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―第伍章 橘のクェスチュンド―

 一通りの現場検証が終わり、俺は302号室の前で鏡花を待っていた。

 樹里や優稀菜たちには今、バイキングレストランで他のひと達と待機、警察は今、ここに向かっているところだ。

 仏さんの月島さんには布団のシーツを被せてある。



「俊輝!」



 と、鏡花がホテルの従業員のひとをひとり、連れてきた。



「すみません! 私はこのホテルの責任者の土田と申します!」



 土田さんは俺に自己紹介。おっと、俺も挨拶しないと。



「SIC十番隊所属、杉並俊輝です。さっそくですが土田さん。客の人数は?」

「はい。今ここにいらっしゃるお客様は、あなた達SICの皆様、高田様御一行と、沢崎恵美様、高橋桃花様、ハリベル・クリントン様とそのマネージャーの栗林セリ様、ギャンブラーの直枝翔様、郷剛毅様、藤原なるき様、そして……今亡くなられた月島奈緒子様のみです」

「このホテル内に不審人物が入ったということは?」

「ありえません。防犯カメラにそのような人影があれば、警備室が黙ってませんから」

「三十階の防犯カメラは?」

「VIP用の方々、そして、初回限定の特別な階なので防犯カメラはございません」

「ここの従業員は?」

「私と他のボーイが三人、コックが七人、受付嬢が交代制で四人、警備員の方が三人です。しかし、もうみんな一時間前には帰っていて、ここにいるのは警備員三人と私だけです」

「ここの十五階から二十九階にいる社員は?」

「いません。ただいま社員旅行中なので、社長もいません」



 俺の質問に全て丁寧に答えてくれる土田さん。……なるほど。



「犯人は客の十一人の中の誰かね。土田さんと警備員さんは銃声がしたとき、警備員室にいたから」



 そうなるよな。



「警察はどれくらいで着くって?」

「十分くらいじゃない? まぁ、すぐ着くと思うわよ」

「そうか。じゃあ、俺たちもレストランで待機しよう。土田さん、警備員さんも全員レストランに集結させてください」

「は、はい。ただいま」



 土田さんは警備員室に走っていった。



「俺たちも行こう、鏡花」

「えぇ、わかったわ」



 俺たちもレストランへ向かった。



     ❁ ❁ ❁



「俊ちゃん、鏡ちゃん」

「優稀菜? どうした」



 俺たちがレストランに着くと、優稀菜が俺たちに話しかけてきた。



「ちょっとね、警察が来る前にみんなに事情聴取をしていたんだけど……」

「どうしたんだ?」

「優稀たち、バイキングで高田さん達が揉めているの、聞いたよね?」

「あ、あぁ、それがどうした?」



 俺がレストランの扉を閉めながら訊くと、優稀菜は一回深呼吸してから答えた。



「亡くなった月島さん……あのひとが、高田康彦さんの許嫁だったみたい」

『!?』

「……そしてもうひとつ……アイドルの高橋桃花さん。彼女が康彦さんが言っていた結婚相手だったの」

「じゃあ、高田一家に、月島奈緒子は関係していたってことね?」

「そうなの。でも……色々とおかしいの」



 ? どういうことだ?



「今回の殺人……あれは間違いなく、計画殺人だった。だって咄嗟の口論程度で殺人をしたあとに密室トリックなんて閃かないし、おまけに拳銃所持。完全にこれは計画殺人なの」

「……そうか、たしかに。それじゃあ、康彦さんや高橋さんに月島さんが自分の正体を明かして、口論になって殺害されてしまった可能性は消えたか」

「事前に知っていないと到底できないの。おまけにあのふたりは、レストランでの会話やお互いの態度からして正体を知っていなかった。だからこんなことはできないの」



 じゃあ誰がやったんだって話だ。もっと訊いてみよう。



「優稀菜、あの十一人のアリバイは?」

「チャラ男さん達は優稀たちとゲームをしていたからアリバイ成立。沢崎さんと高橋さんは途中でいなくなった月島さんを探して離れ離れになったらしいの。高田康彦さんはずっと自室に引き籠っていて、証人はなし。幸一さんはひとりで誰かと電話しに行っていて、これも証人なし。美影さんはここの温泉に、秘書の出島さんは煙草を吸いに喫煙所に行っていたらしいけど……やっぱり証人はいない。ハリベルさんとマネージャーの栗林セリさんはトイレに行っていたらしいけど……証人はいないの」



 結局、俺たちとゲームしていたチャラ男三人以外は全員アリバイは無いと来た。

 鏡花がまとめる。



「容疑者は八人。今のところハリベルさん、栗林さん以外とは被害者と接点はあったってことね」

「もしかしたら、みんな接点があるのかもしれないけどね。ま、それは後に来る警察が調べてくれるから、優稀たちはもう関わらなくていいんじゃないかな」

「……警察に任せるっていうのは、気に食わないわ」



 ……あー、そうか。鏡花は大の警察嫌い。

 前に教えてもらったけど、SICに恨みを持つのはいいけどそれに便乗してSICが関わっている事件は手柄を渡さない限り動かないのが許せないらしい。気持ちはわかるけど、警察側の気持ちもわかる。

 勝手に作られた組織に手を貸したくないんだろうな。

 ……コンコン。

 そんなことを考えていると、誰かがレストランの扉をノック。俺たちは樹里たちが座っているテーブルに座る。



「失礼します。長野県警ですが……ここに全員集合しているんですね」



 長野県警の刑事だった。隣には土田さんがいる。



「はい、そうです。あとは私とここにいる三人の警備員で全員です」

「そうですか、ありがとうございます」

「あなたは事件が起こった現場に監視気を連れて行ってください」

「わ、わかりました。こちらです」



 土田さんは刑事さんの指示に従って、鑑識さん達を303号室に案内しに行った。



「さて、みなさん。長野県警の長淵です。これから取り調べをさせていただきます」

「え?」

「また取り調べすんの?」

「さっきしたんですけど」



 沢崎さんたちのその言葉を訊いてキッとこちらを睨んでくる長淵さん。おーおー、敵意剥き出しだ。怖い怖い。



「あんたたちですか。私たちの仕事を楽にしてくれたSICの皆さんは?」

「皮肉たっぷり込めてくるわねぇ……」

「…………」



 リラックスしている樹里は嘆息して答える。鏡花はイライラさせていた。……我慢しろよ。

 長淵さんが頬を引きつらせて続ける。



「どうか、こっちの邪魔をしないでいただきたいのですが」

「邪魔はしてないよ。こっちだってそれ相応の権利があるからね」

「それに、ここに泊っているホテルの客でもありますから、別に手柄を横取りにここに飛んで来たわけでもないです」

「もっとも、俺たちがしたのは事情聴取と現場の確認だけなので、まだあんたたちがする仕事はたくさんありますよ」



 綺羅先輩、琴美、俺は皮肉なしに答える。こういう子供じみた言い争いは面倒なだけだ。  

 長淵さんは顔を鬼のような形相に変える。しかし我慢している。立場はちゃんと理解しているな。



「……そうですね。その通りです。あなたたちからはじっくり、事情聴取した内容を洗いざらい話して貰いますからね」



 別に隠したってしょうがないのに。



「では、これで。おい、五十嵐。おまえはここに残って、SICの皆様に聴取の内容を絞りだせ」

「は、はい」



 五十嵐とかいう刑事にそう言い付ける長淵さん。ひでぇな。俺たちは麻薬(ヤク)運んでる運び屋かよ。



「他のやつらはいくぞ。皆さん、身体、持ち物検査を行いますので着いて来てください」

「あれ、優稀たちは?」

「どうせ犯人じゃないでしょう。無駄な時間を割いている暇はありませんので」



 長淵さんはそう言って、沢崎さん達を連れていった。……一応、信頼はされているんだな。俺たちが無駄な人殺しはしなことには。



「すいません。長淵警部はSIC嫌いなんですよ。まぁ……警察署員なら普通、そうかもしれませんが……アハハハ……」



 乾いた笑い声で言う五十嵐刑事だが、残念ながら俺たちは苦笑しかできなかった。ちなみに鏡花は失笑している。



「私は別にいいと思うんですが……みんなからは『変わり者』とよく言われていますよ」

「……そんなウソはかえって傷つけるだけだと思うんですが……」



 冷たい鏡花のその言葉に五十嵐刑事は慌てる。



「いえいえっ、嘘じゃありませんって。私がSICにこういう風に思っているから、警部が私をここに置いていったんですから」

「正しくは、腫れ物をあなたに押し付けただけだと思うんだ」



 優稀菜が苦笑して返す。正直、その通りだ。



「あは、は。まぁ、いいですよ。じゃあ事情聴取をしますので、答えてくださいね」



 俺たちの事情聴取が始まった。



            To be continued

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