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第15話(4) 金印の万能薬

 ボスにとどめを刺した。その瞬間、俺は、無数の光の欠片になって消えていくボスモンスターの上で、この部屋全体に視線をくばっていた。

 宝箱を探して。


 本当の勝負は、ここからだ。

 金印の万能薬を手に入れるための戦い。


 ボスの間に出現する宝箱の位置は何か所かあり、そのうちの一か所にランダムにあらわれる。

 宝箱が出現したら、ダッシュ。

 勝算は十分にある。誰も俺のスピードにはかなわない。


 垂直にたちのぼる宝箱の金色の光が出現した。

 走り出そうとしながらその光のふもとを見た時、俺はがく然とした。

 その場所は、ジャンヌの立つ場所、あいつの目の前だった。

 まるで、あいつは宝箱の出現位置を知っていたかのように。


(クソッ。これじゃ……)


 俺はムダだと知りながら、ボスモンスターの体を蹴り、全力でダッシュした。

 俺がジャンヌの背後に着地した瞬間には、すでに宝箱は開かれ、ジャンヌが手をのばしていた。


 ジャンヌにとられた。

 金印の万能薬を。

 一瞬、俺はこのままあいつに斬りかかって万能薬を奪いたい衝動を感じた。

 だけど、思っただけで、俺は動かなかった。


 何とかジャンヌを説得して金印の万能薬を渡させる。そんな方法がないかと俺の頭は計算していた。

 だけど、無理だ。

 俺がもってるアイテムすべてを交換条件にしたって、あいつが首をたてに振るはずがない。

 あらゆる病気を治す万能薬。ダンジョンで出るどんなアイテムより貴重に決まっている。

 世界には自分や家族が病気で死にかけている大富豪だってたくさんいるはずだ。金印の万能薬を売れば巨万の富を手にいれられる。

 そんな宝をジャンヌが手放すとは思えない。

 だいたい、いらないものだったら、そもそもこいつはあんなに強情にボス戦に突入しようとしたはずがない。


 数秒、誰も何も言わない沈黙の時が過ぎた。

 それから、ジャンヌの声が聞こえた。


「……あー。なにこれ。こんなの、あたしはいーらない」


 こちらに背をむけたまま、ジャンヌは金印の万能薬をもった腕をつき出した。


「あたしはいらないから、あんた達にあげる」


 一瞬、俺はあぜんとして動けなかった。

 だけど、ジャンヌの気が変わるまえに、俺はすぐに金印のアイテムを受けとった。

 ジャンヌはそのまま、俺に背をむけたまま、外にでるワープ装置にむかってスタスタと歩いて行って、姿を消した。


 俺は数秒間信じられない気分で手の中のビンを見つめて、それから叫んだ。


「よし! 手に入れたぞ。金印の万能薬! ほら、シン。おまえのだ」


 俺が金印の万能薬をさしだすと、シンはジャンヌが消えていったワープ装置の方を見たまま、とまどったように言った。


「でも、それは……」


「でもも何もねぇ! ジャンヌがいらねぇってんだから、おまえのだ」


 早くこれをダンジョンの外に持っていって飲み干せ!

 俺はシンにそう言おうとした。だけど、俺が言う前に、シンが言った。

 

「でも、ジャンヌさん、泣いていたよ?」


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