王都での戦闘後
ミーティアラ王国王都ウンディエネ東地区。
大きな被害を受け、おびただしい瓦礫と怪我人、死体がそこらかしこに転がっている。
その中の一角で、シンジは放心状態であった。自分の周りには、無残に転がる多くの死体が横たわっている。
シンジの為に、身を挺した亜人達。
シンジを倒そうとした、帝国兵達。
それらを眺めながら、自身の無力さを実感していたのだ。
「大丈夫か?」
声を掛けられ、シンジが顔を上げると、銀色の魔法で動くパワードスーツを全身に纏った友人の姿が目に映る。
「ああ……」と生返事を返し、どこか上の空と言った感じだ。
タクローは、周囲を見回す。
最初シンジを見付けた時には、亜人達は絶命しており、シンジを帝国兵が取り囲む状態だった。
王城前の広場での戦闘の後、戦車を中心に破壊する事を開始したタクロー。だが、戦車も負けじと応戦し、また、ソレを守る形で歩兵隊もまた、銃弾を浴びせてくる。
多種の魔法で応戦している最中、一台の戦車を吹き飛ばした時、シンジを見つけた。そして、近くには、リボルバータイプの拳銃で戦闘するミーナの姿もあった。
直ぐ様、タクローは彼等を助けるべく行動を切り替える。
最初は、シンジを取り囲む兵士を魔法による風の刃で切り伏せる。
続いて、やや離れた位置に居たミーナを助けるために氷の槍を放った。
そんな矢先、『撤退』の声を上げた一人の兵士の言葉で、帝国兵士達が一斉にその場から逃げ出したのだ。
タクローは追撃をする事はせずに、その場でへたり込む仲間の元へやって来たのだった。
「ホント大丈夫かよ? ってか、なんで獣人やエルフ……ってか、亜人達がお前の周りにたおれてんだ?」
「俺を守ろうとした奴、俺を逃がす……いや、待避させようとした奴等だよ……」
心ここにあらずと言った様子で、シンジは淡々と答えた。
そんなシンジに、タクローは「そうか」と言って、言葉を詰まらせる。
「俺には、無理だった……。戦車を一台壊したまでは良かったんだ……。だけど、俺の考えが甘かったんだ……。戦車の砲弾で吹き飛ばされて、気が付けば取り囲まれて……、そしたら、こいつ等が俺を助けようと……。でも、だめだった。俺は、人殺しはできない……。いや、戦車に乗ってる連中は死んでるはずだから、人殺しだ……」
シンジは、独り言の様に言葉を発する。
ソレを見たタクローは、またも「そうか」と返すに留まった。
地球世界に於いて、人を殺すという行為はある意味、タブーである。
無論、タクロー達が暮らす時代でも、他国では内戦や紛争などで多くの人間が、人間によって殺されていた。
だが、タクロー達が暮らす国では、違った。それは、かつての話であり、タクロー達は知らない世界と言っても過言ではない。
何故なら、『銃刀法』によって武器を持つ事自体、許されないことだからだ。
そんな世界で生きる人間が、いざ目の前に立ち塞がる人間を殺そうとした時、躊躇してしまうのは、当たり前の反応だと言える。
現に、ミーナも魔導銃を撃ったが、急所を尽く外している。
「やばいなぁ……」
ミーナが、片足を引きずりながらタクローとシンジに近づく。
「そっちは、大丈夫?」
タクローの呼びかけに、ミーナは辛そうに笑う。
「いくら銃を扱えると言っても……、いざ人殺しとなると、体が硬直して駄目だね……」
「ああ、成る程……ね」
タクローが、気持ちを察したように、弱々しい声を出す。
「おまけに、試作のM4が盗られちゃったよ……」
「えむよん?」
ピンと来なかったタクローが聴き直すと、ミーナが試作したM4モドキについて語りだす。そして、帝国兵士の攻撃により、奪われてしまった事も話したのだ。
ゆっくりと、王都に霧が立ち込める。
タクローとミーナは、シンジに慰めの言葉を何度も繰り返している。そのため、霧の事に対して、反応が遅れるのだった。




