぇよなーと、乱暴な口調に妙な節をつけて小さくつぶやきながら、マリオンは次の頁に進んだ。




