―第伍章 青空のミーティング―
「さて、全員集まったな。会議を始めるぞ」
次の日の放課後。
生徒会室に今現在、この学園にいるSICの捜査官全員が集結していた。
「中目無による情報だと、九番隊隊長補佐官の瀬良がここ最近、妙な視線を感じるということだ。十七夜、詳しく説明してくれ」
「はい」
雛形先生の言葉に鏡花が返事し、立ちあがった。
「新学期の開始から、瀬良琴美は視線を感じたということです。一瞬ですが瀬良琴美が感じた視線を昨日、わたしと同部隊の杉並、加賀美、十二番隊隊長の杉並、その補佐官の芹沢が察知しております。直感的に、この視線の主はかなりのスキルを持った人物と思われます」
「へぇ……キミ達がいるところにわざわざ現れて視線を感じさせたってわけだね」
さすが龍侍さん。察しが早い。
「ってことは……だ」
ちらっと琴美の方を見る龍侍さん。琴美はその視線から目を反らした。
「それで、琴美ちゃんのお兄さんたちはどう言っていたんだい?」
「それがですね、おかしいことにその視線を一切感じていないと言うんですよ」
「……へぇ……」
『…………』
「…………」
この龍侍さんと鏡花の会話で、一気に空気が重くなってしまった。
「瀬良」
「は、はい……」
「今回の犯人についてだが……おまえに心当たりはあるか?」
「…………」
先生の質問に黙ってしまう琴美。
やっぱり、自分の口から言うのはいやらしいな。
「まぁいい。今はな。京竹、俺と行動しろ。いいな?」
「いいよ」
「あとの全員……杉並一家は瀬良の保護だ。この事件に型がつくまで瀬良をそっちに住まわせてやってくれ。いいな?」
『はい』
「瀬良も……文句はないな?」
「は、はい……」
琴美は渋々頷く。……まぁ、それが一番いいな。
「よし、じゃあ今日はここまでだ。あ、せっかくだから言っておくぞ。もう少しで文化祭だ。京竹と中目無は最後、杉並と瀬良は最初の文化祭だ。楽しめよ。じゃあな」
それだけ言い残して、先生は生徒会室から出て行った。
そういえばもうそんな季節だ、文化祭。
「さて、じゃあ解散しよっか」
綺羅先輩のこの言葉で、俺達全員は生徒会室をあとにした。
❁ ❁ ❁
「じゃあ、わたしと歩美で琴美を一旦帰らせて、私物を取りに行くわね」
「みなさんは先に帰ってくださいね」
校門で。
鏡花と歩美は琴美と琴美の家に向かった。
「じゃあ、ボクも失礼するよ。彼女のケアは俊輝くん、よろしく」
「はい?」
「りゅ、龍ちゃん!」
「な、なんてこと言ってるんですか!」
「変なこと言わないで欲しいの!」
「はっはっは、まぁ、心配しなさんな。当の俊輝くんは意味がよくわかっていないらしいからさ」
「?」
なんで綺羅先輩たちが必死になっているんだろう。それに龍侍さんの言っていることもよくわからない。
「じゃあ、ボクはこれで失礼するよ。またね」
それだけ言い残して龍侍さんはここから去っていった。……なにが言いたかったんだろう。
「ほ、ほらみんな。帰ろう」
変な空気から脱出するべく、俺はみんなに無難な提案をしたのだった。
❁ ❁ ❁
帰宅してから数分後。
「ただいまー」
「ただいまですー」
「お、お邪魔しますー」
「おう、おかえりだ」
鏡花、歩美、琴美の三人が帰ってきた。
「凄い荷物だな」
「サーセン。これの八割がアタシの狙撃銃なもんで」
「多いなぁ」
手を洗い、リビングに入ってきた鏡花たちの肩にはゴルフバッグがそれぞれひとつずつ、琴美はさらにリュックサックと旅行バッグを持っていた。
たぶん三つのゴルフバッグの中身が狙撃銃なのだろう。凄いな、三丁も持ってんのかよ。
「琴美さん言うに、私が背負っているのがSR-25、鏡花さんのがツァスタバ M76、琴美さんのがウィンチェスターM70だそうです」
「はい。特にこのウィンチェスターはアタシと長い間付き合ってきた相棒すっよ」
ウィンチェスターM70が入っているゴルフバッグをなでる琴美。……ウィンチェスターM70……か。
「それってたしか……大量生産のせいで精度が落ちたんじゃ?」
「ノンノン、甘いですなシュンくん。このウィンチェスターはPre'64 Model 70なんですよ。シリアルナンバー000001の最初期一番始めに作られたもの。大量生産されたポンコツとは格が違うんですよー♪」
なるほど初期のやつ……って! ナンバー000001!? すげぇ!
「どこで手に入れたんだ、そんなレアもん」
「えっへへー♪ よくぞ訊いてくれましたねー♪ じゃあ話してあげますねー♪」
すっかり上機嫌になった琴美は俺が座っているソファの隣に元気に座る。
「この銃はですね、アタシが日本に派遣する前……三年前、鏡花さんと同じアメリカの軍隊で働いていた時に、狙撃部隊の教官からある事件を機に、アタシの実力を買ってくれて譲ってくれたんです!」
「ある事件って?」
俺の質問に鏡花が答えてくれた。
「三年前に起こった、アメリカのテロ事件よ。相手は幼稚園を狙い、子供を人質のとった卑劣な輩十四人。おかげでわたしたち強襲部隊は手も足も出なかった。そんな中、わたしが狙撃班から連れてきた琴美がヘリコプターからテロリスト全員を、見習い用の安物狙撃銃で全員行動不能にしたのよ。生きた状態で」
「え!?」
「驚いたでしょ? 当り前よ。あの場にいた全員が驚愕したんだから。まさかの事態に。その後にわたしは迷わずに琴美をパートナーに選んだわ」
「えっへへー♪ 最強のエースにそこまで言われるとは恐れ入るなぁ。ありがとうございますねー♪」
「これがきっかけになって、わたしたちはSICに招かれることになったのよ」
すげぇや。もうそれしか感想が来ないほどすげぇや。
そっか。この出来事がきっかけで、このふたりは行動を共にするようになったんだな。
「まぁ、昔話はここまでにして、他のみんなは?」
「あ、あぁ。どこかに行ったぞ」
『?』
全員が首を傾げる。
そう、樹里たちは、ここに帰って来てからすぐにどこかに出かけていったのだ。
「どういうこと? なんであの三人は出かけたの?」
「さぁ? 帰りの途中でみんな、なんだか慌てていたけど……。……っ!」
ま、まさか……っ! い、いや、そんなはず……。
「あんたたち、もしかして犯人に尾行されてた!?」
「い、いやっ、俺は何も感じなかったぞ!」
「で、でも、もしかして樹里さんたち気付いていたんじゃ……!」
「いやいや、じゃあなんで俺に相談しないで勝手に行っちまうんだよ!」
「シュンくんを巻き添えにしない為、とか!?」
「そんなわけねぇよ! ああ! なんだか心配になってきた!」
一瞬でテンパる俺たち。まさか……まさか……。
「ただいまー」
「ただいまーっなの」
「ふぅ、ちょっと遅くなっちゃったかな?」
『!?』
みんなが心配しているところにテンション高く帰ってきて、リビングにひょっこり顔を出した樹里、優稀菜、綺羅先輩。…………。
「……なぁ、なんで出かけていたんだ?」
「ふぇ? それはこれのためなの」
優稀菜がバッグの中から……一本のエロゲのソフトを取り出した。
「これ、今日発売するのを忘れちゃったから買いに行ってたんだ」
「……俺と帰っている時に少し焦っていたのは?」
「いやね。それ、人気商品で売り切れちゃいそうだったんだ。最後の一本だったの」
「……なんですぐに買いに行かなかったんだ?」
「優稀ちゃんが財布を家に置いてきちゃったからだよ。うん。焦ったよ」
「……俺に言わなかったのは?」
「だって私たちが話しかけても、あんた、なんか考えていて聞こえてなかったじゃない」
「…………」
『…………』
優稀菜、綺羅先輩、樹里の答えに俺たちは全員沈黙。
「……?」
「どうしたのよ?」
「どうしたのん?」
沈黙する俺たちにわからない顔をして訊いてくる三人。……んだよ。
「なんだよ! 心配して損しちまったじゃねぇか!」
『えっ!?』
「わたしたちはそんなくだらないことにさっきまでテンパっていたわけ!? 最悪!」
『ええっ!?』
「三人とも最低です!」
『えええっ!?』
「……ふんっ」
『えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!?』
三人は悲鳴を上げていた。
ったく。心配かけさせやがって……。
To be continued




