第三十三話 守られし者たち
「これまでだな・・・みんな、すまぬ」
「九郎殿!」
皆、覚悟を決めた・・・その時だった。
うおおお~~~~~んんん
「ん?遠吠えか?」
うおおお~~~~~んんん。うおおお~~~~~んんん
兵たちも気づいた。
「おい、四方八方から聞こえるぞ」
ザザザザザザザザザザザザザザーーーー
「おい、山が動いている!」
「違う!何かが山を取り囲んで凄まじい速さでこっちに向かっているんだ!」
「う、うわあああああ」
ガウーーーーー!
数百匹の狼が陣を襲った。
「狼だ!狼だーーーー!!」
ぐるりと囲み均整が取れている。波状攻撃を仕掛ける。まるで訓練された軍隊の動きだ。そして目では追えない速さで襲ってきた。群れる鳥の動きにも似ていた。
「な、なんだ!こいつらは?!!ぎゃああああ~ーー」
兵たちは喉を食い破られ、あっと言う間に次の狼が襲ってくる。
「斬れ!刺し殺せ!」兵の刀や槍は空を斬るだけだ。
「み、見ろ!空を!」
見上げると空が真っ黒だった。それは鴉の大軍だ。その鴉も軍隊並みの動きだ。まるでミサイルのように兵を狙ってくる。
カアカア。ヒューー-ーン。
「ぐわああああああ」
正確に空から急降下し、急所を刺す。
数匹が束になって襲われたものは、なますの如く身体をバラバラにされた。
「た、たまらん!逃げろ!」
逃げ場は無い。皆殺しだ。
「み、見ろ!あの鴉、足が三本だ!」「み、皆そうだぞ!」
「ば、化け物だ!山神の祟りだ!」
するとゆっくりと木の隙間からやって来る物があった。
一際大きな狼だ。光り輝いている。
ゆっくりと迫ってきた。
「で、でかい・・・群の親分だ・・・」
「兵を引き揚げよ!」その大狼が人語を喋った。
「しゃ!喋った!あわわわ」
「今すぐ、引き上げねば皆殺しにするぞ!屍の山を見たいか?!」
「あれは犬神だ、山の神だぞ」
へへーーー。「お、お許しを!お許しを、犬神様」
兵たちは平服し、その場を立ち去った。
九郎たちも逃げながら気づいた。
「空が・・・あれは鴉の大軍だ」
「麓が騒がしかったが・・・・」
「追手も来ませんな」
「何があった?」
ガサガサ。
すると前方の茂みから狼が数匹出てきた。
「九郎殿、下がって!」皆、刀を抜いた。
狼たちは見つめていた。
「まて!みんな、刀をおろせ」
「な、何ですと?九郎殿」
「お前たちは・・・あの時の?」
そう、九郎が鞍馬から平泉に向かう途中、護衛をしてくれた狼たちだ。
「久しゅうの。まだ生きていたか」
頭を撫でた。
狼はクウ~っと甘えた鳴き声を発した。
皆、呆れた顔で見ていた。
「此の方は、一体・・・」
「狼たちよ、あの鴉も仲間なのかい?」
首を縦に振ったように見えた。
狼がこっちに来いと云う仕草をした。
「何だい?ついて来いってかい?」
けもの道を行こうと云うのだ。
一行は狼の後をついて行った。
ガサガサ。周りに狼の気配がする。彼らを取り囲んで進んでいるのだ。
「軍隊の動きだ。お前たち、そんなことをどこで覚えたのだ?」
狼が九郎の背に鼻を付けた。「そうか!須佐殿か!お前たちは諏佐殿の仲間なのか」
弁慶が問いた。「須佐とは野生の獣まで従えているのですか?何処まで力を持ているのか?」
高台が見えた。その上にあの大きな狼が立っていた。
「彼は?」
「九郎殿、あの神々しさ・・・大将であることは間違いないですな」
「いや、あれは犬神だ。山の神だ」
その大狼が遠吠えをした。
それに合わせて狼たちも遠吠えをした。
九郎一行は彼らに守られながら一路、平泉に向かった。
平泉に着くと藤原武士たちが出迎えた。
「九郎殿、着きましたぞ!もう安心です」
元々、ここの武士の佐藤忠信が叫んだ。
「狼たちよ、ありがとう」
そう云うと「おーーーん」と一声あげて去って行った。




