表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/136

―第陸章 月影のカモンコールド―

「しゅ、俊輝……!」

「ん? どうしたの鏡ちゃ――!?」

「ふぇ……――!?」



 なんか頭痛がするし身体もだるいが、鏡花たちの驚きの声に目覚める。



「ん……? なんだよ、みんな」

「なんだよじゃないわよ!」

「なんでジュリちゃんが一緒に寝てるの!?」

「ずっるーい!」



 なんかブーたれているが、どうやら隣に寝ている樹里のことを言っているらしい。

 しかし樹里の顔色が悪い。呼吸も荒かった。



「いや……これはな……って、あれ?」



 起き上がろうとすると、不意に倒れてしまう。……あれ? おかしいな。



「ちょっと、いい?」



 不審に思った鏡花が俺の額に手を当てる。なぜか、優稀菜や綺羅先輩まで俺の額に手を当てる。三人の手のひらは程よく冷たく、気持ち良かった。



「うわ……これは……」

「凄い熱なの……」

「風邪かな?」



 心配そうな顔で見てくる。そして、樹里の額にも手を当てた。



「あーあ……」

「ジュリちゃんまで……」

「高熱だね」



 どうやら樹里まで風邪をひいてしまったらしい。……やばい、頭痛てぇ。



「お粥作ってあげるね。今日、歩美ちゃんはいないから料理は優稀がするの♪」

「寝てなさいよ」

「また来るねん♪」



 ……今日は安静にしていよう。よくよく見たらもう昼だ。

 それにしても樹里まで風邪引くとは……俺が樹里にうつしたのかな? 悪いことをしてしまった。



「樹里……ゴメンな……」



 うなされて寝ている樹里に謝る俺。



「……いい……わよ……。私が……うつしたのかもしれないし……」

「おまえ、起きてたの!?」



 びっくりして樹里に訊ねる俺。



「……今、起きたのよ……。頭が重いわ……」

「そ、そうだな、樹里。今、優稀菜がお粥作ってくれるってよ」

「そう……優稀菜、料理上手だからなぁ」

「そうだったのか?」

「あら、気付かなかったの? よく歩美と一緒に台所に立っているじゃない」



 ……たしかに。そういえばそうだった。



「じゃあ、安心だな」

「ええ。……綺羅先輩はともかく鏡花は未知数だし」



 うん。俺も樹里に激しく同意だ。戦闘能力ばかり身につけてきた鏡花の料理は、なんだか怖い。



「樹里は?」

「私? 私は作れるわよ。家でひとり暮らしだったときも、よく自分で作っていたし」

「あれ?……あ、ごめん。おまえの両親も俺と同じだったな」



 樹里のご両親も俺の親父と母さんと同じFBIの幹部だ。今も元気にしているかな? 小さい頃は俺もよく会っていたな。



「……うん。そう……ね」



 しかし、樹里は寂しそうな顔をしてしまう。……あれ? 



「ど、どうした樹里。ご両親と喧嘩でもしたのか?」

「…………」



 ギリッと歯を噛み締める樹里。……あれれ?



「……俊輝……本当に……忘れちゃったの……?」

「な、なにがだ?」



 意味がわからず、震える樹里の言葉にそう返してしまう俺。



「……いいよ、なんでも……ない」



 ……本当はなんでもなさそうなのにそう言う樹里は、酷く寂しそうだった。

 ――コンコン。



「俊ちゃーん。ジュリちゃーん。お粥持ってきたよー」



 部屋のドアがノックされる。……優稀菜か。



「おう。入ってきてくれ」

「うん」



 優稀菜は俺のその言葉を聞いて返事をすると、ドアを開けてふたつの土鍋とスプーンが乗っているトレーを持った優稀菜が入ってきた。



「まぁ、今日はゆっくり休んでいてね、俊ちゃん、ジュリちゃん。はい。お粥なの」

「あぁ」

「ありがとう」



 俺と樹里はお粥が入った土鍋を乗せたトレーを優稀菜から貰う。中は……おお! 卵が入っているお粥だ! これはうまそう! 



「いただきます」



 樹里がスプーンでお粥を口に含む。



「……ふぅ……おいしいわ……」

「あは、ありがとうなの♪」



 マジで美味そうにはにかむ。俺もいただこう……と思ったんだが、なぜか優稀菜にスプーンを取り上げられてしまう。そして。



「俊ちゃーん。あーん、なの♪」



 お粥を掬って俺にスプーンを差し伸べる。……俺は病人。素直に従おう。



「あーん、っと」



 スプーンに救われたお粥を食べる。……おお! 



「美味い! これは美味いぞ!」



 なにも考えずに率直に本音を口に出してしまうほどおいしかった。



「ありがと! えへ♪」



 可愛くウインクをくれる優稀菜。可愛い。



「……俊輝。こっちも……」



 樹里からもスプーンを差し伸べられる。



「おう。あんがと。あむ」



 俺はおいしさのあまり我を忘れて樹里のスプーンに口をつける。……あれ? 俺もしかして、樹里と間接キスをしちゃった? 樹里も心なしか、頬を赤くしているが……風邪のせいかな? 



「俊ちゃん。次は優稀にもしてくれるかな」



 優稀菜が、あーんと口を開ける。



「おいおい、俺が口をつけたスプーンだし、それを口に含んじまったら風邪うつっちまうぞ?」

「でも、ジュリちゃんのは俊ちゃん食べたよ?」

「いや……あれはつい……」



 俺は同意を求めるために樹里に目を向けるが、樹里は無視。赤い顔のままお粥を食べていた。



「……ちょっと待っててね」



 そう言うと、優稀菜はタッタと部屋から出て行くと、すぐに戻ってきた。……手にスプーンを持って。



「じゃあ、これであーんしてよ。ね?」



 俺にそのスプーンを手渡して、あーんと口を開ける。……ったく、しょうがないなぁ。まぁ、お粥を作ってくれたことへの感謝ってことでいいか。



「ほい、あーん」



 俺は頬を赤くしている優稀菜の口にスプーンを入れようとする。が。

 いきなり横から樹里の手が伸び、俺の腕を掴んだかと思うと、スプーンを自分の口に誘導してパクッとお粥を食べてしまった。



「……。…………。…………俊ちゃぁん」



 若干涙目の優稀菜が俺のパジャマの裾を掴んでクイクイと訴えてくる。…………。



「ああ、ごめんな。今のは樹里が悪い」



 俺はもう一回お粥を掬って、それを優稀菜の口の中に含ませる。



「えへへ……ありがとうなの、俊ちゃん。ふたりとも食べ終わったら、床に置いて寝ていてね」



 上機嫌になった優稀菜は俺たちにそう言って部屋から出て行った。



「ごちそうさま」



 樹里は土鍋のお粥を完食し、床に置く。



「私……寝るわ。おやすみ」



 そう言うと、樹里はすぐに力が抜け寝てしまった。

 ……俺はもう寝よう。早く治したい。

 俺も残りのお粥を食べ、すぐに寝た。




              To be continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ