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―第壱章 青空のニューサマースター―

「久しぶりの学校だな。はぁ……」

『はぁ……』



 新学期。向島学園の始業式が終わり、教室でだらーっとする俺たち。

 はぁ……遂に来たか。



「おーい、おまえらー、席に付けー」



 今は担任の雛形先生が教室に紙袋を持って現れる。その中身は――。



「新学期早々、かったるいかもしれんが試験だ。まぁ、特進クラスに来ちまったことを恨め」

『ぶー!』



 俺たちはブーたれる。

 そう、特進クラス限定新学期学力試験。

 これが頭おかしい。

 なんで新学期早々、特進クラスに限って試験が行われるんだ。

 しかも、もっと頭がおかしいシステムがある。

 このクラス……二年B組は文系の特進クラス。

 なのにも関わらず、問答無用で化学と物理の試験をやらされる。

 理系もそうだ。問答無用で地理と歴史、政治経済をやらされる。



「おまえら、理科も真面目に解けよ。まぁ、解かなかったら解かなかったでみんなに珍回答をさらけ出すからな。一学期同様に。じゃあ、配るから席に付け」



 こうして、理不尽な学力試験が始まった。



     ❁ ❁ ❁



「……よーし、お終いだ。解答用紙を回収しろ」



 お、おわったぁ……。

 バタン。

 俺の斜め後ろの席のやつが倒れた。……優稀菜だ。



「はふぅ……数学なんて科目は無かったなの~」

「現実逃避はやめて、今は現実を見ようね、優稀菜」

「現実はSICの捜査官なの~」

「やっぱり現実見るのも、今はやめましょう」



 優稀菜と樹里のそんな会話。俺も鏡花も苦笑した。



「解答は今日、全科目の先生が成績付けるから明日を楽しみにしておけ。以上、解散だ。委員長、号礼頼む」

「はい、起立、気を付け、礼」

『さようなら』

「おう、さいならだ」



 委員長の福島香織の号令で今日の学園は終わった。

 明日の結果発表が楽しみだぜ。



     ❁ ❁ ❁



 そしてその翌日。

 答案返却日だ。

 普通クラスのやつらはこの日は普通の授業。一方、俺たち特進クラスは答案返却のみ。随分と差がつきました。くやしいでしょうねぇ。

 とか、ゼ○ルネタを脳内再生していると、全ての科目の解答用紙の束を持った雛形先生が入ってきた。



「よっしゃ。じゃあみんな、席に付け。国・数・英・社を返すぞー」



「理」がないのは全員お察しだ。



「現国を返すぞ。名前順だ。荒川……」



 先生が解答を返し始めた。



「どうだ、みんな。自信の方は。俺は意外にできたぞ」

「現国は余裕でしょ」

「うぅー、問題は古典なの……」

「ま、だいじょーぶよ」



 それぞれ言うことがバラバラな俺たちだった。



「大沢……加賀美」

「は、はいなの」

「あ、次、わたしだ」



 優稀菜、鏡花と続いて結果が返ってきた。



「うーん……」

「あれぇ……」



 様子からしてまずまずのよう。



「佐藤……杉並」



 お。俺だ。ちなみに次は樹里だ。



「……まぁまぁ、だな」

「あら、私もよ」



 ふむ、どうやら全員微妙のようだな。



「じゃあ、一斉にオープンで……大丈夫でござるか?」

『だいじょーぶ』

「よし」



 懐かしの色○り忍者ネタをして一斉に回答オープン。…………。



『せーのっ』

「82」

「84」

「78」

「86」



 俺、鏡花、優稀菜、樹里の順番だ。ちっ。



「あーあ、やっぱり古典が足引っ張ったの」



 ビリだった優稀菜の解答用紙を覗くと……現代文と漢文が全問正解、古典がオンボロだった。



「優稀菜、成績が悪いんじゃなかったの?」

「むっ、鏡ちゃん。これでも特進クラスにいるんだよ? 悪いって言ってもそれなりの点数は取れるよ」



 さりげなーく失礼な鏡花だった。

 次に帰ってきたのは英語だ。



『せーのっ』

「98」

「95」

「100」

「96」



 これもさっきと同じ順番だ。



「また英語100か。凄いな、優稀菜」

「ふふん。英語は大好きだよ。だってこれができないと、生きていけないからねぇ」



 優稀菜の英語好きは裏社会の影響からだった。



「わたしが一番悪いっていうのが納得いかないわ……」



 アメリカ育ちの鏡花にとって、結構複雑なものだろうね。

 次に帰ってきたのは……社会だ。



『せーのっ』

「100」

「100」

「100」

「100」



 全員文句無し、100点。



「まぁ、な」

「これできないと生きていけないし」

「当り前なの」

「これは前提だし」



 社会に関しては当然のごとくスルー。

 次は数学だ。



『せーのっ』

「78」

「86」

「68」

「92」



 うわっ、ちょっとひどい。



「うわぁ……」



 優稀菜も俺と同じご様子だ。



「俊ちゃん、今度優稀と数学を勉強しよう」

「おう、いいなそれ――」

「バカ。苦手科目が同じひと同士で苦手科目を教え合っても逆効果よ。わたしが俊輝に教えるわ」

「ふん、鏡花。あんたより私の方が数学が得意よ。あんたはすっ込んでいなさい」

「もう! どうして優稀の邪魔してくるのー!」



 相変わらず、愉快な連中だ。



「まぁ、みんなで勉強しような。そっちの方が楽しそうだ」

『…………』



 なぜか、俺のこの無難な意見にしらけた感じになってしまうガールズ。え? なんで?



「さーてと、来たぞ。珍回答タイムだ」

『おおっ!』



 先生空気呼んだ! このタイミングでそれはありがたい。このしらけた空気を流してくれた!



「さって最初はな……これだ。呼ばれたやつは珍回答を発表された後、取りに来い。まずは、井上弓弦」

「は、はい……!」



 お、最初はあいつか。このクラスのイジられ役の弓弦。



「問題:運動の法則を三つ答えろ。井上の答え、運動の第一法則、運動の第二法則、運動の第三法則」



 これはひどい! それを聞いているんじゃないか!



「△で一点貰っているあたり憎いな。まぁ、間違ってはいないからタチが悪い。正解は慣性の法則、運動の法則、作用・反作用の法則だ。この問題自体、きたない問題だな。ほれ、井上。珍回答第一号だ。おめでとう」

「あざーっす」



 井上がお礼を言って先生から解答用紙を貰っていた。ちらっと点数見たけど85点も取ってやがる。やるな。



「次……加賀美優稀菜」

「あ、優稀なの」



 優稀菜の珍回答か。なんだろう?



「問題:自由に構造式を書け。加賀美の答え、サンポール+ドメスト=昇天」



 混ぜちゃダメな薬品混ぜやがった。



「ニコ○コ動画から引用してきたな。今度は自分で考えるように。ほれ」

「はーい、どーも♪」

「次、十七夜鏡花」

「わ、わたしかぁ……」



 笑顔で優稀菜が帰ってきたのと同時に鏡花の番になった。



「問題:物質量 1 mol とそれを構成する粒子の個数との対応を示す比例定数をなんと言うか。十七夜の答え、アボカド定数」

『おしいっ!』



 クラス全員からの総ツッコミだった。な、なんて残念な答えなんだ。



「非常に惜しい答えだった。正解はアボガドロ定数だ。ほれ」

「どーも」

「次。一気に跳ぶぞ、杉並俊輝」



 お。俺だ。



「おまえからは物理と化学、両方から出してやる」

「なんでだよ!」



 先生の理不尽なセリフに突っ込む俺。



「見た瞬間にイラッと来た。理由はそれだけだ」



 ひどい! ひどいよ先生!



「まずは物理からだ。問題:力学的エネルギーは何と何によって表わされるか。杉並の答え、物理的ダメージと精神的ダメージ」

『ふるぼっこじゃねぇか!』



 おおう。俺ってそんなこと書いたんだな。ひどいぜ。



「正解は位置エネルギーと運動エネルギーだ。こんなこと書いているのにもかかわらず、次の力学的エネルギーの保存の問題が合っているから腹が立った」



 おお、次の問題合ってた。やり。



「次、化学だ。問題:水における酸素と水素の比率を求めろ。杉並の答え33:4」

『なんでや! 阪○関係ないやろ!』



 おお、みんな。野球ネタがわかっていやがる。流石だな。



「こんなラッキー問題を落としているのはおまえだけだ。だが、これを落としておいて化学は他が全問正解なのが腹が立った。やるな、おまえ。ほれ」

「あざーっす」



 よっしゃ。なんだかんだで86だ。よくできたな理科。



「次、芹沢樹里」

「え? 私?」



 樹里は首を傾げた。自分が何を書いたのか、心当たりがない様子だ。うむ、実に反応が楽しみである。



「芹沢、おまえはらしくないミスをした。ちゃんと見直しをすべきだったな」

「?」

「問題はさっきの十七夜の問題の次だ。アボガドロ定数を生み出した人物の名前と出身国を答えなさい。これは難しいと正直思った。これが出来たのはこの四十人のうち四人しかできてなかったからな」



 ちなみにそのひとりは俺だ。



「芹沢の答え、名前アメデオ・アヴォガドロ。まぁ、正解だ。問題は出身国だ」



 出身国は「イタリア」だ。まさか、これを間違えたのか?



「芹沢の答え、出身国イタリ『ヤ』」

『う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!』

「ば、バカな!?」



 クラス全体から悲鳴が響き、樹里は目をまんまるにさせる。

 ウソだ! 樹里! なんてミス!



「たしかに間違ってはいないんだが……正式には『イタリア』だからな。残念。芹沢、これを落としていなかったら100だったのにな。ほれ」

「…………」



 なんとも言えない顔で先生からテスト用紙を貰う。うわ、凄く悔しそうだ。

 こんな感じで、テストが返されていった。




            To be continued

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