―第玖章 青空のモーション―
キーンコーンカーンコーン……。
「おっし、授業を始めるぞ。福島、号礼」
「起立。気を付け、礼」
チャイムが鳴り、雛形先生の授業が始まった。
「おっと、そうだそうだ。おまえらの出し物……ミスコンについてだが、俺が上に圧力掛けて公認させた」
「せんせー」
「なんだ吉川」
「先生は校長先生の弱みでも握ってるんですかー?」
「おう。握ってるぞ」
ポケーっとしている吉川津由理の言葉にしれっと返す先生。まじかよ。
「ミスコンは体育館で行われるようになった。衣装は自由らしいな。だが、あまりにも非常識すぎる格好で出るのは禁止な。あくまでも公共の場ってことは忘れないでくれ」
「非常識すぎる服ってなんですか?」
「たとえば……そうだな。パンツ一丁とかだな」
テキトーすぎる回答だった。
「てか、おまえらは特進クラスだからそんなこと百も承知だと信じているぞ。あと、衣装で意中の相手をたぶらかして学園で不純異性合体はしないように。始末書がめんどくさいからな。やるなら早退してホテルか、家でやれ」
「不純同性交遊はいいんですですか?」
「レズは許すがゲイは許さん」
『レズも許すな!』
すっごく基準が汚い先生だった。
「レズはいい。女同士で美しいからな。だがゲイはなんだ。男同士の暑苦しいののどこが美しいというんだ。俺にはさっぱり理解できん」
知らねーよ、そんなもん! きっとみんなそう思っているに違いない。
しかし、先生の意見に同意してしまう自分が恥ずかしい。
「先生。それがいいんですよ。……ふふふ」
怪しく答えるのが完全変態メガネ女子、三枝瑞智。……BLオタクだ。
「三枝。正直に言おう。俺は絶対認めん」
「先生、ヤッてみる前に否定するのはよくないと思います」
「ヤりたくもないな、男なんかと」
「そうですか。残念ですねぇ」
残念ですねぇ、じゃねーよ。なにを勧誘してるんだあいつは。
「まぁ、不純異性合体をしたければやれ。どうせ止めても無駄だ。それに変な風に制限つけて迷惑を起こされたら困る。俺の教師人生終了のお知らせが流れちまう」
あんた本性はSICの総司令官だろうが。
俺達、SICの捜査官全員が呆れかえる。
「さて、で。提案者の蝶野。おまえはちゃんとミスコンのルールとか、そういうのをきちんと考えるんだぞ」
「なに、もう頭の中でシュミレーション済みさ。あとは発表するだけだ。私も楽しみだ。ミスコン……ふふふ。あられもない少女たちの……しかも樹里くんの姿が見れるのだからな。……おっと、鼻血が」
なにを想像したのか、鼻血をダラダラ流す理子。
びくっ! 俺の後ろの樹里が震える。
……そうだ。たしか理子はかなりの可愛いモノ好きの変態だ。
樹里をアンチしているのは、強気な樹里をイジメて可愛さを引き出すためだとこの前言っていたし。
もしかしたらミスコンも、ただ単に可愛い女の子たちの姿が見たいだけなのかもしれん。
学園順位1位の成績を誇り、運動神経抜群、容姿端麗の完璧美少女。しかし、中身はやっぱり変態だ。
どうしてこの学園にはこういうやつが多いんだろう。
「おまえも出るんだからな?」
「当然だ。提案した本人が出ないはずないだろう。本末転倒だ。私が優勝して、売り上げを巻き上げるんだからな」
「相当の自信だな」
「まあな。私はグラビアアイドルもビックリの体型だからな。勝つ見込みはあるさ」
確かにその通りだった。実は、理子の出番が楽しみである。
「優稀だって負けないよ!」
とか考えていると、優稀菜が立ちあがりズビシッと理子を指差す。
「ふふん。グラビアアイドルもビックリな体型だったら優稀だって負けてないよ、理子ちゃん!」
「ほぅ。では優稀菜くん。君のスリーサイズを言ってみたまえ」
「上から105・59・88なの! 理子ちゃんは!?」
「教えるわけないじゃないか、男子の手前」
「!!!!! な、なのーッ! み、みんなぁ! 忘れて! 今の優稀の発言全部忘れてーッ!」
顔を真っ赤っかにさせ、一気にテンパる優稀菜。
一方、俺たち男子はみんな幸せだ。ありがとう、優稀菜。そして理子。
優稀菜、おまえは不幸かも知れんが、俺たちは幸せだよ。
「ふふふ、優稀菜くんも可愛いなぁ。いいだろう、こっちに来て耳を貸したまえ」
理子が涙目の優稀菜を手招きし、優稀菜の耳元でなにかを囁いた。……すると。
「…………が、ガーン。負けたの……」
優稀菜がとぼとぼと席に戻り、机に突っ伏せた。あーあ。
「3ミリ……あと3ミリバストが大きかったら勝っていたのに……」
「おいおい、優稀菜くん。そんなこと言ったらばれてしまうだろう」
なるほど、理解した。幸せだ。うん。
「おっと、もう授業をするぞ。ていっても、あと十五分か。よし、今日は自習だ。俺はここで寝る。おまえらは好きにしていいぞ」
相変わらず、テキトーな先生だった。
To be continued




