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―第壱拾章 月影のレコレクション―

「……ねぇ、気付いてる?」

「……あぁ」

「気付いているに決まってんじゃない」



 小二時間経過した頃、鏡花のその言葉に俺と樹里はそう返す。



「……ヤクザ達が……この街に集結している」



 そう……写メに写っていた顔のやつがちらちらっと見える。



「さっすが、元隠密機動の隊長とその補佐官」

「あったりまえじゃない。伊達に隠密機動にいたほど、私と俊輝は弱くないわ」

「てか、おまえは現隊長じゃねぇか」



 全員隠密機動……尾行のテクニックは身につけている。しかし……。



「……相手も相手ね。なにかを感じ取っているみたい」



 相手はヤクザ。周囲の視線にも敏感で俺たちのことは気付いているようだが、まだ半信半疑の様子だった。



「簡単にはアジトまで連れてってくれなさそうね」



 と、鏡花が言ったとき。



『……あー、あー、聞こえるー?』

「綺羅先輩? どうしました?」

『ヤクザを追跡していたらね、ヤクザが地下鉄の抜け道に入っていったよ』

「抜け道?」

『地下鉄の未開発の線。そこをアジトにしているらしいんだ。……っていうわけで』

「いうわけで?」

『今、歩いて地下鉄の方に行こうとしたヤクザを優稀ちゃんが縛り上げて拷問中だよ♪』

「……うわぁ」



 ……名も知らぬヤクザよ、ご冥福を祈る。



『このヤクザからなにか聞き出せたら、また連絡するね。歩美ちゃんたちにも連絡しておくねん♪」

「はい、お願いします」



 そこで綺羅先輩の通信が切れた。



「みんな聞こえたか?」

「ええ、もちろん」

「地下鉄の抜け道をアジトにするとは……やるわね。これじゃあスナイパーの目があっても、見つけられないわけか。さて行きましょうか」



 俺たちは追跡していたヤクザを速攻でひっ捕えて情報を聞き出した。

 その過程で、他の四人とも接触したが……なんの問題もなく気絶させ、鏡花が優稀菜から借りてきたワイヤーで縛り上げ、用意しておいた手錠を掛ける。

 これで合計六人が確保。残り四名……か。



「四人だったらわたしたちだけで制圧できるわ」

「ええ、ヤクザ達に目にものを見せてあげましょう」



 鏡花も樹里もやる気満々だった。



「じゃあ、行きますか」



 俺たちは地下鉄の駅に向かった。



     ❁ ❁ ❁



「SICの者です。ヤクザが潜伏されている可能性が出てきたため、この地下鉄を調べさせていただきます」



 鏡花が駅の係員にそう訴えた。しかし……。



「い、いえ、それは不可能です」



 駅員は拒絶の反応を見せる。



「なぜ?」

「そういう決まりでして。地下鉄の抜け道……現在の地下鉄の開発予定地に関係者以外の方を立ち入り禁止されています」

「じゃあ令状を取ればいいんですか?」

「い、いえ……それは――」

「警察よりもSICの令状のほうが強いですよ? なにせアメリカのFBIの圧力もかかりますからね。どちらにせよ強制捜査は入ります。今ならわたしたちが入るだけで済みますが、もし令状を取るのならばその間、この地下鉄、およびこの地下鉄を通る線を全て強制的に運行停止し、あなた方今ここにいる全ての駅員を全員監禁いたします」

「…………」

「全ては凶悪なヤクザを捕えるためです。仕方ないでしょう? そっちが理解できないのならば、こちらが強制的にするのみです。それでもよろしいのであれば今から本部に令状を手配し、わたしたちSICの隊員たちを総動員してでも、この地下鉄を封鎖します」

「……わかりました。どうぞ、通します」



 鏡花の脅迫にも似た説得で俺たちは地下鉄の路線内に入る。

 地下鉄の線路は、まるで死の世界への入口のごとく漆黒の闇に包まれていた。



「さっすが地下鉄。元防空壕を改良して繋げただけであってとても大きく、そして不気味ね」

「ヤクザ達も結構度胸あるわねぇ。なんか出そうよ、ここ」

「おいおい、樹里。そんなこと言うなよ――って! 鏡花も本気にすんな! 幽霊なんか存在しねぇよ!」



 ドSの笑顔を浮かべる樹里のその言葉にめちゃめちゃ反応している鏡花。……震えていやがる。



「きょ、鏡花、ほら。手、繋ごう」

「しゅ、俊輝ぃ……ありがとぅ……」



 震える手で俺と手をつなぐ鏡花。こいつ、幽霊とか嫌い人類か。……あぁ、き、綺羅さん……。



「むっ」



 樹里が俺の開いている方の手を掴む。?



「どうしたんだ、おまえ?」

「私とも手を繋いでよ」



 拗ねた子供ように言う樹里。……あぁ、こういうところも変わっていないな。六年前もそんなこと言って、ご両親に冷やかされて真っ赤にしていたっけ。

 ……あれ? そんなこと……なんで……?



 ドックンッ!



 突然俺の頭の中に映像が流れる! こ、この感覚は……ッ!



 ――笑い合う俺と樹里……優しい笑顔を見せる樹里の両親……午前三時の鐘を鳴らす大時計……炎上する樹里の家……嘲笑う数人の男……倒れている樹里の両親……泣いている樹里……午前三時四十八分に止まった大時計……そして、俺に涙交じりに言う樹里の言葉と……それを約束する俺……。



「俊輝?」

「どうしたの?」

「……え? あ、あぁ、なんでもないぞ。うん」

『?』



 首を傾げるふたり。……もう少しで思い出せそうだから、待っててくれよ樹里。



「……ねぇ……これ……」



 鏡花がなにかに気付く。そこには――。



「隠し扉……か」



 うっすら見えるその扉。…………。



「入ってみよう」



 樹里がドアノブに手を差し伸べる――その瞬間。



『もしもしみんな! 聴いて!』

『地下鉄の中の隠し扉を開けちゃダメなの!』

『爆弾が仕掛けられています!』

『見つけた場合、待機して下さい!』



 綺羅先輩、優稀菜、歩美、そして……久しぶりに聞いた美鈴の声がトランシーバーから響く!



「あ、あっぶな!」

「あともう少しで開けちゃうとこだった!」



 すんでのところで樹里が手を止め、難を免れた。……ほ。



「ちっ」

「バレましたぜ、兄貴」

「まぁ、しかたねぇな。SICの犬どもの鼻は嗅ぎつけが早い」



 前と後ろから声がした!



「……ちっ」

「囲まれてる?」

「みたいだな」



 写メで見たガラの悪い男が三人、俺たちを囲っている。



「どうもこんばんは……いえ、もうおはようの時間かしらね、幹部の山梨平四朗さんとその部下たち」

「今は三時半過ぎ……おはようの時間じゃないかな、SICのネズミ三匹」

「さて、ネズミはどちらかしら? もうこの地下鉄はSICに連絡済みだし、わたしが知っている限り、逃走したヤクザのうち十七人中十三人が確保。あとひとりは……まぁ、他の仲間につかまっているでしょう。だからもうあんたたちしかいないわよ?」

「黙れ! おまえらやっちまうぞ!」



 ヤクザのボス……山梨がそう言った瞬間、俺たちは距離をとる。あいつら、服の中に手を突っ込んだな! 使う気か!



 ――パシュ! パシュ! パシュ!



 三発の銃声が響く!……あれはベレッタM84FS! イタリアのピエトロ・ベレッタ社が作りあげた十三発装填可能の自動拳銃を改良したモノ……。単純な使い勝手の良さが売りの拳銃だ。



「撃ってきたわね! みんな! 発砲許可はすでに降りているわ! 遠慮なく撃ってちょうだい! 命だけは取らないように!」

『了解』



 俺たちも拳銃を抜く。……今気付いたんだがこれ、コルトM1911ガバメントじゃねぇか。普通にいい拳銃だぞ。相手を殺さずに行動不可能にする力を持つ拳銃だ。



「足を狙う!」



 ――パシュッ! 



 鏡花がヤクザの足を撃ち抜く。ヤクザが痛みの声を上げるが……まぁ、死なせやしねぇよ。

 俺ももうひとりのヤクザの部下の足を撃ち抜いた。……さて、残りは。



「おまえだけだぜ、ボス」

「痛い目に遭いたくなかったら、観念なさい」



 俺と鏡花がそう言い放つ。しかし、ボスの山梨は余裕の笑顔を浮かべていた。



「おまえら……敵に背中を見せてることに気付かねぇのか?」

『!?』



 俺と鏡花が気付くがもう遅い。



「……くっ!」

「樹里!」



 後ろで樹里が捕まっていた。……捕まえていたのは。



「あんたは……さっきの駅員!」

「ご明答」



 やられた! 部下が駅員だったら連絡も簡単に取りあえるってことだ! まんまとひっかがってしまった!



「さて、俺たちが逃げるまで動くなよ。動いたらこの女を撃つ」



 銃を樹里に突き付ける山梨。……あれじゃあ動けねぇ! しかし……。



「ふんっ!」

「ぐはぁ!」



 樹里は無理矢理にも自分を捕えていた駅員の顔にアッパーを仕掛けて自由を取り戻し……。



「はっ!」



 その後、隙だらけだった山梨の胸を双打掌を打ち込む!



「ぐわっ!?」



 不意を突かれた山梨はそのまま吹っ飛び、線路に叩きつけられた。



「制圧完了。鏡花、俊輝。全員に手錠をはめるわ」



 樹里がそう言って俺たちの方を向いた瞬間……。



「……殺す……殺してやる!」



 山梨が銃を構えた! くそっ! これじゃあ、樹里に当たってしまう! そう認識した瞬間!



 ――ドックン!



 再び俺の頭に映像がフラッシュバックする!



 ――小さい頃の俺と樹里……両親に冷やかされて真っ赤っかに頬を染める樹里……樹里の家にある古い大時計……爆発する樹里の家……血を泣かして炎渦巻く家の中で倒れる樹里の両親……樹里を連れて逃げる俺……午前三時四十八分に止まってしまった大時計……そして……涙交じりになにかを言う樹里。



 ――……そう……だったら、鏡輔……私を○○○○。



 なんだ? なんて言っているんだ樹里は。



 ――……そう……だったら、鏡輔……私を――。





 ――――私を守ってね――――





 ―――――――――――――――――っ!……樹里。



「樹里ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!」



 俺はその言葉が頭の中に響いた瞬間、樹里の方へ飛び出す。

 樹里はキョトンとしていた。が、自分の今の状況がやっとわかったのか、表情をハッとさせる。



「俊……輝……?」



 驚いた表情を見せる樹里を抱き寄せ、そして――。



 ――パァンッ!



 その直後、銃声が響き渡った。



「俊……輝……?」

「大丈夫か? 怪我ないか?」

「う、うん……」

「そうか」



 よかった……と言おうとした瞬間。



「ごぼっ。……あれ?」



 俺の口から血の塊が出ていた。胸の方を見てみると、そこから血が出ていた。…………っ!

 俺の身体に凄まじい痛みが走った。



「おい! 逃げるぞ! 今のうちだ!」

「はい、兄貴!」

「待ちなさい! って、ああ! 俊輝!」

「俊輝ぃ!」



 ヤクザ達が逃げる。く……そ……身体が動かねぇ……。



「じゅ……り……」

「喋らないで! なんで!? なんで私を庇ったの!? 一体……どうして……ッ!」

「泣くな……よ、らしく……ない。……だって……約束……だったろ」

「俊輝、喋っちゃダメ! 今、救急車を呼ぶから辛抱なさい!」

「きょ……う、か」



 やべ……意識が……。



「俊輝? 俊輝ぃぃぃぃい!」

「俊輝、しっかりなさい!」



 最後に聞こえてのは俺を呼ぶ樹里と鏡花の叫び声だった。




          To be continued

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