―第伍章 月影のエロゲプレイ―
「おーい、来たぞー」
「はーい、入ってなのー」
しばらく経って、優稀菜の部屋に来た俺。……実は引っ越してきた優稀菜の部屋に入ったことはいまだにない俺である。
「じゃあ、入るぞー」
内心ちょっとドキドキの俺は優稀菜の部屋に入る。
「や♪ いらっしゃい♪」
「先にお邪魔しているよ♪」
優稀菜と綺羅先輩がいた。……? なんで綺羅先輩?
「いやぁ……優稀ちゃんになんで俊くんを呼んだのか聞いてみたらさ、私も興味が……おっと、鼻血鼻血」
……先輩……あなたも段々優稀菜の毒牙に……。まぁ、俺はすでに犯されているが。
「ていうわけでー、新作のエロゲを攻略したいと思いまーす」
『いえーい』
正直言って結構テンションあがってきた! 綺羅先輩も息が荒くなってる!
「いやぁ、私。エロゲには興味あったんだけどなかなか買う度胸がなくてねぇ……期待期待♪」
「大丈夫だよ、先輩。優稀のとこに来てくれればいつでも貸してあげるの♪」
「さすが優稀ちゃん!」
……やばい。なんで俺涙が出ているんだ?
「あーあ、先輩まで道はずしたから、俊ちゃん泣いちゃったよ」
「あははは。外道にならない限りは道を踏み外してもいいんだよん♪」
まさに外道だった。
「さって、一時間ほどインストールに時間かかっちゃうから、なんかしていようか」
「三人じゃ麻雀はできないしな」
「ここは原始的な遊びでいいんじゃない?」
「たとえばなんです?」
綺羅先輩の提案にも一理あるため、聞いてみる。
「しりとり?」
可愛らしく言う綺羅先輩。しりとり……かぁ。
「なんか一捻り欲しいの」
「だよなぁ……よし!」
俺は面白そうなことを思いついた。
「セリフしりとりなんてどうだ?」
『セリフしりとり?』
首を傾げるふたり。
「俺たちで会話をしながら、そのセリフでしりとりをするんだよ」
「あぁー。うんうん」
「なるほど。面白そうだね♪」
どうやら賛成のようだ。
「あ、優稀菜。最後に『なの』をつけるのは悪いが禁止な」
「わ、わかった……なの」
「順番はフリーな。会話の内容がわかりにくくなるから。よっし、じゃあ、始めよう!」
そう宣言するも……みんな喋らない。や、やべ。
俺 「そういえば、なんの言葉を始めにするか決めないといけない」
優稀菜「いいじゃん、それでさ」
綺羅 「左様で」
俺 「ですよねー」
優稀菜「ねぇねぇ、あのさ、ブ○ーチのことなんだけど」
綺羅 「どうしたの?」
優稀菜「ノイ○ラのことなんだけどさ、ちょっと簡単にやられちゃったなぁって」
俺 「テ○ラも瞬殺だったしなぁ」
綺羅 「あの十一番隊隊長、強過ぎなんだよ」
俺 「よくそんなやつに黒崎○護は勝ったよな」
優稀菜「なんだか、不思議だよね」
綺羅 「ね、虚化で勝てなかった相手を、どうして更○剣八は勝っちゃったんだろう?」
俺 「うーん、更木○八の見せ場を作ろうとしたら結果的にそうなっちゃった、とか?」
優稀菜「かもしれない」
綺羅 「一理あるね」
俺 「ネリ○ルにももう少し出番あげろよ……」
優稀菜「ようやく正体明かしたって思ったらまた幼女化しちゃったよね」
綺羅 「○ルちゃん……不憫な子」
俺 「このネ○は一応、完結編に出てきてますよ、綺羅先輩」
綺羅 「いつになったら完結するのかなって思ったら、本当に完結するのかな?」
優稀菜「なんか曖昧なんだよ」
俺 「予告では『最終章』って書かれていたけどな」
こんな感じで、会話は続いていった。
❁ ❁ ❁
約一時間後。時刻は九時ちょっと過ぎ。
「インストール完了……よし!」
『おぉ!』
ついに、ついにその時がきた……! なぜか、鏡花まで乱入して来たが……まぁいい。鏡花も一応、興味があったらしいし。
「ふふふ……今夜は徹夜確定なの」
怪しく画面を見つめる俺たち四人。
そしてゲームを進めて行く。……この主人公、爽やかな奴だな。しかし、ラノベやエロゲの主人公は大体が鈍感なやつだけに全然周りの女の子の気持ちを察してねぇ。
「……なんだか似てるわね、わたしたちに」
「うんうん」
「大体のエロゲの主人公はこんな感じなの。ついつい優稀たちも共感できるよね」
「なんのことだ?」
なんだか会話している三人に訊いてみる。
「……ほらね」
「似てるねぇ」
「似てるわ」
「ん?」
『はぁ……』
溜息をつく三人。なんのことだかまったくわからん。
「さて、選択肢、やっと出たよ」
「ほう、どれどれ」
俺たちは選択肢の内容を見る。
――選択肢――
一、妹の部屋に行く 二、隣の幼馴染の家に行く 三、生徒会室に行く 四、保健室にイク
「一!」
「二!」
「三!」
「四!」
『…………』
見事に意見が割れた。ちなみに順番は鏡花、俺、綺羅先輩、優稀菜だ。
さっそく醜い言い争いが始まった。
「おい! 幼馴染から最初に攻略するべきだろ!」
「なに言ってんの! 自分の妹からに決まってんでしょ!」
「生徒会長安定に決まってるよ!」
「いやいや、どう考えても保健室なの!」
『それは一番ない!』
最後の優稀菜の意見だけは却下されるが、優稀菜は喰い下がる。
「なんでなの!?」
「怪しいの匂いしかしねぇよ!」
「最後だけどうして『行く』がカタカナなのよ! 意味深過ぎて度胸が出ないわ!」
「なんか上級者すぎるよ、その選択! まだ私たちは初心者だから安定させようよ!」
「むー。じゃあ、じゃんけん! じゃんけんで決めるの!」
『……じゃーんけーん……ポン!』
じゃんけんの結果は……鏡花の勝利。…………。
「よし!」
ガッツポーズをしながら、妹ルートに行く鏡花。
「今夜は妹ルートを攻略しよう。でも……この妹、グレているよ」
「なんでだろうなぁ」
「まぁ、それは攻略していくうちにわかるよ」
攻略を進める。そして進めて行くうちにだんだん妹がよさげな雰囲気を出してくる。
「よしよし、そんまんま……」
目をキラキラ輝かしている鏡花。……あぁ……頼むからおまえはこちらの道には来ないでくれ。
さらに攻略を進めて行くと……。……!?
「あれ? またグレ始めた?」
なんかまたグレてしまった。おかしいな。まだ選択肢は出てきていないぞ。
「なるほど……」
「まぁ、しょうがないよね」
「うんうん」
「え?」
なんでみんな納得してんだ?
「あれ? 俊ちゃんわかんないの?」
「あ、ああ。どういうことか、説明してくれ」
状況についていけていないのは俺だけらしい。理由を教えて貰う。
「あのね、主人公が他の女の子にも優しいことを、妹さんは苛立っているんだよ」
「なんで?」
「だって、自分だけを見て欲しいから……誰よりもお兄ちゃんが大好きな自分だけを見て欲しいから……。だから、そんな自分だけじゃなくて他の女の子に優しくするお兄ちゃんに苛立っているんだよ」
『うんうん』
「はぁ……」
優稀菜の意見に他のふたりも頷いている限り、あっているんだろうな。ふむ、乙女心は複雑だな。俺にも理解できるかな。と、ふと、今朝の樹里のセリフを思い出す。
――二年前までは……私だけを見てくれていたのに……。
もしかして、樹里もこの妹と同じ状況に立たされていたのか? うーん、やっぱわからん。
「さ、続けよっか」
「あ、あぁ、ゴメンみんな。止めちまって」
「別にいいよ。俊ちゃんにも少しは乙女心をわかってくれたかな」
「……ああ、少し垣間見た程度だけど……」
「それでいいの。全部は流石に女の子は見られたくないものだから」
「……複雑だな」
「うん。でも、それが女の子だから……仕方ないの」
色々あるんだな、女の子にも。もっと優しくしよう。
ゲーム再開。そして徐々に展開が早くなっていく。そして……。
「主人公が……徐々に他のヒロイン達から距離を取り始めている」
そう。妹以外のヒロインたちとは一定の距離を取り始めて、妹だけ見始めてきたのだ。
「気付いたみたいだね。幼馴染の助言もあってだけど」
幼馴染が主人公にこう言ったんだ。
――あなたは自分が一番大切だと思うひとだけを、受け止めなさい。
涙を流して言う幼馴染の女の子は大人に見えた。そして、その言葉を聞いた主人公も変わり、妹以外とは距離を取っている。そして……。
「告白……したね」
優稀菜が優しそうな顔で言う。
告白は成功。禁断の愛だけど、幸せになったのは確かだ。……しかし。
「さぁ……こっからが本番なの。うふふ……」
ニヤニヤ顔の優稀菜がそう言う。そう……ギャルゲはここまでなんだが、エロゲはそうはいかない。
「さ、さて……わたしは寝ようかしら」
「奇遇だな。俺も寝ようと思っていたところだ」
純情な鏡花に便乗して部屋に戻ろうとするが……。
「ダーメ♪」
「一緒に見よう♪」
笑顔の優稀菜と綺羅先輩に阻まれ、俺たちは逃走に失敗する。いや、こういうシーンはひとりのときにみるもんだろ。大勢で、しかも女の子がいる前で、男の俺が見れるかい。
「俺は寝る。寝てやるぞ」
「優稀にはスタンガンというモノがありまして……」
「だぁーっ! 起きたよ! 起きました!」
人間は巨大な帯電体。電流なんか流されたらひとたまりもない。俺は仕方なく見る。……ちなみに言っておくが、普段俺はこういうシーンは速攻ですっ飛ばす。
鏡花は顔を真っ赤っかにしながらも、見ていた。……うわぁ……。
俺は羞恥心に苛まれながら、早く終われと祈った。
❁ ❁ ❁
約十分後。
「よっし、妹編終了! 今日はここまでにしようか」
「おつかれさま~」
『……お疲れ……』
上機嫌な様子の綺羅先輩とげんなりした感じの俺と鏡花。
「じゃあ、おやすみなの!」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ、みんな♪」
そこでお開きになり、それぞれ自分の部屋に戻って行く。もちろん俺も戻る。
「ふぅ……まさかエロシーンももろに全部見るとは思わなかった」
もう疲れた。早く寝よう。よくよく見たらもう外は若干明るいけど。
欠伸をしながら部屋へ向かい、ドアを開ける。
「……あれ? 幻か?」
一端ドアを閉めて頬にビンタをしてから、もう一回ドアを開けて部屋を覗いてみる。しかし……。
「なぜだ?」
なぜ俺の目には、俺のベッドで寝ている樹里の姿が見える?…………。
「……樹里、頼むから自分の部屋で――」
寝ている樹里の顔を見た途端に、俺は言葉を失う。
樹里の目から……涙があふれていた。
凄く悲しい夢を見ているのか、樹里は滅多に見せない涙を溢れさせていた。
「……鏡……輔……」
夢にうなされているらしく、俺の旧名を呟く樹里。その声はとっても悲しそうなものだった。
「……私を……守って……」
……またその言葉、か。
なんのことだかわからないが、樹里は俺に何度も「守って」と訴えている。……樹里はいったい、なににうなされているんだ? でも……。
「わかった。守ってやるからな……」
今は優しく樹里を抱いてやる。ごめんな。俺にはこれしかできないんだ、樹里。まだ、昔のことは思い出せないけど……きちんと思い出すからな。
To be continued




