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第参話 須佐の血

確かに鞍馬は天狗の棲家と云われるだけあって、一種異様な場所だ。

遮那王丸は此の寺の山間に棲んでいる。たった一人で10歳と云う幼さで此処に閉じ込められた。思えば頼朝が伊豆に幽閉されたのも10歳だ。此の異母兄弟はかくも似た境遇で育った。其れが源氏の末路であった。


鞍馬寺の正門を抜け本堂を横に見ながら、なお山道を登った。こんな寂しい所に…彼は棲んで居るのか。武角たちが着くと小屋(ボロけた堂である)の前に、遮那王丸がまるで我々が来るのを知っていたかのように立って居た。まるで武角たちが来るのを待って居たかのように。

「遮那王丸殿か?」武角が聞いた。

「如何にも…あなたは?」遮那王丸は少し警戒するように答えた。

武角は一目で見抜いた。

「天武の才がある…」

遮那王丸は吉次が居るので少し態度が緩んだ。

吉次:「遮那王丸さま、須佐武角さまと舞さまです」

遮那王丸:「須佐?母上から聞いたことがある」

吉次:「遮那王丸さまに会いに出雲からまいられたのです」

遮那王丸:「吉次、遮那王丸とはもう呼ぶな。九郎だ」

吉次:「は、はい」

遮那王丸:「私に?何用で?」

武角:「はい。鞍馬の天狗にあなたさまのことを聞きまして興味が湧きました」

遮那王丸:「天狗に?ふふふ。ところで須佐殿、あなたがたは一千年の時を生きる不死の法術士。そしてあなた方も御前みかどの軍隊だと聞いた。まことですか?」

源平も天皇の軍隊なのだ。

「しかし、あなた方は人間ではないのでしょう?天子なのか?」

人間だと答えた。斬られれば死ぬのだと。出雲部落の中は時がゆっくり流れるから長寿なのだと。

「では、人世で暮らせば齢老うのか?」

わからないと答えた。誰も暮らした者はいないからだ。

聡明な若者だ。鞍馬の僧たちが教育の賜物か?いや、それだけじゃない。此の若武者には闇の協力者が居るのだ。裏山をルートにする闇に生きる者たち。吉次や蝦夷、修験者、時には犯罪者から世の中の情報を聞いたに違いない。そう云う相をして居る。時が来れば彼らがバックアップしてくれるはずだ。

武角は源平と自分らは役目が違うのだと説いた。


「遮那王丸殿、私とお手合わせしていただけまいか?」武角は聞いた。

「私の方が願いたい」遮那王丸はそう答えると折木を削った木刀を構えた。

「いざ」武角は背中から木刀を出した。

「手を背中に回すと何もないところから木刀が出て来た…」遮那王丸は目を見張った。

吉次は息を呑んだ。


だーーーーーーーー!!

始めに踏み込んだのは遮那王丸だった。武角は其れを受け止めた。

だーーーーーーーー!!

だーーーーーーーー!!

だーーーーーーーー!!

カツン!カツン!カツン!

執拗な攻撃に武角は後退りした。

流石に僧正坊に習っただけのことはある…武角は感心した。

だああああーーーーーー!!

突然、遮那王丸が空に飛び、振りかぶって切り掛かって来た。

早い!武角は其の太刀を防いだ。すると当たった瞬間、火が吹いた。

2人の木刀が火に包まれた。

「な、なんと云うことだ!」吉次は腰を抜かしそうになった。

遮那王丸自身もたまげて手を止めた。


武角は木刀と遮那王丸を見つめながら、ただ黙っていた。

「武角殿!何が起きたのです?!」遮那王丸は武角に問いただした。

武角は礼をした。

遮那王丸:「武角殿!」

「遮那王丸殿、あなたの未来はかくも凄まじいものになりましょう」

遮那王丸:「私の未来が見えたのか?!」

「未来はかくも常に動いて居るのです。1つではありませぬ」

遮那王丸:「武角殿、何のことかわかりませぬ!」

「では、また」

武角たちはその場を去った。


吉次:「武角さま、一体全体どう云うことですか?!」

武角:「舞、奴を吉次に渡してくれ」

舞は頷くと、ぴーーーーーーっと笛を吹いた。すると何処からか一匹のふくろうがやって来て、武角の肩に停まった。

武角:「吉次、こいつは百目ひゃくめと云う伝書梟だ。遮那王丸のことを逐一、これにて私に報告をしてくれないか?」

吉次:「武角さまのご命令なら、喜んで。しかし、何故?」

武角:「遮那王丸は須佐の血を引いて居る」

吉次:「え?ええ?!」

武角:「其れを彼に云ってはならんぞ」

吉次:「な、何故です?須佐に勧誘しないのですか?」

武角:「しない。彼は最後の源氏だ。我々が手を出してはならない存在だ」

吉次:「し、しかし、須佐の法術を身に付ければ天下を取れますぞ」

武角:「だから出来ない。歴史が許さないだろう。魔王として名が闇の中で語られるだけだ。源氏として名を残させた方が善い」

吉次:「し、しかし…」

吉次は思った。遮那王丸が須佐の修行をしてこの世を収めれば、自分も参謀として出世できるのにと。


武角:「だが、彼は須佐にならなくとも、いつか自ら覚醒するかもしれない。其の時、吉と出るか?凶と出るか?……吉次、報告係をやってくれるのか?」

吉次:「わかりましたよ。やりますとも」


武角:「しかし、父親は厳然たる源氏。母親の血なのか?何か彼の出生に裏がありそうだ。舞、調べてみてくれ」


○常盤御前

遮那王丸(源九郎義経)の実母。生い立ちは謎である。

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