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―第壱章 黄昏のニューライフ―

 学園は終業式を終え、今日が夏休みの初日になってテンションが上がっていた俺こと、杉並(すぎなみ)(しゅん)()はお隣さんのある異変に気がついた。

 ……お隣さんは安本(やすもと)さんの家だったはずなのだが……気がつけばいつの間にか、表札が「芹沢(せりざわ)」に変わっている。

 ……イヤな予感がし、お隣さんのインターホンを押してみた。すると……。



『はーい』



 聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。…………。



「……あの……隣の杉並ですが……」

『あ、俊輝。ちょっと待ってねー』



 少ししてガチャっとドアが開き、そこからパジャマ姿の長髪の美少女が現れる。

 彼女は芹沢(せりざわ)樹里(じゅり)

 俺の幼馴染。二年前、俺がSICの十番隊隊長だったときの隊長補佐官。今は歩美(あゆみ)が隊長をやっている十二番隊の隊長補佐官である。あと腐女子。



「ん? あっ、俊ちゃーん、おはよー」



 樹里の後ろから、同じくパジャマ姿のポ二テの美少女が笑顔で俺に手を振って挨拶を送ってくる。

 彼女は加賀美(かがみ)()()()

 樹里と同じく学園では有名な腐女子。裏社会では有名な「なんでも屋」のワイヤー使いで、少し前まで俺たちと対立していたが、今は彼女も俺と同じところ――十番隊に所属した。

 ……と、彼女たちのプロフィールをざっと述べてみたのだが……なんであいつらが俺の隣の家に引っ越してきてんだ? てか、なんであいつらが同じ家に住んでいる?



「おまえら……なんで、俺ん家の隣にいるんだ?」

「ん? なんとなくよ。ね、優稀菜」

「うん。そんなこといいながら、ジュリちゃんが『やっぱりひとり暮らしは寂しい』って言って、優稀にどうにかして俊ちゃんの家の隣に引っ越しできるかを相談してきたんだよね、昨日学校で。終業式終わってから」

「う、うるさいわよ! 優稀菜だって『うん。優稀も同感なの。どうにかしてみるね』って乗り気だったじゃない!」

「だって本当のことだし、嘘ついたってしょうがないじゃん? だからね俊ちゃん。それで優稀が知り合いに連絡を取って、俊ちゃんのお隣さんに『土地をあげるから引っ越して貰う』ようにお願いしたの。あぁ、だいじょぶだいじょぶ。ちゃんとした優稀の土地なの。優稀が裏社会で稼ぎまくったお金で土地を買い取って、そこにお隣さんを引っ越しさせたからいいの。みんな幸せになったの」

「優稀菜は意外にお金持ちだったわ。どんな風にどんだけ稼いだのよ?」

「えへへ。それは優稀のシークレット。秘密なの♪」



 ……優稀菜たちがそう言うんだったら信じておこう。

 俺は頭をぽりぽり掻きながら樹里たちに言う。



「それで、昨日の夜中にもうこっちに引っ越してきちまったと」

「うんそう」

「そんな感じなの。優稀も今日からここでジュリちゃんと一緒に住むよ」

「……そうか」



 行動早過ぎんだろおまえら。



「あとでそっち行くからまたね」

「まったねー」

「……おう、またな」



 ……今日から、騒がしくなるんだろうな。



     ❁ ❁ ❁



「そんなわけで、優稀たちは今日からお隣に住まわせていただくことになりましたー!」

「だからほら、なんか祝いなさいよ」



 十分後。

 優稀菜、樹里が俺ん家のソファに腰かけていた。少し時間がかかったのはご近所さん達に挨拶をしていたかららしい。



「なに図々しいこと言ってんのよ……」

「あは、はは……」



 ソファに座っているふたりをジト目で見ている銀髪の美少女と苦笑している少し茶髪がかかった美少女。

 銀髪の方は、十七夜(かのう)鏡花(きょうか)

 俺と優稀菜が属している十番隊の隊長様で、実は俺の妹だったりする。優稀菜とは少しいざこざがあったが、もうとっくに和解してすっかり仲良しだ。今は俺の家に居候している。

 もうひとりは歩美(あゆみ)

 俺が記憶を失って二年間、俺の傍にいつもいてくれた、頼りがあって愛らしい自慢の妹だ。あと、コンピュータ関連のエキスパートで十二番隊の隊長。

 ちなみに優稀菜やこの場にいないが、生徒会長の中目(なかめ)(なし)綺羅(きら)先輩、風紀委員長の(きょう)(たけ)(りゅう)()さん、スナイパーの(こと)()は、鏡花や歩美の正体「十七夜(かのう)(きょう)(すけ)のクローン」だということを知っている。「十七夜鏡輔」ってのは俺の旧名。

 あの事件のあと、歩美と鏡花が勇気を出してみんなにそれを告白したのだ。みんなは話を聞いても「へー、で?」って感じで流していた。……みんないいひとばっかりだよ。



「いやー、ね。やっぱり、ひとりよりみんなといる方が楽しいじゃない?」

「そうだよ鏡ちゃん。ジュリちゃんの言う通りなの」

「そ、そうだけど……」

「だったらいいじゃないの」

「そうだよそうだよ。元お隣さんだって、優稀たちのおかげで幸せになれたんだよ? みんなハッピーなんだからいいじゃん?」

「う、ううん。そうね……」

「鏡花さんがいとも簡単に丸めこまれました!?」



 とまぁ、こんな感じで丸めこまれた鏡花にビックリする歩美だった。



「しっかし、それにしても、この面子は色々凄い面子ね」



 ボソリと樹里が呟く。みんなはその呟きに苦笑するだけだった。

 元隠密機動隊十番隊隊長かつ十番隊に復帰した俺、現十番隊隊長の鏡花、元十番隊隊長補佐官かつ現十二番隊隊長補佐官の樹里、元有名ななんでも屋かつ十番隊所属の優稀菜、パソコンのプロフェッショナルの現十二番隊隊長の歩美。

 ……うん。この面子は傍から見ればとんでもない集団だ。



「さて、私は今から琴美さんのもとに行きますね。明日私のクラスに転校生が来るのでそのひとに会いに。あと、今日は琴美さんの家にお泊まりしますね」

「おう、わかった。いってこい」



 転校生……か。SICの派遣かFBIの派遣か、どっちにしてもこっち側の人間だな。



「はい。じゃあみなさん。また明日で」



 歩美がそう言うとみんなも「いってらっしゃい」と言って見送った。

 歩美が立ち去り、しばらくの間沈黙。

 鏡花が口を開いた。



「……ね、ねぇ。わたし、まだこの街に来て日が浅いからさ、街の案内をしてくれないかしら?」

『ナイス、鏡花(鏡ちゃん)!』



 暇で、なにをしようか考えて行き詰まっていた俺たちにとって、鏡花のその提案はまさに鶴の一声だった。



「そ、そうだな、おまえもこの街のことを知っていた方がいいよな!」

「そうよ。なんで私たちはそんなこと考えなかったのかしら!」

「優稀たちがよく行っているおもしろい場所を教えてあげるね!」

「え、ええ。頼んだわ」



 と、みんながみんな行動力と決定力が早く、俺たちは鏡花にこの街を案内することに決めた。



     ❁ ❁ ❁



「で、どんなところがあるのよ」

「いろいろあるんだが、おまえはどこ行きたい?」

「別にどこでもいいわ」



 と、俺と鏡花の会話でどこに行くわけでもなくみんなで散歩することにした俺たち。



「うーっん。なんか清々しいね」

「そうねぇ。なんか新鮮に感じるわよね」



 優稀菜と樹里がそんな会話をしている。たしかにふたりの言う通り、俺もこんな風に街をぶらぶらすることはなかったから、改めてここを散歩してみると新鮮に感じられる。

 とか考えながら、なぜか昼間っからシャッターを閉めている銀行の前を通ろうとしたそのとき。



「おいお前ら、づらかるぞ!」



 と銀行内から声が聞こえたのと同時にピンっという音が聞こえた。――――ッ!

 その音に反応し銀行の前から距離を取って四方に散らばる俺たち四人。瞬間。



 ――ドカアァァァァァァァァァァンっ!



 銀行内から爆発音が響きシャッターが吹っ飛ぶ。――ピンっという音は爆弾の安全ピンを抜き取ったときの音だろう。

 周りが悲鳴を上げる中、銀行内から複数の黒いバッグを持ってマスクとサングラスをかけた四人組の男が現れる。明らかに銀行強盗だった。



「おい行くぞ!」



 最初に出てきた男が――鏡花の方に突進していく。お、おい、逃げるんだったらそっち行っちゃ――。



「邪魔だ、どけぇぇ!」

「おっそいわよ。突進の踏み込みからやりなおしなさい」



 軽く説教を入れ、鏡花は突進してくる男の足を引っ掛けてバランスを崩させ、後頭部に手刀を思いっきり入れ込み、男を地面に顎から叩きつける。



「チッ。ならこっちだ!」



 その光景を見た小太りしている男が鏡花と反対の方角――優稀菜の方向に突っ込む。



「あれ、優稀の方に来るの?」

「ガキはどきやがれ!」

「わかった。どくの」



 優稀菜は男の指示通りひょいっとどいて、男はそこを走っていく。――その先に電柱があるとも知らずに。



「うげっ!?」



 電柱に顔面から思いっきり突っ込み、痛そうに鼻を押さえる男。……あれは痛い。



「だいじょぶ?」



 声をかける優稀菜。すると男はさっきので鼻の骨が折れたのか、鼻血を流しながらキッと目を吊り上げた。



「ざけてんじゃねぇぞ、女ぁぁぁぁぁあ!」

「ははっ、いけないなぁ――」



 男は怒りのあまり優稀菜に隙だらけで殴りかかる。しかし、優稀菜は苦笑するだけだった。



「――女の子に手をあげるなんてさ」



 突進してくる男の胸の中央――鳩尾(みぞおち)に人差し指と中指を突き刺す。うわっ、えげつねぇ!



「ガハッ!?」



 呼吸が一瞬出来なくなり呼吸困難に陥っている男はその場に倒れ込んだ。……救急車、救急車っと。



「お、おい! チッ、だったらこっちだ!」



 また別の男が走り出す。――樹里の方向に。

 一方、樹里の方はやる気満々らしく、手には――鉛筆を持っていた。



「ふふっ、こっち来るんだ。だったら、私の文房具コレクションを拝みなさい」



 ああっ、ドS状態の樹里だぞ。やばいって! そっち行かない方がいいって!

 しかし俺の思いは届かず、そのまま逃走しようとする男。……不幸だな。

 樹里は男の攻撃を笑顔で受け流し、男の両肩の肩口を鉛筆で思いっきり強打。そのあとすかさず、鉛筆でアッパーカット。



「〰〰〰〰っ」



 男は激しい痛みのあまり気絶してしまった。……肩の関節、外れている可能性あるぞ、あれ。



「救急車。呼んどいてあげるわ。……もしもし。こちら――」



 天使のような笑顔で携帯を取り出し、通報する樹里。……相変わらずっぷりのドSだ。



「ど、どうなってやがる!?」



 目の前で倒れ行く仲間たちを見て、最後に残った男は明らかに動揺する。そりゃあそうだわな。



「く、クソッ!」



 叫び、俺の方に突っ込んでくる――って、おいおい、俺の方に来んなよ。



「よせって、おとなしく投降しろって」

「ガキがぁッ! ブッ飛ばしてやる!」



 ああ、無情(レ・ミゼラブル)。どうやら俺の思いは届かないようだ。……しょうがねぇや。

 俺は突っ込んでくる男のパンチをかわし、男のこれかみに拳を入れる。



「がっ!?」



 殴られた男は軽い脳震盪(のうしんとう)を起こし、足をふらつかせる。その足のモモにさらに俺が蹴りを入れる。

 モモを蹴られ、足で立てられなくなった男はその場に倒れ込んだ。

 周りのギャラリーから歓声が響き渡る。



「俺たちも早く退散しようぜ」



 銀行強盗退治を終わりにした俺たち四人は、颯爽とこの場から立ち去り、残りの時間は色々なところへ散歩した。

 ……俺たちが銀行強盗犯たちにした攻撃場所が全て、人体急所だったことに気付いて、反省会が行われたのは後の話。……手加減しないとな。





          To be continued

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