第伍話 九郎襲撃
武角は出雲に居る。その夜、情報の舞が宮古から戻ってきた。
「舞、ご苦労だった、で、わかったか?」
「申し訳ありません。トンとわかりません」
九郎には諏佐の血が流れている…武角はそう睨んだ。其の血は父方ではなく母方にあると睨んだ。其の出生を毎に調べさせたのだ。しかし…。
九郎の母、常磐は京にて千人の審査から選ばれた、今で云えばミス京都である。で、あるからして絶世の美女だったに相違ない…と云うのが現代でも歴史上の話になっている。其の子息である九郎義経もまた、ハンサムだったに違いないと。義経の人物絵は残っているが、数百年後に書かれたものである。信ぴょう性は乏しい。
「舞、どういうことだ?」
「審査会の前の足がかりが全く情報が無いのです」
「それでは常盤は、ぽっと、京都に現れたと云うのか?」
「そうとしか思えません。その後なんですが反乱を起こした源義朝の側室と云うことで、一時、殺すか?生かすか?議論になったんですが、其の美貌に平清盛や男どもは食らいついたのです」
「慰めものか……哀れな…」
「で、今は一条長成と云う貴族の側室となっております」
「貴族か…手が出せないな」
「はい、後は本人から聞き出すしかありません」
「難しいな」
鞍馬に話は移動する。
九郎は何か自分に異質な力があるのではないか?と考えるようになった。
「諏佐武角…何者だったのか?妖怪か?まあ、天狗と付き合っている私が云えた事じゃないが」
その夜は、静かだった。
ガシャ、
何か外で音がした。
ガシャ、ガシャ、
動物ではない。何やら金属音だ。
「何だ?」久郎は戸をおそるおそる開けてみた。
「遮那王丸〜~~~~」薄っすらと聞こえた。
「誰だ?」
「遮那王丸~~~~~」
「誰だ?!何処にいる?」
「此処だ」見ると土の中からボコボコと這いずり出てきた。甲冑の侍だ。手に刀を持っている。
「うう!よ、妖怪!」
「妖怪だと?そんな下劣な者ではないわ」
「な、何者だ?!」
「お前を殺しに来た」
「な、なんだと?!」九郎の武器は棒切れしかない。
「刀さえ持っていないのか?お前は、殺すには恥だが今、殺しておかねばな」
「名を云え!」
「やかましい!死ね!」
刀を振り回しにきた。九郎は応戦したが、木の棒切れなど、切り刻まれた。
「殺される…」
すると空から人が現れた。諏佐の若者だ。
「俺が相手になってやろう」
謎の武士は少し怯んだ。「貴様、…諏佐だな」
「ほう、よく知ってるな。諏佐佐助だ。志能備の一族よ。何故、九郎殿を狙う_この悪霊」
「将来、邪魔になるからだ」
「貴様の正体などわかっているぞ。平将門だな?」
「洒落臭いわ!!」
其の悪霊が刀を振り上げて佐助に襲い掛かってきた。佐助は素早く背から刀を出し、其の刀を防いだ。
ギャリーーーん!!
金属音と共に地面が揺らぎ、刀と刀から炎が吹き出た。ブワン!
力と力の戦いだ。
「う、うわああああ」九郎は魂消て後に下がった。
悪霊と佐助は共に片手で手のひらから気を発した。ぶああ。
共に吹っ飛んだ。
「九郎殿、安全な所に!こいつは人間ではない」
「ば、化け物…」
てやああーーーー!!二人はさらに組み行った。佐助が刀を振り払ああった。将門の首が飛んだ。
「やった」
しかし、其の首は空を舞い、兜が取れた、があああーーーと牙を向く其の顔は獣の様だ。首なしの体も刀を振りかざし向かってきた。
「化け物め!」
佐助は電光石火の如く、首と身体に手裏剣を機関銃の如く放った。
首は地面に落ち、佐助は其の身体を刀で突いた。ゴウン!一瞬にして消えた。
佐助はまだ油断していない。消滅したとは思っていないからだ。刀を構え、目を据えている。
暫くはの静寂を過ぎて佐助が九郎に云った。
「もう、大丈夫です」
「あ、あなたは?」
「諏佐佐助と申します。武角様の配下の者です」
「あ、あれは、な、何ですか?」
「平将門の怨霊です」
「ま、将門?」
「あんなものが襲って来ると云うことは、もう此処を出た方が良いでしょう」
「私に行く処などありません」
鞍馬の僧侶たちが騒音と火にびっくりして駆け上がってきた。
「遮那王丸殿、如何された?」
「私は大丈夫」
「あなたは諏佐殿か?」
「御坊たち、遮那王丸はもう此処に居ては危険です。もっと安全な場所に移動します」
すると佐助が背から見慣れぬ刀を出した。
「九郎殿、武角様からの贈り物です」
「何ですか?コレは」
「ヒイイロカネと云う金属で作った神剣です」
「神剣!」
「武角様の言葉です。あなたがこの刀をどこまで探れるようになるかわからぬが、見定めたい…と」
「何故、そんなに親切なのですか?」
「世の定めとなるからです」
佐助はそう云うと姿を消した。
即朝、金売吉次がやってきた。肩に梟の百目を乗せている。
「遮那王丸さま、起きてますか?」
「ああ、吉次か」
他にも数人、虚無僧である。
「出発です。虚無僧の姿になってください。荷物は?」
「荷物などない。刀だけだ」
「では、参りましょう。私は途中までですが」
「何処に行くんだ」
「奥州藤原家」
「東北か」
「山を越えて日本海に出ます。そのまま北上という道すがらで」
「わかった、しかし、平家は追ってこないか?」
「力強い者たちがあなたを守ります。ある時は者ではなく…」
九郎は旅支度をし、鞍馬の山深いルートを取った。景色が良い。世の中の嫌なこと、自分の運命などを忘れさせる。「人はこうありたい。清々しくな」
「虚無僧殿、あそこに鹿が。何か高貴な鹿だな。光り輝いて見える」
「あれは山の主、山神です。あなたを守ってくれています」
「私を?」
安全な道を示しているのだ。
「源氏はそれほどのものか?」
「違います。貴方を敬っているのです」
「わたしを?」
「それは諏佐殿たちと同様のものです。諏佐殿たちは八百万のものたちから尊貴を受けているのです」
「八百万のものたちから尊貴…」
九郎は寒気がした。




