第二十話 出雲部落襲撃
雪が足音を消してくれる。鳥居を越すと辺りの空気が変わった。木が多い。
スッ!
「おい、何か横を通ったぞ」「気のせいだろう?」
麓では多くの兵が待ち構えている。奇襲のため、火も炊けない。その数1000。村に本陣を作り、残りは後続部隊として待機だ。
暫くの沈黙の後、山中から悲鳴が聞こえた。
「わあああーー」「ぎゃあああ」「助けてくれーーーー」
「むう?!」
「わあああーー」「ぎゃあああ」
「な、何が起きてる?!」
その声は村の本陣にまで聞こえた。
「わあああーー」「ぎゃあああ」
「何だ?!」
そして静かになった・・・。
「何が起きた?・・・・」指揮官が問いた。
山麓に何かが上からゴロゴロと無数に何かが転がって来て、兵たちの前で止まった。
「何だ?!う、うわあ!く、首だ!」
「く、くう・・・何が起きた?」
地面の雪が上からの血で真っ赤に染まった。
「一気に突入だ!対陣を守って攻撃しろ!円陣を守れ!取り囲むんだ。気をつけろ」
1000の兵が一気に山に入った。
兵は槍、刀、弓隊が主である。
「こ、これは・・・」
兵隊の屍が累々と続いた。「殺られている・・・全滅だ。あんな短時間に・・・」
倒れてまだ蠢いている兵を見つけた。
「まだ、生きてるぞ。おい、しっかりしろ!」
その兵は脇腹をかっ捌かれて臓物を垂れ流していた。鎧の上から。
「これでは助からない・・・」
「う・・・う・・た、助けてくれ・・・」
「おい!何があった?!」
「け、獣が・・・・獣が・・・飛んできて・・・あっと云う間に・・・」
「おい!しっかりしろ!」
兵はそう云うと死んだ。
「こいつの傷は何か獣に噛まれた傷だ、しかし、咬み傷などでこんな深い傷を負わせられるのか?」
首がもげて、紙一重で身体に付いている死体もある。手足がバラバラの者も。
シュッ!シュッ!「・・・何か黒い物が走ったぞ」
シュッ!シュッ!「何だ?早くて見えない」
ヒュン!
右から左から交互に何かが飛び交っている。
1人の兵が弓を放った。「こなくそ!」
キャウーーン!当たった。
ドサッ!
「これは・・・・狼だ!」
「狼の群れ?野生の狼とは動きが違うぞ!」
訓練されている!
「軍用犬だ!」
訓練された犬は闇夜では最強である。
「夜目が利く相手ぞ」しかも奇襲のはずが、すでにお見通しだ。
「我らの匂いを嗅ぎつけたか・・・・」
しかも物凄い数が森林を利用しながら右往左右、木の上からも仕掛けて来る。
ズシャッ!バスッ!
「ぐわあ!うわあ!」襲っては駆け抜けて行く。すると異なる方角から矢の如く飛び込んでくる。動きについて行けない。
次々と兵は倒れた。一方的な惨劇が始まった。首を食いちぎられる者、手足を食いちぎられる者。あっと言う間に兵士達は、バラバラにされた。たちまち血の海だ。
「ぐわあ!うわあ!」「ひいいいいーーーーー」
「逃げろ、逃げろーーー」
「こらあ!戦え!命令だーー!」
「巫山戯ろ!あんなものに敵うわけねえぞ!逃げろ!」
わーーーーーーーーーーっ!!
恐怖で皆、脱げ出した。
「くそ!雑兵共があ!兵衛門!」
「はい!」
「お前の特殊小隊を前進させろ!戦うな。屍を盾に、隠れながら部落に迫れ!」
「承知!」
鳥居を超え、麓には山中から逃げてきた兵たちで溢れた。
村から後続部隊が飛んできた。
「何があったんだ?!」
「全滅、あのままでは全滅ですぞ!凄まじい狼の群れが襲っています」
「狼だと?須佐の仕業なのか?」
その時、鳥居からも無数の狼が次々と飛んできた。異空間からである。
「な、何だ?!」
その狼が兵を襲った。
「ぐわあーーー!」
村人たちは平伏したまま、其処にまだ居たが、狼たちは彼らを襲わなっかった。兵士だけを襲った。しかし、村人たちは恐怖で平伏しながら目を閉じて、震えていたのだ。
「須佐様の戦さだ。この世の戦さでねえぞ・・・・見るな・・・まだ始まったばかりだ・・・地獄が始まるぞ」
兵士たちはパニックだ。
「何故?鳥居から出てくる?」「こいつらは化け物だぞ!」
村にはまだ本陣が残っていた。
「弓隊を構えろ」
麓の狼が本陣に走り抜けてきた。
ドドドドッド!
「全員、早打ちだぞ!」
「承知!」
1人の黒づくめの男が狼の群れの中に混じって走っていた。
馬に乗った指揮官が気づいた。
「あれは・・・あれが須佐だな。狼は奴らの子飼いだ!」
指揮官が叫んだ。
「貴様は須佐の者か?!」
その男は走りながら答えた。
「おうよーー!狼使いの須佐小六だ。覚悟せい平家!」
「射程距離内に入ったら一斉に矢を放て!」
その狼の群れの中の須佐は1人では無かった。狼の影からムクッと数人の須佐が現われ出でた。
背から刀を出し、狼に跨って襲ってくる。
何かを放った!手裏剣だ!1つの手裏剣が無数に分かれて飛んでくる。
「あ、あんな距離から・・・」兵たちは魂消た。
ブス!ブス!ブス!ブス!
「冷やああああ」
1人の須佐が手を空に仰いだ。すると・・・・。
ヒューーーーーーーーーン
何かが空から降ってきた。槍だ!無数の鉄槍が空から本陣を襲った。
「ど、どこから飛んできた?!」
ズズーー−ーン!グシャグシャ!兵は串刺しだ。「ぐわあーーー!!」
空からは鉄槍。地上から手裏剣。逃げ場が無い。
「奴らは、化け物だ・・・・・我らは愚かだったのか?・・・・」
全滅は目の前である。
兵衛門たち特殊小隊は身を隠しながら部落に迫っていた。周りでは悲鳴しか聞こえない。真冬の夜空に悲鳴が響いている。断末魔の悲鳴だ。
「賊長を殺れ!」
須佐をあくまで賊である。山を囲みながら円形を組み、その数は約100。少しづつ部落に近づいていた。
「ここまで来れば狼は来ない。よし、走れ!」
だだああ
すると前を数人の男が歩いて来た。女もいるようだ。
「誰だ?」
その中の1人が云い放った。「須佐一族、族長・武角とその側近よ」
「な、なんだと?!」




