―第壱拾参章 黄昏のシンセスビースト―
……そこにいたのはこの世のものとは思えない生物だった。
オオカミのような頭だが……胴体は人間だ。尻尾が生えていて、それはサソリのようなフォルムをしていた。腕には数字で「134」と書かれている。まったく身体の統一性がない。
もちろん俺は驚いている。が。
「あ、あれは……!」
綺羅先輩は珍しく、俺以上に激しく反応していた。……綺羅先輩? そしてハッと、冷静を取り戻した綺羅先輩はそのオオカミ人間にいきなり発砲した。
「俊くん、気をつけて! あれは合成獣! 人工的に作られた生命体! 殺しても問題ないよ!」
そう言って、バンバン撃つ綺羅先輩。オオカミ人間は二発ぐらいで倒れてしまった。
「合成獣ですって!? そんなものが――」
「存在するよ! 現にここに倒れているのはそうだし、この世界でただひとり! それを成功させたマッドサイエンティストがいる! おそらくここは――」
『その通り。よくわかったねぇ……』
突然どこからか、若い男の声が聞こえた。
「あ、あんたは……ッ」
『フフフ……綺羅くん、久しいねぇ』
「ギルバード・バターフィールド……ッ!」
綺羅先輩が憎々しげに言う。……あんな綺羅先輩は見たことない。
『覚えていてくれて光栄だよ。フフフ……二年ぶりだねぇ。ゆっくりお茶をしたいところだけど、今は忙しいんだ。とっとと死んでくれたまえ。イヤだったら俺のとこまで来てみたまえ。三人の警官たちなら生きているよ。あとふたり来ていたんだが、ショック死しちゃってねぇ。場所は三階フロアの七百九十三番室だ。それじゃあね。俺が創った合成獣の遊び相手をしてくれたまえ』
――ガコン! ドサッ!
天井からなにかが落ちてきた。……見るもおぞましい合成獣たちだ!
全員違う形をしている! さっきのオオカミ人間、伝説上の生命体――ケンタウルスのような下半身が馬のようなやつ、魚面人、ラミア――上半身は人間だが下半身は蛇みたいなやつ……と挙げていってはきりがないほどの量の合成獣が出現した! 全員身体のどこかに数字が書かれている。さて、これはヤバいぞ!
「俊くん! これを使って!」
綺羅先輩が俺に刀――青龍刀を渡してきた。
「こいつらには容赦はいらないよ! 殺さないとこっちが死んじゃう! 戦争だよ、これは!」
……「戦争」……か。
「なら遠慮はしませんよ!」
俺は綺羅先輩から貰った青龍刀で合成獣たちを切り刻んでいく。おお! これはいい刀だな! さすが肉と骨を断つ青龍刀! 斬れ味・丈夫さともに一級品だ!
俺たちはモンスターたちを倒しながら前に進んだ。
❁ ❁ ❁
「ふぅ……一応、ここの合成獣は全員倒したかな」
「……そう願うのみです」
十分後。俺と綺羅先輩は少し休んでいた。……相手は合成獣。倒しやすいモノもあれば倒しにくいモノもいて苦戦した。
「まったく、居心地が悪いですね」
「そうだね。だって私たちの足元には血まみれの合成獣たちの死体が転がっているから」
もう足元は見たくない。
「――さて、いこっか、俊くん」
「はい。行きましょう」
俺たちは再び合成獣を警戒しながら歩き始めた。目的地は三階フロア七百九十三番室。
「綺羅先輩」
「ん? なに?」
「あの……ここの主とは、会ったことがあるんですか」
「――――っ」
綺羅先輩が凄く悲しそうな表情になってしまった。
「あ、やっぱりいいです。はい」
俺は曖昧に謝ることしかできなかった。
「……俊くん、ありがとうね」
小さな声でお礼を言う綺羅先輩。……俺にお礼を言うほど聞かれては困ることなのか。気になるけど、もう聞かないようにしよう。そう自分に言い付けた。
To be continued




