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―第弐章 月影のスリーサイズ―

「暇だ」



 次の日の朝八時、俺の部屋にて。

 歩美を除く全員が俺の部屋に集結していた。歩美は今、朝の買い出しに行っていていない。

 ぶっちゃけ、麻雀もこの前やって若干萎えたからやらない。……というわけで物凄い暇だった。どれくらい暇かというと。



「俊輝ぃ、なんかあるぅ?」

「なんもない。おまえは」

「ない」

「だよなぁ」



 こんな感じに会話がストップしてしまうほど、暇だった。



「綺羅さん、綺羅さん」

「ん? なーに、優稀ちゃん」

「なんかあります?」

「うーん。そうだなぁ……」



 優稀菜に話を振られた綺羅先輩は可愛く腕組みする。そして、なにか閃いたらしくポンっと手を叩いた。



「そうだ! スリーサイズ当てをやろう!」

『えぇーっ!』

「おおっ!」



 優稀菜以外の全員の女性陣と俺が仰天する。



「そ、それは――」

「む、無理で――」

「いや、待つの! これは結構いいイベントかもしれないの!」



 鏡花と樹里が普通の反応をすると、優稀菜がつっかがってきた。



「耳貸して。ふたりとも」

『?』



 首を傾げて優稀菜に耳を貸すふたり。そしてなにを聞いたのか、顔を赤くさせる。そして……。



「やる!」

「オーケー! 了承したわ!」



 とやる気満々だった。…………。



「じゃあ、俺は下でテレビでも――」

『――ダメ(ダメなの・ダメだよ)!』

「え、えぇー」



 何故か止められてしまう。……いや、今の話の内容的に俺は場違いだろう。



「おいおい、俺は男だぞ? たしかに若干スリーサイズに興味はあるが……聞かれたくないだろ?」

「いや!」

「いいから!」

「そうじゃないと意味がないの!」

「そうだよ!」

「…………」



 どういう意味なんだ? よくわからん。



「それにさ、俊くんだけ下でテレビっていうのも寂しいじゃん?」

「そ、そうだよ。どうせだったな聞いちゃいなよ」

「わ、わたしたちは気にしないから」

「ね、ねぇ?」

「…………」



 うーん。あんまり理解はできんが、彼女たちが俺をここに引き留めたいっていうのはわかった。……何故だ? 



「わ、わかった……けど、いいのか?」

「い、いいわよ別に」

「そのかわり、優稀たち以外は内緒だよ」

「あ、あったりまえだ!」

「じゃあ、行くよー」

『wktk』



 男の俺がいるのにもかかわらず、ノリノリの女性陣。



「さって、ルールは――俊くん」

「は、はい?」

「今から自分が『胸が大きいなぁ』って思ったひとを順番に紙に書いて」

「え、は、はい」



 綺羅先輩はそう言って紙と鉛筆をくれる。よくわからんが胸が大きいと思うひと順に書けばいいんだな。

 ……一位は優稀菜だ。これは揺るがないだろう。

 二位は……鏡花か……綺羅先輩か? いや、樹里か。微妙なラインだ。綺羅先輩がわからない。鏡花の方が樹里より大きいけど……綺羅先輩が……な。巨乳ロリだし。

 ………………なにを俺は真剣に考えているんだ。



「書きました」



 悩んだ末、俺は鏡花の方を上にしておいた。



「おおー、なかなか悩んだみたいですなぁー、スケベ」

「うっさい」



 樹里の冷かしをうける。綺羅先輩は次の指示を与える。



「じゃあ、次に俊くんが一番大きいって思った人からスリーサイズを発表。それが順番と間違っていなかったら俊くんの勝ち。間違っていたら私たちの勝ちだよ」

「俺が勝ったらどうするんです?」

「そうだなぁ……なんか、言うこと聞くよ。ね、みんな」

『コクコク』



 みんなは首を縦に振るが、俺にとってスリーサイズを教えてもらう時点でご褒美なんですけど……。



「――ただし、私たちが勝ったら私たちひとりひとりの叶えられる範囲の言うことを聞いてね」



 ……まぁいい。あれでも、俺だって真剣に考えたんだ。負ける気はない。ちなみに今の俺はかなりの大バカ者である。

 それに、スリーサイズを教えてもらった代償としても充分だろうと思った。



「じゃあ、やるよ。第一位は……優稀ちゃん。さぁ、答えて答えて」

「はーいなの、優稀のスリーサイズはね、上から102・59・87だよ」

『なんというダイナマイトバディ!』



 特大過ぎた。……どんだけだよ……。



「なにをどうすればそんなに大きくなるんだろう。まぁ……これは一位だね。次、鏡花ちゃん」

「えぇ? わ、わたし? え、えっと……上から……97・60・88……よ」



 少し赤くしながら答える鏡花。



「ほほう……やるわね」

「うん。正解。次は……私」

「あら、私が最下位?」

「そうっぽいね、ジュンちゃん。えっと、私は上から80・54・74だよ」

「……よし」



 ……ん? よし?……てことは……。



「はーずれ! 私は上から88・56・82よ! 私たちの勝ち!」

『よし!』

「……うー。なんだか複雑……だけど、まあいっか」



 嬉しそうな樹里たちと複雑そうな綺羅先輩。



「と、いうわけでぇ」

「俊ちゃーん」

「ばっつゲーム」

「受けて貰うよ」

「……はい」



 まぁ、ちゃっかり失礼なことをしたからな俺。罰ゲームはおとなしく受ける。



「じゃあ、一位のひとから罰ゲームね」

「えぇ? 優稀から? うーん、そうだなぁ……」



 じっくり考えた末、優稀菜が出したお願いは――。



「よし! 決めたなの! 俊ちゃん、今日、優稀と一緒に寝よう!」

『却下!』



 何故か、俺だけじゃなく他の女性陣も「却下」を申告した。おお! おまえら。俺の味方についてくれるのか。嬉しいぞ。



「えー、なんでなの~?」

「俺の理性が耐えらんなくなるからだ」

「別に耐えなくていいよ?」

「耐えます!」

『(コクコク)』



 なんだか凄いことを言ったような気がする優稀菜の意見を全面却下し、女性陣は頷いていた。



「うー。じゃあねぇ……」



 また考え始める優稀菜。……頼むから今度は真面目なのをお願いします。



「……俊ちゃんの昔話」

「え?」

『?』



 俺だけじゃなく他のみんなも首を傾げていた。



「俊ちゃんさ、FBIにいたんだよね」

「ああ、そうだよ」

「そのときの話を聞きたいかなって。あ、覚えていなければいいよ」

「ああ、別にそれなら――」

「――却下よ却下!」



「別にいい」と言おうとした俺に樹里からの横槍が飛んでくる。



「えー、なんでよジュリちゃん」

「そうよそうよ、別にいいじゃない」

「うん。なんで? ジュンちゃん?」

「あ……いや、その……」



 興味があったらしい三人に詰め寄られ、ちらっと俺を見てくる樹里。……あー。



「恥ずかしいのか?」

「う、うっさい!」



 そっぽを向いてしまう樹里。うん。こりゃ、恥ずかしがってるね。



「どういうことなの?」

「樹里はな、そのときに……俺がFBIに入ったときに知り合ったんだよ」

『え(ふぇ)?』

「…………」



 驚いた顔をする優稀菜と綺羅先輩。鏡花は知っていたらしい。樹里は頬を真っ赤に染めてしまう。



「まぁ……それ以外はまったく思い出せないんだ。俺、記憶を封印されていたみたいで、今はそれしかまだ思い出せていないから……ごめんな」

「…………」



 樹里が少し寂しそうな顔をするが……すぐにいつもの表情に戻る。



「あ、あはは……まぁ……ね。お願い事はまた今度言うから……そのときに叶えてね」

「え?」

「ふふっ」



 優稀菜は意味深な笑顔を浮かべて俺にそう言う。……意味はわからんがわかったぞ。



「わたしもまた今度でいいわ」

「わ、私も」

「私もそうしよっかな」

「え? ちょ、みんな? どうしたんだ?」



 さっきまでの賑やかさはどこへやら。みんなはそう言い始めた。



「え? な、なんでだよ?」

「まだ早いからよ」

「もし、お願い事を聞いてくれるんなら」

「そのときは誰かひとりを」

「受け止めてね」

「???」



 四人とも意味のわからないことを言うな。……まぁ、今はいいらしいからいいんだが。



「ただいまー。ってあれ? みんなどこにいるんですか?」



 歩美が帰ってきた。



「ちょっと、歩美を迎えてくるな」



 俺はみんなにそう言った後、部屋から出て階段を下りて歩美を迎える。歩美の両手には大きな買い物袋を持っていた。



「おかえり、歩美」

「はい。ただいまです、兄さん。皆さんは兄さんの部屋に?」

「ああ、そうだよ。おまえも来い」

「で、ですが……私、この中の食材を全部しまわないといけないので、時間かかりますよ。兄さんは皆さんと遊んでいていいですよ」

「いやいや、重いだろ? ほらそれ渡せって」



 俺は歩美の手に持っている荷物にそっと手を差し伸べる。



「ありがとうございます。じゃあ私、手を洗ってきますので、それを台所に持って行ってくださいね」

「しまうのも手伝うぞ?」

「そうですか? ありがとうございますね、兄さん。えへ」



 歩美は可愛らしい笑顔を俺に向けてくれる。うんうん。可愛いなぁ。



「じゃあ、先に台所に行っているな」

「はい。お願いしますね」



 俺は歩美の荷物を全て、台所に持って行った。



                   To be continued


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