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―第漆章 青空のロングホームルーム―

 琴美が俺たちの家に泊って、翌日の学校での一時間目



「文化祭まで二週間。クラスでも出し物を決めろと生徒会から通達が来たので、この雛形先生の授業を借りたロングホームルームで決めちゃいたいと思います」



 このクラスのメガネ委員長こと福島香織が黒板に「2年B組の出し物」と綺麗な字で書き、俺たちに言う。

 雛形先生は教室の端っこで寝ていた。本当に自由な先生だ。



「正直私は、ただの出し物に興味ありません。宇宙人、未来人――」

「はいはーい、香織。あんたの軽いネタはいいから、ちゃっちゃと決めるわよ」

「……ぶぅー」



 隣に立っている樹里はこのクラスの副委員長である。それと、香織は腐女子。はっきりわかんだね。

 すごいや、このクラス。委員長も副委員長も腐女子だ。特進クラスなのに。



「まぁ、フリーダムに決めましょう。このクラスらしく、フリーダムに」



 皆まで言うな、樹里。

 このクラスは文系の特進クラスでありながら、個性豊かな野郎どもが勢揃いしている。

 おかげでカオスだ。いい意味でも悪い意味でも。



「香織、あんたは黒板。私は手を挙げたやつを指していって、出した案をテキトーに突っ込んでいくから」

「あいよ」



 香織がチョーク片手にOKを合図。



「じゃあ、みんな。じゃんじゃん意見を言って。私と香織が頑張るわ」

「はい!」

「よし、大輔。あんたが一号よ」

「やったぜ!」



 大柄の体育館系男子、立川大輔が先陣を切る。



「ここは張り切って、ラップが入っている歌しか歌っちゃいけねぇ限定カラオケでもやろうぜ!」

「なるほどいいわね」



 普通にまともな意見の大輔。

 ラップのみっていうのがいいな。噛んでいるやつは絶対いるだろうし、絶対に面白い。



「でも残念。生徒会の発表だと、すでにカラオケ大会はイベントのひとつになっているから被るのよ。だから没で」

「まじかよ。結構いいと思ったのにな」



 被ってちゃしかたないかと引き下がる大輔。本当に残念だ。



「次!」

「はい!」

「よし、美香子。どーんっと言っちゃいなさい」



 次に手を挙げたのは理系科目には一切興味がない秀才、三島美香子。

 かなりマニアックな方面での有名人である。



「喫茶店なんかどう?」

「定番ね。でもただの定番はつまらないわ。なにか捻れる?」

「いっぱい捻れるよ。ツンデレ喫茶、ヤンデレ喫茶、女装男装喫茶、メイド喫茶、堕天喫茶。どれがいい?」

『メイド喫茶!』



 答えたのは俺を含める男子全員だ。いや。これはマジだろ。



「えー、メイド喫茶は定番だよ。ツンデレ喫茶だよ。『ゆ、優稀、あんたのことなんて……客だと思ってないんだからねっ』とか」

「甘いわ優稀菜。それこそ定番よ。ヤンデレ喫茶は結構いけそうじゃない?『えっ、もう帰っちゃうんですか? まさか……他の喫茶店に行くわけ……ないですよね? そうですよね。あなたはうちだけのお客様ですもんね。あはは……』とか」

「半ば脅迫だよ、それ」

「いいのよ、それがヤンデレでしょう? 儲かるし、人気が出そうだし一石二鳥じゃない」



 ……忘れてた。優稀菜はともかく、鏡花も若干腐ってる部分があったんだ。



「喫茶店は保留ね。種類はあとで決めることにしましょう。ナイス、美香子」

「やりっ」



 樹里がまとめ、美香子の提案は保留。いい意見だった。だが俺はあくまでメイド喫茶を押すぞ。メイド服は漢の浪漫だ。……でも。

 ヤンデレ喫茶に樹里を投下したら凄いだろうな。



『まさかもう帰るつもり? まさかね。そんなわけないわよね? もっとここにいてくれるわよね? え? もう時間だから無理だ? ふーん……バキッ。あれ? どうかなさいましたお客様? え? もっとここの紅茶を飲みたい? かしこまりましたー♪ 紅茶十杯入りまーす♪』



 脳内再生してみた。……これは売れる。

 ほかにも堕天喫茶で綺羅先輩を呼んでも面白そうだ。だって、翼持ってるし。



「さぁ次! 意見あるやつ、手を挙げいっ!」

「はい」

「あ……あんたは……っ」

「どうした、樹里くん」

「い、いえ……なんでもないわ。ど、どうぞ……」



 手を挙げたのは蝶野理子。樹里が苦手にしている大人びた雰囲気の女子だ。その実態は……。



「そうね……樹里くんのストリップショーなんてどうだ?」

『おおおおおっ!』

「男子ども! 黙りなさい!」



 圧倒的樹里アンチの超ドS。怖いぐらいの。



「わ、私のストリップショーとか誰得よ!」

「さっきの反応でわからないか? 儲かりそうだぞ?」

「わ、わかってしまった自分が恐ろしい!」



 震える樹里。……これはいかんな。



「理子、それはやめよう。いくらなんでも警察沙汰になるし、さすがの樹里も耐えられないと思うぞ」

「そうか。なかなか儲かると思ったのだがな。このクラスだけでも……二十八万ぐらいはいけただろうに」

「なんで男子の数×一万で計算しているのかは突っ込まんぞ」

「突っ込んでいるではないか」

「とにかく。そういうアッチ系はやめよう。文化祭でやるようなことじゃないだろう?」

「しゅ、俊輝……あんたってひとは……」



 なんだか感動している様子の樹里。普通のことを言っただけだと思うのは俺だけかね?



「ふむ、たしかに。……ならば」



 ポンっと手を叩いて再び意見する理子。



「ミスコン……なんてものはどうだね?」

『お、おおおおおおおおおおおっ!』

「それだ! そうだよ! そういうのを待っていた!」



 理子の素晴らしい提案に俺たち男子は涙を流して喜ぶ。

 ミスコン……素晴らしい響きじゃないか! 売れる! 売れるぞ、ミスコン!



「ちょ、ちょっと理子!」

「あ、あんた……それ本気で言ってるの!?」

「み、ミスコンて……!」



 一方、女子は全員テンパっている。まぁ、普通の反応だな。男子も女子も。



「本気だ。このなかで一番に輝いた女に、売上を全て捧げる。それが条件でいいだろう。それに衣装も自由だ。自由に決めていい。メイド服、他校の制服、ブルマ、旧スク水、裸Yシャツ、コスプレ、スッポンポン。どれでも可だ」



 な、なんて男心をくすぐるロマンの品物ばかりを提示してくるんだ! しかも最後はなにも纏ってねぇ!

 理子が挑発するように続ける。



「それでもなんだ? こんなに自由なのに取り止めにするか? 君達は自分の容姿に自信がないのか? 怖いのか?」



 どんっ!

 俺の隣に座っていた鏡花が机を叩いて立ちあがった。

 や、やばっ! さすがに怒ったか? 俺たちがふざけてばかりいたから。

 一気に空気が凍りつく中、鏡花が口を開いた。



「いいじゃない! 勝負事! わたしは大歓迎よ! 勝負よ、理子!」

『え、えええええええええええええええええええええええっ!?』



 予想外の鏡花の言葉に全員が目を見開いて驚く! 平然としているのは理子だけだ。

 ――ドンッ!

 そんな中、隣のクラスで授業をしていたらしい橘川がドアを乱暴に開ける。



「うるさいぞ! しずかに――」

「あんたが静かになさい! この禿タヌキが!」

「な、なんだと貴様! 私を誰だと――」

「あんたこそわたしを誰だと思ってんのよ! 身分を弁えなさい! 今は真剣な話をしているのよ! あんたのわけがわからない授業よりもよっぽど有意義なね! 邪魔! 場違い! とっとと出てけ!」

「は、はひっ! すみませんでした!」



 鏡花の超乱暴マシンガンにボッロボロにされた橘川がしおしおと教室から出て行った。怖ぇ……。



「それにね、あんたたち女子! 自分の容姿に自信がないって勝手に決めつけられて本当にいいの? 悔しくない?」

『!』



 鏡花の言葉にこのクラス、理子と鏡花を除く13人の女子がはっとする。



「……そうだね、それは悔しいの……」

「……たしかに」

「……聞き捨てられないわね」



 な、なんだ? 女子が全員危険なオーラを纏い始めたぞ。



「この際、やっちゃいましょうよ! ミスコン! 自分の容姿がどれだけ優れているか男だもに見せつけてやりましょうよ!」

『おおぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!』



 鏡花の言葉に全ての女子が立ち上がり、雄叫びをあげた。



「決まったわね……」



 教卓のとこで立っている樹里が言った。



「今回の出し物は……ミスコンじゃこらぁぁぁぁぁあっ!」

『おおぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!』



 女子全員が燃えていた。

 そして、俺達男子全員が呆然としていた。

 と、いうわけで、今回の文化祭の2年B組の出し物は「ミスコン」に決定した。




             To be continued

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