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第17B話「廃人ソロVS廃人レイド、からの…?」

お待たせいたしました。

<<フィールド:銀星(マーニ) 現在地:東極の海>>


月面から見える球状の大地――人(アンスロ)族は『大いなる天地グルトラド』と呼ぶ場所――から

最低でも二対の翼を持った中性的な外見の人型生命体が

何体も月面に向けて飛んできて着地した。

その中には見覚えのある天使…白炎(フラムブラン)のアシーエルもいた。


「およ? 何かダメージ受けてね~?」

「白炎…風耐性、すぐに補強」

「へいへ~い…白天(シエルブラン)はいっつも煩いな~」

「ハッ…そうやって多寡括ってっから、この間のティヤウス龍脈(レイポイント)で

紫の何かよくわからん奴にグチャグチャにされんだろーが。ちったぁ学習しろや」

「黒雷(シュヴァルツドゥンナー)、それあの子(アシーエル)の禁止ワードですよ」


黒雷と呼ばれた天使の一言に顔がくしゃくしゃになって青ざめ恐慌するアシーエル。


「ひぃぃいぃぃ~ッ?! こんな見通しの良い所で最悪だぁあぁあぁぁぁあ~ッ!!」

「おっと…悪ぃな幾黒(オールダーク)…軽率だったわ」

「まぁ結果的にあの子が余計なことをしなくなるでしょうから構いませんよ」

「幾黒…情報、確かなの?」

「天命主(アウゴエイデス)様のお言葉に間違いなんてあるはずがないでしょう!?」

「…そう」

「あん? んだよ白銀(アルジェンブラン)…何々…?

"裏付けは取れた、銀の月の裏側には放置してはいけない勢力がいる。

私たちの任務は敵勢力を調べ、可能ならば全力を持って殲滅せよ…

という主命を忘れてはならない"…? って自分で喋れや!!」


他にもぎゃあぎゃあ喚き散らしながら天使たちは

月の地平線の向こう側に続々と飛んで行った。



<<フィールド:銀星 現在地:月面村ハティ=マーニ・ヴィレッジ>>


≪Hati=Máni Village~ケモ耳の楽園~≫


そう描かれた何とも重厚にもほどがある看板が掛けられた

メタリックにもほどがあるゲートの向こう側に足を踏み入れた時、

ここは本当に月の上なのかと言いたくなるくらい緑に溢れ、

どこのアイダホ州の農場かと言いたくなるくらい広い畑とかガチで村な風景もあった。


「最早テラフォーミングだな」


呆れを通り越して感心するサドラスを見て勝ち誇った顔をする

人型戦車に見まがう兵器という兵器を全身に、極めつけは

なぜか頭にケモ耳アクセサリーをピシッと装備した機甲人(メタノイド)の青年、時穏(じおん)。

何を隠そうこの男が天地聖魔大戦(デスゲーム)時代からトップを独走し、

今もなお知る人ぞ知る神話(ミソロジー)級ギルド「GrTrAd攻略(ヤリコミ)組」リーダーだ。


「だがここにはオレ様好みのウサ耳ちゃんが一人もいねぇ…!

運営マジ殺してぇ…!! あぁあぁぁあウサ耳prprhshsからの

抜かずの72時間耐久●●●●してェーッ!!」

「落ち着け時穏。そんなだから"ケモナーprprマイスター"とか

"the 666 fu☆ker"だのリアルでさえ生きていくのが辛くなる称号を得るんだぞ」

「"ガチ戦車野郎"のテメーには言われたくねェ!」


時穏に突っ込みを入れられた…

…確かにどう見ても戦車に手足が付いたとしか言いようない格好の機甲人と思われる男。

サドラスは流石に見覚えが無かったので頭上の名前を見る。


「アジャラ…壁役(タンク)の方向性が違わないか?」

「え? でもリアルの戦車だって相手が対戦車兵器(LAW)とか多用しない限りはほぼ壁だろ?」

「とか言ってますがコイツ、この間近所のダンジョン『月喰大神ノ腹』で

敵Mobレイドの集中火炎放射で危うくBBQになりかけたし」

「うわあああああやめろおおおおおおお天花(てんか)あああああああ!!」


戦車男アジャラのトラウマを再燃させたらしいコック風の格好をしたネコ耳装備の…

やはり機甲人の女、天花はやれやれだぜ~と言いたくなるポーズをとりながら

採れたてっぽい見たことのない根菜類を地面からヒョイヒョイと籠に詰めていく。


「ショックだなぁ…レベル頑張って電界皇クラスの5234まで上げたのになぁ…

その上を軽ぅくサドラスに追い越されてたなぁ…ギギギギギギ…!」


何気にサドラスの後ろにぬるぬる付きまとってくる全身刀剣だらけで

イヌ耳装備の機甲人の痩せ男はこれ見よがしな歯ぎしりをやめる気配がない。


「エッジブレイダス…そう簡単に差が埋まると思うな」


ちなみに百(ハンドレッド)、ユスタリシア、カナンの三人娘たちは

サドラスと『GrTrAd攻略(ヤリコミ)組』古参にして最高幹部メンバー達との会話に

普通に置いてけぼりになっているが、何気にあまり聞くことのなかった

サドラスの昔話を聞ける機会と踏んだのか、会話を盗聴するかのように聞いていた。


「しかし独りが好きとか抜かしてた手前(テメー)がハーレムパーティだとぅ…!?

爆発しろやバトルジャンキー紫がァ!」

「ジャンキーに関しては"おまゆう"だな無限銃獣王(アンフィニピストルベトロワ)」

「ちッくしょうオレ様のステータスがあと六万ちょっと高ければ手前なンぞォ…!」

「時穏…あんたの場合はケモ耳変態成分を如何にかすれば何とかなるんじゃなし?」

「それは言えてるなぁ。見た目”だけ”ならイケメンハリウッドスター級の

日米ハーフだしなぁ」

「無理(ノー)。ケモ耳愛を抑えるとかマジ無理」

「まぁ所詮ジョンソン・岡本・マックスウェルとかギャグみたいな本名だしな」

「本名関係ねェだろアジャラこの野郎! マジぶっ殺す(ファッキュー)!」


そう言って時穏はアジャラにマシンガンを乱射する。

殺す気があるような物言いをしつつもマシンガンの威力は通常のものらしいので

どう見ても戦車なアジャラのHPゲージは減る気配がない。


「そういえばサドくん。昔私がキミにあげた武器の数々はどうなったし?」

「魔改造アリサカライフル『七天圧倒』+987に殺戮拳銃ヴァリアントSfzx+658、

次元斬破鎌ルリエニエル+785と魔王処刑剣アルシエル+1210のことか?」

「うん。何回見直しても全部おかしい三ケタ超えの+Lv修正入ってるしぃ…!!

まぁちゃんと使ってるってのはその数値を見ればわかるから別に良いし」

「最近は"知的聖魔武器(インテルウェポン)化"に"人化"もしたぞ」

「ふーん………………………………………………………………………………………

…………………………………………………………………………………………………

…………………………………………………………………………んうぇえっ!?!?」


サドラスは述べられた武器たちを人化させて天花の周囲に出現させた。


「おかーたんひさしうりー!」

「何このそのままお持ち帰りぃしたくなる幼女!?」

「七天圧倒だ」

「創造母(マインミュッター)殿。御息災で何より也」

「誰だし?! このアーリアンなイケメン?!」

「確かSfzxだったか」

「お館(サドラス)様。ざっくばらんすぎて重要なポイントが欠けているんだがね」

「この女史っぽい人は…?」

「ルリエニエル。眼鏡は専用装備らしい」

「うひゃひゃひゃひゃ♪ マーマ少し混乱しすぎじゃね~?」

「男…? 女…? ねぇこのパッと見で性別がハッキリしないこの子は誰だし?」

「消去法でアルシエルだと認知してやれ」

「認知とか言うなしぃ?! 私まだ二十歳だしぃ?!」


口をパクパクさせている天花に時穏をはじめ攻略組メンバーは

「こいつぁレアな光景だRECREC」と動画を撮り始めた。

ちなみにサドラスは誰がどう見てもゲスな表情でニヤニヤしている。


「サドラスくん。楽しそうだね」

「しれっと全員の平均レベルは4800を超えていると聞いたが…

面白いくらいに凄さを感じぬところが逆に怖いのぅ」

「でも、これでシュウの超常規格外(スーパーイレギュラー)は伊達じゃないことが確定した」


三人娘たちがそろそろ会話に混ざってみようかと考えていた時、

サドラスは何気に攻略組メンバーの武装を逐一観察していた。

最後に行動を共にしていたVer2.17から一年以上の時が経ったとはいえ、

旧友たちの装備が当時を遥かに超えるえげつないポテンシャルを秘めていることは

そういった類の狂気山脈な武具を数多く見て触ってきたサドラスだからこそ、

気になって気になってゲスな表情も本腰を入れられなさそうだった。


「なあ時穏」

「あん? 何だよサドラス」

「俺は単独(ソロ)で、お前の集団(レイド)と…戦(や)らないか?」

「ファ☆キンバトルジャンキーめwおkwwいいよォwww」


口が悪いが時穏は嬉しそうに愛器をメンテナンスし始めた。


「おいダンジョンはどうしたダンジョン? BBQ怖いけどそっちで良くないか?」

「キヒヒヒヒヒヒッヒィ! 今すぐ戦(や)ろうかぁ! 戦(や)ろうなぁ?!」


たぶん攻略組で一番マトモな思考を見せたアジャラだったが、

その後ろで片手に二本、すなわち両手に四本の刀剣を装備して

シャリンシャリンギャリンギャリンと刃を擦り合わせて研ぎ澄ますエッジブレイダス。


「ダメだウチの男連中…私が何とかしないとヤバいっぽいし…で、

やっぱり一撃決着なんてやるわけないし? 何割減決着にするし?」

「俺は八割減決着で」

「……………さすがに私たちを舐めすぎじゃなし?」

「大丈夫だ、最大HPなら一億を超えた」

「おいおいアジャラの最大HPを軽く二倍かよヤリコミジャンキーめwww

超wktkしてきちゃったじゃねぇかァwwwww」


「しれっと恐ろしいことを始めようとしておるが…どうしたものかのぅ?」

「ただでさえマトモじゃない言動で、余計に全員の目が怖いもんね…」

「うぅ…恐れてはいけない…! シュウとの距離感を縮める好機…! …なのに…!」


流石に百も膝が笑ってしまっているようで、その場から動けなかったようだ。



<<フィールド:銀星 現在地:静の海>>


流石に勢い余って拠点を破壊するのはNGということで、

サドラスと攻略組メンバーは拠点から少し離れたところで

狂気の沙汰としか思えない廃人ソロVS廃人レイドをおっぱじめることとなった。


「お前たち四人以外の後ろのメンツは人(アンスロ)族なのか」


攻略組メンバーの横や後ろで控えながらサドラスを

警戒心むき出しで見てくる超々高レベルの人族達。

ただ彼らも狼人(ライカンスロ)族等の生粋の獣人系はともかく、

全員が何らかのケモ耳装備をしているのは如何なものだろうか。


「正規のメンバー残り二十二人はデスゲーム終了直後リアルに帰ってしまったんだ」

「ってことで地上で成行きのままパーティに加えた連中で頭数を揃えたわけだし」

「流石に全員レベルはまだ4000を超えたばかりだけどなぁ…

まぁそんなコト今は知ったこっちゃないんだけどなぁ…キヒヒヒヒヒィ!!」

「戦う前くれェは落ち着けやエッジ。そンで負けたらテメーのせいだぞ?」

「はぁ…しょうがないなぁ…時穏の言う通りにしようかぁ」


どう見ても刃物を持った狂人にしか見えなかったはずのエッジブレイダスは

まるで別人になったかのように表情が消えた。


「では、サドラスがMAXHP20%以下。

俺たちがMAXHP40%以下の決着で、双方よろしいか?」

「あぁ」

「問題ねェな」


アジャラの最終確認に答えたサドラスと攻略組の間の中空にPvPという名の

狂気の多対一バトルを開始するためのカウントダウン表示が現れる。


「こんなに楽しそうなPvPは久しぶりだ…」


サドラスは両手に愛用の銃剣と大斧ではなく、

魔剣ヴァルナルダー+1658と聖剣カルマーグニ+1587を装備した。


――5――


「あン…? 小手調べでもする気かよ」

「キヒヒヒヒヒィ!! 剣でシてくれるのかぁ?! ギヒヒヒヒヒィ!!」

「エッジ落ち着くし、あんたが肝っちゃ肝だから先走るなし」

「複合属性の双剣か…俺たちの属性耐性が軒並み200を超えていると

分かったうえでその装備なのか」


――4――


「今後のことを考えれば、お前たちの弱点その他は

一つでも多く把握しておかねばならんからな」


「何だそういうことかよ…っつうことはテメーは相当属性強化もしてんだな?」

「サドくんどれくらい上げたし?」


「平均400を超えたところからは面倒だから数えていない」


「「「?!」」」

「キヒヒィ!! 上げまくった物理で斬れればどうでも良いなぁ!!」


――3――


ここからはお互い言葉を交わすのをやめた。


――2――


「………さて」


――1――


サドラスは「闘気充填」を無意識のうちに発動させていたようで、

彼の周囲には青いオーラのようなものが湧き上がってきた。


――0――


サドラスは地面を蹴る。するとサドラスが先ほどまで居た地点が爆撃を受けた。


「動きをちょっとばかしでも阻害できりゃそれで構わねェ!!

撃って撃って撃って撃ちまくれェ!」


最初に立っていた場所が絨毯爆撃でも受けたかのような状態になっていることを

一瞥したサドラスは、とりあえず氷神術+997「コキュートス・トロメア」を発動して

辺り一帯に月面のはずだが綺麗な雪が降ってきたかと思えば

その雪が落ちたところから猛烈な勢いで瞬間凍結が始まる。

一分と掛からず、サドラスの半径一千数百メートルは氷結地獄に包み込まれた。

連続射撃いや爆撃に乗じてサドラスを囲んでフルボッコしようとした

エッジブレイダス含めた近接特化集団は全員が最低でも下半身以上を氷漬けにされた。


「ギィッヒッヒッヒッヒッヒィッ!! やっぱりなぁ!!

氷耐性バカ振りしてて良かったなぁ!!」


氷結地獄から数秒で脱出できたのはエッジブレイダスただ一人。

その他の近接特化メンバーは未だ氷漬けから逃れられず、

真綿で首を絞められるようにジワジワとHPとSAN値を諸共に削られていく。

即ちエッジブレイダス以外の近接メンバーは大パニックだった。


「Oh……やっぱギリギリまで離れてて良かったぜ」

「やはり警戒していて正解だったな時穏」

「さぁ動ける連中は回復にさっさと行くしぃ!」


当然だがエッジブレイダス以外の主力三人は射程外だったので無傷だ。

しかし時穏はこれで大規模な爆撃が出来なくなったことに小さく舌打ちをし、

装備を馬鹿でかいロケットランチャー状の武器から

馬鹿でかいポンプアクション式のライフルに似た形状の武器に切り替え、

アジャラは残ったメンバーで新しい迎撃陣形を組むことに無心し、

天花は自分の取り巻き連中の尻を叩きながら負傷者の回復に奔走していた。


「最高だなぁ! やっぱりサドラスが一番良いなぁ!」


両手に四本、爪のように装備した刀剣を多重残像してしまうほどの高速移動で

振り回しながらサドラスに肉薄してくるエッジブレイダス。


「さすがに動きのキレが向上したな。あの時とは比べ物にならん」

「そりゃあそうだろうがぁ!! レベル5234は伊達じゃあッなぁいんッだぁッ!!」


エッジブレイダスの全身が鈍色に輝いたかと思えば、

彼の斬撃から紫色のエネルギー状の刃が飛んできた。

見覚えのないスキルだなとサドラスは急所に来るものは全て捌きながら物思いにふける。


「がぁあああぁぁぁあぁ!! その余裕をグッチャグチャにしたいなぁあぁぁあぁ!!」

「一応未知のスキルに焦っているんだがな」


何気にサドラスもエッジブレイダスの猛攻に

久しぶりの連続大ダメージを受けているのだが、

何しろ最大HPが一億を超えているので、

合計して一千万ダメージに達しても10%程度でしかないので

痛覚も殆ど無視できるレベルのデスゲーム時代に慣れ親しんだ痛みしか感じない。


「とりあえずこれで」


そう言ってサドラスは戦斧奥義Ⅸの「ディストラクトルネード」をブチかました。


「なぁああああぁぁぁあぁぁ?!」


どす黒い竜巻に飲み込まれるエッジブレイダス。

それを見届ける前にサドラスの眉間に何かが命中し、派手に仰け反った。

サドラスのHPゲージは1%減ったか否かである。


「っしゃあ! クリティカ…らねェ?!」

「頭部ヒットでさえクリティカルにならないってことは…最悪でも

俺の素のVITを超えているということか…」

「笑えないし、…ってことは10万超えてるってことだし」


焦っているようで何気に次弾装填からの精密射撃に余念のない時穏。

しかし流石にサドラスも関節や重心等を含めた急所には当てさせてはくれない。

弾をパリングしながら時穏たちとの距離を詰めていく。


「行かせんよ!」

「それはそうだ」


武器を構えたサドラスの腕を取ったかと思えば、

そのまま取っ組み合いに持ち込むのは戦車男アジャラだ。


「自分でも愚かだとは思うが…! 武器を使われるよりは…!」

「そうだな。俺の素のSTRでは300000にさえ達しない…が、それがどうした?」

「嫌な言葉だな…! 俺の素のSTR130000強がゴミのようだ!

しかし俺が何者だったか忘れたか?!」

「あぁ、少しばかり忘れていた」


サドラスは背後からエッジブレイダスに滅多切りにされていた。

しかしサドラスのHPはミリ単位で動いたか動かないかだ。

とはいえ猛攻に晒され続ければミリ単位でHPゲージは確実に減っていく。


「キィイイイイヒヒヒヒッヒヒャアアア!! 勝てるぅ!!!

今度こそサドラスに勝てるぞこれはぁ!!!」

「攻撃に集中しろやエッジィ!!」


気が付けばバカでかいガトリング銃っぽい武器を両手に装備した時穏が

流れ弾はアジャラにも当たるのも構わずサドラスに乱射する。

何気に動けない状態で普通は焦るはずなのに、

サドラスは人間なら誰が見ても気持ち悪いと思う笑顔である。


「ダメ押し行くしぃ!!」


天花が何か料理系アイテムを時穏やエッジブレイダスに投げつける。

二人はそのアイテムをキャッチするや否や素早く口に放り込む。

すると二人の体が極彩色に輝く。


「即席の全能力上昇(オールライザッパー)か評価はXXX(Lv30)か?

それともXXXX(LV40)か?」

「評価LX(Lv60)だしッ!」

「ほう…それは流石に焦るな」


サドラスは『絶対捕食者(カルマラージャ)の覇気』を発した。


「「?!」」

「んあぁ?」


時穏と天花の動きが二秒ほど止まり、エッジブレイダスが眉を動かした。

その瞬間にサドラスは先ほどまでの硬直は何だったのか、

と言いたくなる動きでアジャラを十数メートル上に放り投げた。


「ぬォォォォッ?!」

「思ったほど重くなかったな」

「余裕そうに脇を開けてんじゃねぇよタコ!!」


宣言通りサドラスの脇腹を今度は超大型リボルバー二丁使いで撃ちまくる時穏。


「ッ! …うん…? クリティカルか」


脇腹に銃弾を食らったはずのサドラスはそんなことを呟きながら

人間としては普通ありえないタップスピンをして

横っ飛びで時穏とエッジブレイダスの挟み撃ち状態から離脱する。


「AGLの高さならぁ! 俺も同じ領域なんだがなぁ!!」

「あぁ、付け焼刃だが理解したよ」


サドラスはその手に最初に彼らに見せた聖剣と魔剣の二刀流装備を戻し、

サドラスの動きについてきたエッジブレイダス目がけて思い切り振りかぶる。


「だぁかぁらぁ同じ領域だって言った――ぁべし?!」


ニヤケ顔のバックステップで回避しようとしたエッジブレイダスは条件反射レベルで

ガード体制を取ったのだが、二本の聖魔剣を振りかぶった瞬間にサドラスは

装備を聖魔剣二刀流から星断巨塔十拳刀剣ヴィシュナバリ+237に換装。

自分に向けて振りかぶられた刃渡り1m程度の凶器が、

突然刃渡り14mに置き換わるという状況に追いつける人間は人間じゃない。

ゆえに若干人間離れし始めていたエッジブレイダスでなければ、

その体は綺麗に真っ二つになっていただろう。とはいえこの一撃で

エッジブレイダスは大幅にHPゲージを減らし、縦回転しながら地面を

跳ね回って倒れ、そのまま気絶してしまう。


「あぁもうやっぱり肝心なトコで役立たずの紙ペラ防御だったし!!」

「それでも奴の素の防御は50000を超えているんだが…まぁ否めんか」

「所詮切り込みだからなッ! 陽動の役割さえ果たせりゃ文句はねぇ!!」


サドラスがエッジブレイダスを打ち破るまでの間に、

時穏は、どう見ても生身の人間が使うものではないレベルの超巨大レールキャノンを

アジャラに支えられ、天花に超多重バフらしきスキルを付与された後にサドラスに向け

「超加速(ウルトラアクセル)極光(オーロラ)素粒子(エレメントパーティクル)砲(キャノン)…発射ァアアアアァアァ!!」と

叫びながら超巨大レールキャノンからもう何色と形容していいのか分からない

名前の通り極光(オーロラ)にも見える極太レーザー砲撃をぶっ放してきた。


「…チッ」


舌打ちするサドラスは月面をギャリギャリガリガリと削りながら破壊する

極太レーザー攻撃に飲み込まれた。


「ちょ?! これはもう流石にPvPじゃないでしょ?! サドラスくんヤバいよ!!」

「廃人(マグナウス)同士の戦いはPvPであっても

狂気の沙汰だと聞かされてはいたが…何ということじゃ…!!!」

「シュウ…! だめ…!!」


百、ユスタリシア、カナンの三人娘は傍目には戦争にしか見えない

廃人同士のPvPに息をつく暇もなかったが、さすがにサドラスがこの

どう見てもチリ一つ残らない攻撃に晒されてしまうのには黙ってはいられなかった。


「おい天花ァ! ほかのメンツの回復終わったのかよォ!?」

「今やってるし! 起きろ紙ペラ刀剣(エッジ)ぃ!!」

「うほぅ!? え、ちょまさかぁ俺気絶してたぁ?!」

「動きがない…!? 何を考えているんだサドラスめ…!」


しかし先ほどまでの尋常ではない攻撃を終えて、

すぐさま気絶しているエッジブレイダスを蹴り起こす等の次の対応に追われる

攻略組メンバーの様子を見た三人娘は、先ほどの超大量破壊攻撃を食らってもなお

サドラスが生きているのだということを知って安心する。


「凄いな…俺のHPが半減手前だぞ」


まだ粉塵が立ち込める場所からサドラスは攻略組目がけて飛び出してきた。

利き手には機甲竜槍ナーガラージャ+1352を固く握りしめ、

対の手には連射式グレネードランチャー『ジョマンス』+1724を装備している。


「マジでバケモノに成りやがったなこのヤリコミジャンキーがッ!!」


両手にセミオートショットガンらしき銃を持って応戦する時穏に、

サドラスは闇魔剣奥義X『ディバイドラインブレイカー+379』を放った。


「何で槍装備で剣gオヴエェ?!」


もう反論しかできなかった時穏はどす黒い衝撃波に吹っ飛ばされる。

吹っ飛ばされた時穏にトドメとばかりにグレネードランチャーを乱射したサドラス。

しかしそのグレネード弾が時穏に届くことはなかった。


「ぐぬォォォォォオォォォッ!?」


乱射されたグレネード弾を全部ガード体制とはいえ全身で受け止めたのはアジャラ。

見る見るうちにアジャラのHPゲージが半分以下に削られ、

彼の頭上の名前の上に「Defeat confirmed(敗北確定)」の文字が張り付き、

アジャラの全身が「世界の理(ワールドシステム)」によって脱力して倒れる。

以降勝敗が決着するまでアジャラはほぼ全てのダメージを受けることは無いが、

一切戦闘に参加することもできなくなる。


「WTF! クソが…!」


「うわ、やばいし…!」

「ピンチはぁチャンスってことにすればぁ!!」


戦線離脱してしまったアジャラを見て焦る吹っ飛び中の時穏と天花を余所に、

HPが61%ほど残っているエッジブレイダスが再びサドラスに特攻する。


「今度こそ全力だぁ!! 喰らえやぁ!! バーストアタック(BA)!

『虚無の果ての幾千刃』んんんん!!」


エッジブレイダスが姿を消したかと思えば、倒れたアジャラを一瞥することもなく

前進を続けるサドラスの体にどんどん痛そうな切り傷が現れる。


「バグベアエンペラーの単眼鏡(モノクル)の効力でも姿が見えんのか…厄介だな」


いやいやもっと焦るべきだろうと突っ込みたくなる状況下の中、

サドラスはここで装備を愛用の銃剣と大斧に切り替える。


「………面倒くさいな」


サドラスは黒魔術+3999『ライトニングバースト』を発動する。

上空一帯が雷雲に包まれ、夥しい数の落雷が辺り一帯を打ち滅ぼしていく。

それだけでは物足りなかったのか、今度は愛用の銃剣から無差別銃撃Ⅶ『悪意跳弾(リコシェットマルヴェヨン)』

を所構わず撃ちまくり、いきなり高高度に飛び上がったかと思えば

広域殲滅兵器Ⅷ『ノア・ストライク』を地上に発射した。

最初に撃ち込まれたスキル攻撃は柔らかいモノは跳弾し、固いモノを"爆砕する"性質をもった弾丸で

高高度から撃たれた攻撃はまさに大洪水のように見えるエネルギー波を炸裂させる仕様のスキルだ。

ゆえに撃たれた側の惨状は酷いことになっている。


―うぎゃああ!!―

―耐性が突破アアアアアアアッ?!―

―死ぬぅぅううぅ!―

―俺に足りないのはVITかぁ畜生がぁぁぁぁあぁあぁぁあッ!―(注:エッジブレイダス)

―こんな闘いやってられるかあああああああああああああ!―

―あばばばばばばばばばばッ?!―


攻略組の人族メンバー全員の頭上の名前に敗北確定のアイコンが出現しまくった。

PvPによるワールドシステムの制約が無ければ彼らの三割は本当に死んでいただろう。


「あっという間に壊滅かよ!!」

「エッジブレイダス…よりにもよってそのままリタイア…マジ使えないしぃ!!」


たった二人になり、悪態をつきながらも時穏は良く手入れされた

グレネードガンがサブウェポンとして装備された対物マシンガン型の銃を装備し、

天花は天花で何かヤバそうな色をしたポーションを飲み干した。


「やっとお前たちの本気が見れるんだな」

「「?!」」


時穏と天花が気づいた時にはサドラスは大烈風妖刀『瞬起弾指(マタタキダンシ)』+3854と

革新皇帝剣イノセント+3289の二刀流で二人の前に立っていた。


「馬鹿にしやがってぇ!!」


時穏はマシンガンを乱射した。サドラスは急所以外に当たるのは無視しながら

じわじわ距離を詰めていく。


「まぁだぁ本気じゃないしぃッ!!」


パッと見は包丁だが、大きさと刃の作りから言って「人斬り包丁」と表現したほうが

正しい形の包丁の二刀流でサドラスに襲い掛かる天花。


「どりゃああぁぁあぁァアァアアアアアアァアァァアッ!!」

「……やはり、今もお前が攻略組最強か」


サドラスと天花の剣戟は飛び散る火花が

「邪魔したらお前から殺す」と言わんばかりの雰囲気を醸し出す。

まぁ邪魔できそうなのは時穏くらいしかいないのだが。

時穏は時穏で「サドラスが隙を見せてくれねェかなァ…」

と言いたそうな表情の精密狙撃体制で二人の剣戟を見守っていた。


「天花、お前を見ていると思い出すよ」

「くぅんぬやろおぉおぉぉォオオォォオォォォオオォオオッ!!」


サドラスは今自分と本当にこれPvPなの?

と言いたくなるガチな表情をして包丁二本を振り回す天花を見ながら、

どうやら昔のことを思い出しているようだ。


「腕力増強物理殴打至上主義だった俺に

技の何たるかを教えてくれた…クソ生意気な年上気取りで…

今はこの世の何処にもいなくなってしまった女…アイr」

「おんどりゃあああアァアアァアァァアァアァアァアアッ!!」

「…そうか、今のお前の本気がコレなのだな」


能面のように無表情になったサドラスは

"二刀流で戦いながら、視界の隅にいた時穏目がけて"

黒魔法+3999「グラビトロンミキサーキャノン」をブチかました。


「こんのファッ★ン天然チート野郎がア゛ッ―――――――!」


避けられなかった時穏は波動砲の中に消えかけたが、

頭上に敗北確定アイコンが出て倒れ、事なきを得た。


「えっ?!」

「そこでよそ見をするな」


サドラスは天花に強烈な腹パンを食らわせる。

"く"の字に曲がる天花にサドラスは容赦なく拳を連続で叩き込む。

何がひどいって彼女は嘔吐とかもしているのに連続で殴るのを止めないのだ。

HPゲージが59%以下になるまで殴るのを止めないのだ。

やはりこの男はゲスの道を歩むのを止めないのだ。

のだのだ煩いけど気にしないでほしいのだ。


――勝敗確定 勝者:サドラス 敗者:GrTrAd攻略組――


中空に浮かび上がった世界の理の文字(システムメッセージ)が無常さを引き立てた気がする。


…。


サドラスと攻略組メンバーたちは、先ほどの激戦を

まるで部活動が終わったかのようなノリで事後処理に動いていた。

良い所が全然なかったエッジブレイダスはかなりキてる表情で

剣術のトレーニングに励み、アジャラは苦笑いでストレッチをし、

時穏は時穏でどう見ても核弾頭が搭載されていそうなミサイル状の物体を

「やっぱ最初からコレ使えば良かったか…?」とか呟きながら磨き、

まだ表情が青い天花に十五本目の完全回復薬(エリクシル)を手渡すサドラス。

一本で事足りないのは彼らのHPが普通のエリクシルでは回復しきれないほど多量ゆえだ。


「…サドくんホントにゲスいし…」

「確かにサドラスくんはもう少しフェミニズムな行動もしたほうが良いよね。

あとデリカシーとエスプリも全然足りないよね」

「そうじゃのう。暗殺者とかならまだしも、デスゲーム効果があるとはいえ

一応は制約有のPvPで女子に腹パンからの鬼の連打は酷過ぎると思うのじゃ」

「む…例え生き死にに関わらずとも双方合意した勝負の世界に

男女の差を持ち込むのは無粋」


百がいなかったらサドラスは存外高い精神的ダメージを受けていただろう。


「…勝利したはずなのに全く嬉しくなれんな」


サドラスは煙草を吹かしながら肩や首をコキコキと鳴らした。


「ん?」


ふとMAPのアラーム音に気を取られたとき、

サドラスの全身は青白い高温の火炎柱に包み込まれた。


「さ、流石にコレは死んだか~?!」


「…………………………………………あぁ?」


「ぎゃああああああ! ダメだ全く効いている感じじゃない~~~ッ!!」


普通に燃え盛る青い火炎柱の中でサドラスは声のする方向にメンチを切ってみたら、

思ったより距離が離れている上空に見覚えのある天使、白炎のアシーエルが

不意打ちを決めたがサドラスにメンチで返されて軽く恐慌状態に陥る様が見えた。

よく見ればアシーエルの周りには四体ほど見覚えのない天使もいる。


「はぁ~…マジかよ、天命主同様に名前の見えない奴っているもんなんだな」

「黒雷! 天命主"様"です! "様"を付けなさい"様"を!!」

「むう…全然ダメージを受けている気配を感じない」

「………」


喋らなかった銀色の装備に身を包む天使は手に持っている

大きな本のようなものに何かを書き、それをほかの天使たちに見せた。


「あん…? "あの紫は危険すぎる。能力が看破できない。周りにも

あの紫並みに危険な連中が何人かいる。一時撤退を提唱する"…だからよぉ

そういうのは普通に喋れって言ってんだろ白銀?!

なんでオレがいちいちオマエのセリフを音読してやらなきゃならねえんだよ!!」

「確かにあの紫の…人、間…? は全ての解析能力を以ってしても

見破ることができませんね…しかし生命力は最大値の三割ほど減ってますよ」

「嘘だ嘘だ嘘だ! 三割なんて減ってるわけないだろ!! どう見たって

あの紫無傷じゃんか~ッ!!」

「白炎、少し落ち着け」


アシーエルは五体の中で紅白のコントラストが美しい装備に身を包む天使に

軽く小突かれて我に返った。


「ご、ごめん白天…でもあの紫のヤバさは半端じゃないよ!?

舐めてかかったらマジで死ぬ!! この間マジでそうだったんだからな~ッ!?」

「そのあたりは貴方ほどじゃない、安心するといい」


白天と呼ばれた天使は両手を合わせて広げたかと思うと、

その広げた範囲に大きな魔方陣が展開され、夥しい数の光の弾が

サドラスたち目がけて飛んでいく。


「おいサドラス。モンスターの知り合いか?」

「あのアシーエルという天使は少し前に半殺しにした覚えがある」

「ああ、もう何となくわかってきた」

「けどサドくん珍しく解体(はぎとり)しなかったし?」

「当時は少し事情があってバラしそこねただけだ…今度は容赦しない」


サドラスは攻略組達に目配せして、無間波動刀『爪弾刹那+6530』を抜く。


彼の見える景色は一変、何もかもミリ単位のスローにしか動かなくなる。

そんな中でサドラスは何時ものように恐ろしい速度で天使たちに近づいていく。

まずは今に限って見れば遅いとわかる速度で光の弾を撃ちまくる紅白装備の天使…

…名前は白天のギーヴリュエル…を袈裟懸けにズバッと斬る。

まだ反応がない、なので今度はギーヴリュエルの後ろにいたアシーエルを

狙おうと思ったら、非常に鈍足な動きだが、黒い天使…名前は黒雷のシドナイ…

が驚いた顔をしながらアシーエルを庇おうとする動きを見せたので、

やはりそれも袈裟懸けに斬った。続いて後方でこちらの動きをやはり鈍足だが

捉えたと思われるもう一体の黒衣の天使…名前は幾黒のサターナ…が、

凄く鈍いが何か怪しい動きを見せたのでこちらは背後に回って三回ほど斬る。

一番後ろにいた白銀装備一色の天使…名前は白銀のラジエル…も斬ろうかと思ったが

どうやら自分の動きに気付いてすら居ないようなのでデコピンし、


「全員本当に天使の名前か。凝っているというか拗らせているというか…」


去り際に刹那を鞘に戻すサドラス。スローモーションの景色は終わる。

それと同時に。


「ぐぶ…ッ?!」


光の弾の連撃も袈裟斬りにされては維持できないらしく、

斬られた箇所を驚愕の表情で見つめ、押さえながら落下しそうになるギーヴリュエル。


「避けろバカ白炎ぐがぁぁッ?!」

「一瞬で此方に…! やらせはしまひぎぃぃいッ!?」


シドナイとサターナは強烈なダメージに浮遊が維持できず墜落していく。


「痛っ…?!」

「は…? え…? 白天…? 黒雷に…? 幾黒も…? え? は? はひ?」


額を抑えたので目の前の惨事が見えていないそして

凄くロリ可愛い声だったラジエルはともかく、モロに状況を見てしまった

アシーエルのSAN値はもうゼロ以下になってしまったかもしれない。


「やあやあやあ………お久しぶりですねえアシーエルさん」


「ひぎいゃああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛Ahあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ア゛亜゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ァ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ッ!!!!」


「よし、少し黙ろうか」

「ごウぇ?! オがぁ!? や、やめでえ゛え゛e゛エ゛え゛ェ゛え゛ヱ゛ッ?!?!」


サドラスは恐怖の叫びをあげたアシーエルの腹に容赦なく愛用の大斧を叩き込んだ。

血反吐を吐く泣き顔のアシーエルにやはり容赦なく今度は銃剣をブッ刺して

ゼロ距離ファイアを何発も何発もブチ込む。


<なぁなぁサドラッさ~ん。ちょっと気になることがあるんでそいつ(アシーエル)に

おいらをブッ刺してみてくんない?>

「わかった、理由は後で聞く」


サドラスは本当に理由も聞かず装備を魔王処刑剣アルシエル+1210に切り替えて、

アシーエルの胸に遠慮もヘッタクレも無く突き立てた。


「ギギャAH嗚呼アAGアアアアアアアア嗚呼アアアアアアッ?!!」

「ヒィイ?!」


ようやく隣の仲間に何が起きているのかバッチリ見てしまったラジエルは放置(スルー)して、

サドラスはアルシエルに話しかけた。


「で、どういうことだ?」

<ちょっと待ってよサドラッさ~ん……お! やっぱり吸える!>

「ウゲェアアアァアァアァ!? ナニガ…ナニゴレ吸ワァア゛ァア゛アァアァア゛アァアァァ!?!?」


胸を刺されたままのアシーエルのHPはものの数秒でゼロになり、

アシーエルの体が粒子と化し、その粒子を途轍もない勢いで

全て吸収してしまうアルシエル。


「―――――――――――――――――――――――ッ!?!?!?」


目の前で仲間がグチャグチャにされた挙句、捕食されるように吸収されるとか

普通にショッキングであろう光景を間近で見てしまった

ラジエルの戦意など望むべくもないだろう。

つまらなそうにラジエルを一瞥したサドラスはアルシエルに話しかけた。


「で、先ほどの行動の意味を知りたいんだが」

<おいらの特性に"魔王系の力を吸収する"ってのがあるんだけどさ~。

さっき吸収した天使っておいらの元となった魔王っぽかったからさ~

ほら、堕天使=魔王って縮図あるじゃん~? 

んで、もしかしたらイケんじゃないかって思って試させてもらったら、ほらこの通り>


サドラスはアルシエルからステータスを提示させられたのでじっくりと見る。


――<詳細ステータス>――

名前:魔王処刑剣アルシエル

種族:知的聖魔武器(インテルウェポン)・選帝侯級

段位【最大Lv】:1722(限界突破S)

攻撃力【STR】:128235(限界突破EX)

耐久力【VIT】:124450(限界突破EX)

精神力【MAG】:98165(限界突破EX)

抵抗力【RES】:112457(限界突破EX)

敏捷性【AGL】:65539(限界突破EX)

ダメージ修正【ALT】:33241(限界突破)

属性耐性:物理50 地654 水728 炎893 風556 雷255 光10 闇981 波15 万10

異常耐性:毒999 眠208 混330 痺999 凍999 石999 死999

――<閉じる>――


「ほう、レベルだけでも500以上も上がったのか…何気に異常耐性が俺より高いのか」

<人化するとちょこっと弱体化するけどね~。まぁともかくこんな感じで

"気になる"奴が出てきたらおいら反応するからさ、また試してちょんまげ~♪>


軽くアルシエルを振るってみれば、確かに先ほどよりも軽いが、

今までよりも力強く振りぬける感覚がする。


「またと言わず今すぐ試せそうな連中が――」


辺りを見回そうとしてサドラスは顔面に光の弾を食らう。

ダメージ的にはウン十万で普通なら上半身諸共に消し飛ぶが、

そこはサドラスなので軽く煤が付いた程度。


「ギーヴリュエル…!?」

「無事か、ラジエル?」

「私なんかより貴女のそのお腹…!」

「問題ない…戦闘も続行でk」

「るわけねぇだろボケ白天! 全員一撃で体力四割削られてんだよ!」

「ラジエルの言い分が理解できました…! この紫の怪物は危険です…!

あと私は三回くらい斬られて四割強で済んでますが!?」

「何バカなこと言ってんだよ幾黒!」


サドラスの前には苦しそうな顔をしながら仕留めそこなった天使たちが集結していた。


「で、どうするんだ? 俺はこいつ(アルシエル)の特性が気になるんで

お前らの何体かで試したいことがあるんだが?」


ギーヴリュエルは苦悶の表情を浮かべながら、サドラスのドブみたいに濁った眼を見る。


「………」

「…まぁ、お前らの好きにするといい。去る者は追わん」

「………後悔するかも、知れないぞ?」

「いいや、むしろ良かったと思えそうだが?」


サドラスのゲスな笑顔に気圧される天使たち。


「………撤退、する」


サドラスに背を向けて一目散に飛び去ろうとした天使たちだったが、

離れた所から夥しい数の魔法やら銃弾と思わしきものが

天使たちを撃ち落そうとする。辛うじて攻撃を防ぐ天使たち。


「いやいやサドラス…どう見てもレア素材持ちなモンスターを逃がすなよなァ?」

「普通にレベル上げられてからの逆襲などされては…

サドラスは良くても、俺たちは笑えん」

「サドラスとリターンマッチじゃないなら気は乗らないけどなぁ…」

「悪いね。いきなり攻撃してきた君たちを大人しく逃がせるほど

サドくんと違って私たちは余裕無いし」

「っていうか一応疲弊している相手に不意打ちかけるような連中を大人しく

逃がすとかボク的にもありえないもんね。いつ剥ぐかって言ったら今でしょ?」


天使たちの目の前には攻略組のメインメンバー四人+

カナンと彼女の数十体の召喚獣(平均レベル4900強)が立ち塞がる。


「く…!」

「ひっ…!」

「やりきれませんね…」

「……フン! どーせそんなこったろうと思ってたよ糞がッ!」


シドナイは全身を震わせたかと思うと、頭上の中空に「魔皇帝降雷(ザタンカイザーアルドゥンナー)」

と表示され、時に赤く煌めく黒い雷がシドナイの全身から放たれる。


「うをッ!? 危ねッ!?」

「ぬぐッ…! これは…?! 雷属性じゃない?!」

「あばばばばばばばばぁッ! ばばばば万能属性かぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「せめて魔防くらい上げてろしエッジ!」

「ありゃっ…? ボクも最近ウッカリしてるなぁ…」


不意の攻撃に紙一重で躱す時穏、

受けて耐えたが思った以上のダメージに驚いて防御形態を強めるアジャラ。

フツーに食らってあばばば言ってるエッジブレイダスに

雷を避けながら器用にエリクシルを何本かぶつける天花。

カナンはカナンで不意打ちを召喚獣たちがモロに食らってしまい、仕方なく

崩れた戦線を維持すべく広範囲回復魔法(ヒールフィールド)Ⅷを詠唱した。


「行けぇ白天!! とっとと天命主に伝えるもん伝えてこいやぁ!!」


「黒雷…すまない」

「貴女の犠牲は無駄にしませんよ!」

「シドナ…ごめんね…ごめんね…!」


BAと思われる攻撃を放ち続けながら叫ぶシドナイに言葉をかけ

ギーヴリュエル、サターナ、ラジエルは転移スキルらしきものでその場から脱出する。


「何が犠牲だ…勝手にオレを殺すんじゃねぇ…!」

「そうだな」

「なぁっ?! うごふッ!?」


シドナイは自分のBA攻撃を食らいながらもほんの数秒で普通に肉薄してきた

サドラスの拳の一撃で、そのまま意識を失った。



<<フィールド:銀星 現在地:月面村ハティ=マーニ・ヴィレッジ>>


寝室に何らかのスキルで全身を鎖でグルグル巻き束縛状態で

寝かされていたシドナイが目を覚ました時、異様な光景が広がっていた。


「!?」


時穏が地面に「犬★家の一族」の死体みたいな感じで

床に上半身を埋め込まれていたのだ。ちなみに死んでない。


「目が覚めたか」

「!! テメエ…! オレをどうする気だ!!」


地面にブッ刺さった時穏はとりあえず見なかったことにしたシドナイは、

改めて目の前に現れたサドラスを睨みつけた。


「別にどうもしない、俺はな」

「んだよその引っかかる物言い…んん?」


寝室にあった鏡台にたまたま映った自分の顔に違和感を感じたので、

その違和感の正体を掴もうと自分の顔をじっくり見るシドナイ。


「な…なんじゃこりゃああああああああ!?」

「言われてみれば確かにお前の頭に似合うな、そのウサ耳カチューシャ」


シドナイの頭には確かにもの凄く良く似合うウサ耳カチューシャが装着されていた。


「にゅやあああああ!!! 外しやがれこんちくしょうがぁああああ!!!」

「Remove Do not be! you bitch!(外すんじゃねえ! この雌犬が!!)

外したら今すぐテメーを<18禁>して<21禁>からの<検閲削除>だゴルァ!!」


犬神家状態から脱出したが即座にサドラスに取り押さえられた時穏。


「誰が雌豚だこのド変態獣姦野郎が!!」

「ああそうだよNnmber of beast fu★kerとはこのオレ様のことだよォ!

やっと見つけたぜ俺のLittle sweet rabbitちゃん…グェ~ッヘッヘッヘッヘッ!」


サドラスが見ても「これはひどい」と思うゲス顔全開の時穏に、

「ひぃ……こっちくんな気持ち悪ッ…!」とドン引きするウサ耳装着シドナイ。


「サドラスくぅ~ん…頼むよォ…こいつオレ様にくれよぉ~?」


サドラスは無言で時穏の顔面を16連射で殴った。


「こいつをオレ様にくれたらお前の希望する素材なら神話(ミソロジー)級までなら

好きなだけくれてやるからさァ~~~~~~~~? あひゃひゃひゃひゃ…!

いや待てこのウサ耳ちゃんが手に入るなら何でもくれてやるぞゥ…?」


ボッコボコ顔にされてHPもかなりヤバい領域にもかかわらず

余計に気持ち悪い顔になった時穏はまだそんなことを言う。


「寝てろ」

「はべし?! おろ…? おろろ…?」


サドラスは拳で時穏の顎をこするように殴った。

すると時穏は千鳥足で何歩か歩いた後、近くのベッドに沈んだ。


「真面目な話。その子を普通に尋問してみたいなって思ってる連中もいるし。

サドくん的にどうなの?」

「相手がサドラスじゃないから気乗りはしないけど…まぁ切り刻めるなら八つ当たりに

丁度いいかもなぁ」

「おまいら…今田に目がヤバス」(注:アジャラ)


サドラスはシドナイを見た。

シドナイはサドラスと攻略組メインメンバー達を見やる。

何か急に包丁を研ぎだした天花。

その横で砥石を借りて研ぎ作業に便乗するエッジブレイダス。

頭をポリポリ描きながら「俺には止められん」とサインを出すアジャラ。

気絶しているはずだが「ウサ耳ィ…! ファ★クさせろォ…!」とか寝言を言う時穏。


五分ほど沈黙。


「オレ…アンタに着いていったほうが長生きできそうな気がしてならないんだ」

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はぁ」


何気にシドナイのステータスを見て頭を抑えるというレア光景を見せたサドラスだった。


第18話に続く

何気に一話分の最高文字数記録をまた上回りました…

勢いがつきすぎた…!

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