―第弐章 青空のコンサルト―
「ただいまっと」
答案返却が終わり、俺たちは家に帰宅。
「はーい、おかえりなさい」
「お邪魔してますー」
歩美はとっくに帰宅。そりゃそうだ。歩美も俺たちと同じ特進クラスだから。
ちなみに綺羅先輩は三年生の通常授業中だ。
いや、綺羅先輩も特進なんだけど、三年生は受験が近いからこういう休みはないんだ。
「おう、琴美。いたのか」
「はい、どーも。今日は少し相談したくてですね」
「そっか。まぁ、ゆっくりしていろよ。俺たちも手洗ってくる……って、もう俺しか玄関にいねぇか」
みんなもう玄関にいない。居るのは俺と琴美だけだった。
「あはは、シュンくん、アタシと話しているからだよ」
「違う。みんなが早過ぎるんだ」
「ふふっ、こういうときに一番遅いのがシュンくんクオリティ」
「うっさい」
ほっとけ。それはガキの時から樹里に言われていたことだ。
俺はこういう日常生活面ではみんなより若干行動が遅いのだ。どうしてだろうか。
「まぁ、シュンくんが鈍いからでしょうかねぇ?」
「なんだって?」
「いえいえ、こっちの話です」
「そっか」
ならいいや。深く訊くのも気が引けるし。
「ほら俊輝、琴美。いつまでそんなとこに突っ立ってんのよ」
「早く手洗ってうがいしなさい」
「……おまえらは俺の母親か?」
洗面所から出てきた樹里と鏡花に言われて口を尖らせるが、その通りだ。
「じゃあ、手、洗ってくるから、リビングに行ってな」
「はーい」
琴美は玄関からリビングの方まで走っていった。あんなに素早いのになんで近接格闘系が苦手なんだろうな。
「さて、もう上がろうかね」
俺は靴を脱いで、家に上がり、手を洗いに洗面所に向かった。
❁ ❁ ❁
リビングにて。
訪ねてきた琴美の相談を聞くべく、全員がソファに座っている。
なぜか、琴美は俺の隣に座っていることに他の女子全員がジト目で見ているけど……まぁ無視だ。
鏡花が単刀直入に訊く。
「相談ってなに?」
「あの……最近のアタシの身の周りのことで……」
「あんたの身の周り?」
「はい……」
琴美が不安そうに瞳を曇らせる琴美。天真爛漫な彼女があんな表情をするなんて珍しい。
「なんですか。なんていうか……気配が……」
「気配?」
「はい……なんだかイヤな気配がするんです。新学期に入ってから」
「つまり、昨日から?」
「はい……」
「どこで?」
「なんというか……どこでも……。アタシの部屋の中でも……帰り道でも……」
「……ストーカー?」
「ストーカーとは違うんですよ……なんというか……アタシを狙っているような……」
「琴美、あんたそのこと、兄貴たちや美鈴に言った? 一緒に帰っているんでしょ」
「うん。言ったよ。でも、なにも感じないって。美鈴は仕事で九州に行っているので……」
琴美の兄と姉は「絶対兄妹」と呼ばれる世界最強と言われている「なんでも屋」だ。
「っていうか、第一。あんたの兄貴たちはバケモノ並の力と権力を持った輩なんだから、その妹で、なおかつSIC準隊長格のあんたを狙うやつなんていないでしょ、普通」
鏡花の言う通りだ。
琴美がSICであることぐらい、やろうと思えば調べられるし、「絶対兄妹」のふたりは名前を公開している。琴美がその妹であることぐらい、これも調べれば一発だ。
優稀菜が鏡花に続く。
「そうだよ、琴美ちゃん。そんなバカな輩はいないの。『絶対兄妹』の妹かつSICの琴美ちゃんを傷つけたりしたらどうなると思う?」
「そ、それは……まぁ……」
「答えは簡単。ボッコボコのぐっちゃぐちゃ。リンチなの」
SICの隊長・準隊長格を敵に回す=FBIを敵に回す。
琴美を敵に回す=絶対兄妹のふたりを敵に回す。
「そう……ですよね」
少し安した様子の琴美。――っと、その時。
『!?』
突然の鋭い視線に俺たちは全員反応。琴美の肩がぶるっと震える。
これは暗殺者……俺たち隠密機動隊がときより放つ、ナイフのように鋭い視線だ。しかも……かなり強烈な……!
「……こ、怖い……しゅ、シュンくん……」
琴美が俺に抱きついてくる。かなり震えていた。……こんな視線を昨日から浴びていたのか。
気が付いたときには、もう視線は止んでいた。
「……琴美。今日はここに泊っていきなさい」
「ああ、鏡花の言う通りだ。歩美、琴美はおまえの部屋で寝かせてやってくれ。今日は琴美は家に帰らせない方がいい」
「は、はい、もちろんです」
「樹里も優稀菜もいいな?」
「ええ」
「もちろんなの」
「あ、ありがとうございます……」
とりあえず、ここにいれば琴美は大丈夫だろう。多分。今はいないけど、綺羅先輩もいるし。
ということで琴美は今日一日、この杉並家に住むことになった。
To be continued




