表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/136

―第壱拾壱章 橘のリリース―

「あ、どうだった? 俊ちゃん、琴美ちゃん」

「なんか収穫あった?」

「ダメだ。収穫はゼロ」

「犯行現場も密室のトリックもまったくというほど分かりませんよ」



 四階のレストランの入り口。戻った俺たちを迎えてくれた優稀菜と樹里に答えると、ふたりとも「やっぱり」と口を揃えた。



「密室トリックと犯行時刻覚乱トリックを使ってくるほど頭がいい犯人なんだから、犯行現場の特定も難しいと思ってたんだよ」

「しかも、俊輝と琴美のチームじゃあ……うっ!」



 俺は無言で樹里にチョップをひとつお見舞いする。



「失礼だぞ。百歩譲ったとしても、俺はともかく、琴美は……あ」



 ……。…………。………………。



「ん? どうしたんですか、シュンくん?」



 ちょこんと首を傾げる琴美。…………。



「ごめん、樹里。痛かったか?」

「シュンくん!? なんで樹里さんに謝るの!?」

「いや……な、ナンデカナー?」

「……ヒドイ……」



 沈んでしまう琴美。たぶん俺は悪くない。その証拠に樹里も優稀菜も意地悪な笑顔を浮かべているだけだし。このふたりの性格上、琴美がかわいそうだと思ったらフォローするだろうから。



「もう、兄さん。琴美さんをイジメちゃダメです。樹里さんも優希菜さんもちゃんとフォローしてください」



 歩美がレストランの奥の方から少し怒った顔で出てきた。



「確かに琴美さんは学校でも成績はそんなに良くありません」



 ぐさっ。琴美の方からなにかが突き刺さる音がした。



「それに発想が突飛過ぎてついていけなくなる時だってあります」



 ぐさぐさっ。



「ですが、それは少し頭のネジが緩んでいるだけであって、決しておバカさんなんかじゃないんですよ」

「う、うわーん!」

「ふ、ふへ?」



 歩美のフォローっぽい毒舌に耐えられず、遂に琴美が泣き出してしまった。歩美はキョトンとしている。



「お、おいおい、歩美。友達同士でもこれはっ!」

「ヒドス!」

「これはっ!」

「え、ええ!?」



 俺たちの方も耐えられず吹きだしてしまう! こ、これは……隠れていたSモードの歩美か? うっわ、えげつない! 本人に自覚がないあたり、樹里よりもたちが悪いと思うぞ。



「い、いいんですいいんです……学校でもたまにコレですから……」



 琴美は思いっきり沈み、俺たちにそう言ってくる。……琴美、なんだかゴメン。この流れ作ったの俺だわ。

 それにしても学校でこんな感じなのか歩美。へんなところで天然なのは知っていたけど、まさかこんな形でSが形成されていったなんて知らなかった。



「で、結果はどうだった、歩美」



 話の流れを変えようと提示してみる。が。歩美はいまだに琴美を心配そうに見ていた。



「あ、あの……琴美さんは……」

「大丈夫だ。琴美のことはほっとこう」

「酷いですよ、兄さん。泣いているじゃないですか。フォローしませんと」

『わー! わーわーわー!』

「!?」

「いいっていいって」

「ね。琴美ちゃんなら大丈夫だよ」

「そ、そうよ。あの娘なら自分で立ち直れるわよ!」

「そ、そうですかね。じゃ、じゃあ……」



 俺たち三人がかりで歩美の追い打ちを止めさせ、全員のアリバイについての話にシフトする。



「検死の結果を五十嵐刑事が問い合わせていただいた結果、月島さんの死亡推定時刻は今夜八時から九時の間。ちょうど私たちが銃声を聞いたのが九時少し前だったので、重なります」

「その頃のアリバイは?」

「ホテルを管理している土田さんはバカンス中の社長と携帯で電話をしていることが確認され、警備員三人は全員防犯カメラに姿が移されていたので白です。それ以外……つまり、ほかの客全員はやっぱりバラバラ。裏をつけるひとはいません」

「困ったな。これでまた停滞しちまった」



 あとは鏡花と綺羅先輩の結果次第だな。



「あ、戻ってた」

「おーい、戻ったよー」



 とか考えていると、すぐに鏡花たちが帰ってきた。おお、ナイスタイミング。



「そっちは?」

「ダメ。そっちは?」

「ダメだ。参った」



 鏡花の言葉を聞いて愕然する。……だめだこりゃ。



「やっぱり、一回解放させた方がいいかもですね」



 立ち直った琴美が俺たちにそう言う。…………。



「……もう、これしか方法はないようね。みんなも……いいかしら?」

『…………こくり』



 俺を含め全員が渋々首を縦に振る。しかたねぇな。



「じゃあ、一回全員を解散させましょうか。……そうえいば、あいつ……五十嵐は?」

「あっ、はい。もう、終わる頃かと……」

「お、終わりました……疲れた」



 歩美が鏡花に応えたあと、五十嵐刑事がヘタヘタの状態でこっちにきた。相変わらずいいタイミングで。



「五十嵐、今からここにいる全員を解放させるわ。呼びかけておいてちょうだい」

「は、はい……」



 もはや完全に鏡花のいいなりになってしまっていた…………。 



「えーと、皆さん。ここは一回お開きにします。それぞれの部屋に戻って頂いて構いません」

「ただし、どこかに出かけるときには必ずわたしたちSICとこの五十嵐に訊ねること。この中に犯人がいる可能性は濃厚ですので、危険ですから。以上、解散してください。ご協力ありがとうございました」



 五十嵐刑事と鏡花の言葉を受け、全員が立ち上がり、それぞれの部屋に戻っていく。

 と、そこで鏡花が土田さんに声をかける。



「五十嵐刑事の部屋をお願いしてもよろしいでしょうか。あと、沢崎さんと高橋さんの新しい部屋も」

「構いませんよ」

「そう……ありがとうございます。ほら、あんたも」

「は、はい。ありがとうございます」

「はい。ではこちらへ」



 五十嵐刑事と沢崎さん、高橋さんは土田さんに部屋まで案内されていった。……やっぱ、さりげなーく優しいよな鏡花。この中で一番五十嵐刑事をコキ使っているくせに。



「さって、俺たちも部屋に戻ろう。みんなもう眠いだろ」

「そういえば気付いたらもう一時……そうね、もう寝ましょうか」



 俺たちも部屋に戻っていった。






          To be continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ