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第九話 覚醒

九郎ら3人は村に通された。

山麓に囲まれ、豊かな川が棚引いている豊かな村だ。しかし、蝦夷えにしは人種差別から迫害を受けていた。それは古来からの狩猟民族であることや言葉、文化、顔の違いなどからだ。

九郎はよそ者である。そんなことは気にもしなかった。


藤原秀衡は金で屋敷を埋めた。金などそんなに取れる訳もなく、朝鮮などから密輸金なども仕入れていたらしい。先に出た金売吉次などはそういう密輸金を手に入れ、全国に売りさばいていた闇取引の人間である。闇街道を疾走し、輸送していた。須佐は色々な情報量を彼から仕入れていたのである。

藤原氏は蝦夷からも砂金を買い、集めまくっていた。


「砂金を藤原に売っているから、狩猟民族とはいえ、生活は豊かだな」

彼らは欲が無い。長老を長とした平和な暮らしを営んでいた。


長老の前に通された。先ほどの蝦夷がコソコソと長老に耳打ちしていた。九郎たちを連れてきた経緯を話しているようだ。長老は「うん、うん」と頷きながら聞いている。

そして「お侍様方」と、口を開いた。

「あなた方は不思議な力を持っているそうな・・・」

佐藤兄弟が答えた。「否、持っているのは、其処なる九郎殿です」

「九郎殿と云いなさるか」

「源九郎義経と云います」

「源氏か・・・・」そう云うと長老派ジーーーーっと九郎を眺めた。

「九郎殿、あなたには何か自然の力が宿っているように見えるが・・・お気づきか?」

「最近、感じます。これのせいかと」と云うと背から刀を出した。

「そ、それは?!」長老は目を丸くした。「須佐の刀!」


「長老、須佐をご存知か?!」

「九郎殿、あなたは須佐なのですか?!」

「須佐ではないが、須佐の者から貰い受けた剣です」

「我々にとって、須佐は自然の大きな力、神も同然のお方たちです。須佐でないあなたに何故?須佐しか扱えない神剣を渡した?」

「私にもわかりません」

「う、うーーーむ。須佐と源氏の名。あなたは天下を取りますぞ」

「しかし、私には、この剣をどう扱えば善いのか今もわからないのです」

「須佐と関係のある人は歓迎です。皆のもの!宴の用意を!」

佐藤兄弟と九郎は歓迎された。


夜半、宴たけなわ。焚き火と踊りと酒、食事が振舞われた。

「九郎殿、この肉、熊ですぞ・・・」佐藤兄弟が怪訝な顔をした。


「九郎殿」長老が横に座った。

「須佐の剣を扱うには武士の武芸では駄目です」

「長老、と云うと?」

「我らの狩猟の方法を覚えなさい」

「何故ですか?」

「我らの技は大地と共に生き伸びてきたものです。其の力が必要かと」

「・・・」


一晩泊まって朝を迎えた。

「九郎殿、本気ですか?!」佐藤兄弟は詰め寄った。

「ああ、私は暫く此処に滞在して蝦夷の戦い方を学ぶ。お前らは帰って秀衡殿にそう報告してくれ」

「そ、そんな無茶な!あなたは大切はお方です。共に帰りましょう」

「いや、一人で此処に残る。秀衡殿も納得してくれるはずだ」

「そんな勝手な!我らがなんと叱られるか」

「大丈夫だ。行け!」

佐藤兄弟は渋々帰って行った。


その日から蝦夷の戦い方の修行が始まった。

戦いの修行と云うかサバイバルのようなものだ。

水の確保の仕方、植物の茎などから水分を得る方法。星の位置で現在の東西南北を得る方法。蝦夷は騎馬を得意とする。それも馬ごと崖から駆け下りる方法である。

「鹿は崖を悠々と渡ります。馬にだって出来るはず。鹿も四つ足。馬も四つ足」

海は近くにはないが蝦夷は蝦夷地えぞち(北海道)にも居る。彼らは津軽海峡を渡って遠く、船で蝦夷地にも行く。

「津軽海峡は荒海だと聞いたぞ」

潮のうねりを読むのだと云う。

罠の仕掛け方などなど。九郎は日々吸収していった。

それは野生の武を習得する経験だった。


ある日、長老が「九郎殿、須佐の剣を抜いて見なされ」と云った。

背から抜くと・・・

「あ!」

剣が螺旋状に電気を発していた。そして九郎の目が緑色に変化した。

「力を感じる!」

「九郎殿、ちょっとあの木を仰いで見なされ」

10m程離れた木に剣をブワッと一振りした。

ぐわーーーーーー!

電撃が走って木を粉砕した。どドドドーン!

「うう!」

「九郎殿、お見事!須佐の剣を習得されましたな。覚醒されました」

「こ、これが須佐の力・・・・」


九郎は1年間滞在した。途轍もないパワーを得て。

そして村に別れを告げた。


平泉に戻ると皆が迎えてくれた。

「九郎殿、よくぞご無事で」

「ありがとう。とても意義のある1年だったよ」

「実は大きな報告があります」

「何だい?」

「兄者の頼朝殿が決起いたしました」

「兄者が?!」


此の異母兄弟、まだ会ったことはないのである。

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