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全身鎧を着た魔法使い  作者: 大和 改
二大国家戦争
114/713

王都での戦闘後

 ミーティアラ王国王都ウンディエネ東地区。

 大きな被害を受け、おびただしい瓦礫と怪我人、死体がそこらかしこに転がっている。

 その中の一角で、シンジは放心状態であった。自分の周りには、無残に転がる多くの死体が横たわっている。

 シンジの為に、身を挺した亜人達。

 シンジを倒そうとした、帝国兵達。

 それらを眺めながら、自身の無力さを実感していたのだ。


「大丈夫か?」


 声を掛けられ、シンジが顔を上げると、銀色の魔法で動くパワードスーツを全身に纏った友人の姿が目に映る。

「ああ……」と生返事を返し、どこか上の空と言った感じだ。


 タクローは、周囲を見回す。

 最初シンジを見付けた時には、亜人達は絶命しており、シンジを帝国兵が取り囲む状態だった。

 王城前の広場での戦闘の後、戦車を中心に破壊する事を開始したタクロー。だが、戦車も負けじと応戦し、また、ソレを守る形で歩兵隊もまた、銃弾を浴びせてくる。

 多種の魔法で応戦している最中、一台の戦車を吹き飛ばした時、シンジを見つけた。そして、近くには、リボルバータイプの拳銃で戦闘するミーナの姿もあった。

 直ぐ様、タクローは彼等を助けるべく行動を切り替える。

 最初は、シンジを取り囲む兵士を魔法による風の刃で切り伏せる。

 続いて、やや離れた位置に居たミーナを助けるために氷の槍を放った。

 そんな矢先、『撤退』の声を上げた一人の兵士の言葉で、帝国兵士達が一斉にその場から逃げ出したのだ。

 タクローは追撃をする事はせずに、その場でへたり込む仲間の元へやって来たのだった。


「ホント大丈夫かよ? ってか、なんで獣人やエルフ……ってか、亜人達がお前の周りにたおれてんだ?」

「俺を守ろうとした奴、俺を逃がす……いや、待避させようとした奴等だよ……」


 心ここにあらずと言った様子で、シンジは淡々と答えた。

 そんなシンジに、タクローは「そうか」と言って、言葉を詰まらせる。


「俺には、無理だった……。戦車を一台壊したまでは良かったんだ……。だけど、俺の考えが甘かったんだ……。戦車の砲弾で吹き飛ばされて、気が付けば取り囲まれて……、そしたら、こいつ等が俺を助けようと……。でも、だめだった。俺は、人殺しはできない……。いや、戦車に乗ってる連中は死んでるはずだから、人殺しだ……」


 シンジは、独り言の様に言葉を発する。

 ソレを見たタクローは、またも「そうか」と返すに留まった。


 地球世界に於いて、人を殺すという行為はある意味、タブーである。

 無論、タクロー達が暮らす時代でも、他国では内戦や紛争などで多くの人間が、人間によって殺されていた。

 だが、タクロー達が暮らす国では、違った。それは、かつての話であり、タクロー達は知らない世界と言っても過言ではない。

 何故なら、『銃刀法』によって武器を持つ事自体、許されないことだからだ。

 そんな世界で生きる人間が、いざ目の前に立ち塞がる人間を殺そうとした時、躊躇してしまうのは、当たり前の反応だと言える。

 現に、ミーナも魔導銃を撃ったが、急所を尽く外している。


「やばいなぁ……」


 ミーナが、片足を引きずりながらタクローとシンジに近づく。


「そっちは、大丈夫?」


 タクローの呼びかけに、ミーナは辛そうに笑う。


「いくら銃を扱えると言っても……、いざ人殺しとなると、体が硬直して駄目だね……」

「ああ、成る程……ね」


 タクローが、気持ちを察したように、弱々しい声を出す。


「おまけに、試作のM4が盗られちゃったよ……」

「えむよん?」


 ピンと来なかったタクローが聴き直すと、ミーナが試作したM4モドキについて語りだす。そして、帝国兵士の攻撃により、奪われてしまった事も話したのだ。


 ゆっくりと、王都に霧が立ち込める。

 タクローとミーナは、シンジに慰めの言葉を何度も繰り返している。そのため、霧の事に対して、反応が遅れるのだった。

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