―第壱拾玖章 銀色のプレビュー―
俺は仮面野郎が逃げた落とし穴の中を捜索していた。
「ったく。どこだ?」
落とし穴の中の部屋は思った以上に広く、なかなか奴を見つけられないでいた。っていうかなんでこんなもんがここに作られてんだ? 西洋のお城とかじゃないんだぞ。
「……ん?」
若干、光が見えたところがあった。
俺は光が差し込んでいるところへ向かう。――僅かだが、ドアノブがあって扉になっている。
かちゃ。ドアを開けて入った瞬間――バタンッ! ドアが閉まった!
「……罠……か」
「その通りだぜぇ? ヒャーッハッハッハッ!」
仮面の男がいた。
「もう開かないぜぇ。ここのドアはスイッチ式でなぁ。こいつを奪わないとなぁ」
そのドアのスイッチとやらを見せつける仮面男。
「……そいつを奪わないと、俺はこっから出られないんだな?」
「そうさぁ! 俺を倒してみろよぉ! てめぇにはむしゃくしゃしてんだ! 俺の邪魔をしやがってぇ。この手はハンデだ。ボコボコにしてやるッ!」
はぁ……ったく、なに言ってんだ、こいつは。
「……邪魔もなにも、てめェが勝手に仕掛けたんだろうが。こちとらァ、大事な仲間を苦しめたてめェが許せねェんだよッ!」
怒りでおかしくなっている俺は奴に跳びかかって、奴の顔に右ストレートを入れてやろう……と見せかける。
「甘ぇ!」
「そっちがな」
俺は仮面男の腹に左拳を突き刺す。もちろん、右ストレートはフェイントだ。
「ごハッ!」
仮面男が苦しそうな声をあげる。
――ドックンッ!
俺のうちで封印されているようなものが甦ってくる。
――無数の警官に向かう俺……目の前で倒れる俺によく似ているやつ……ニヤける老人……激怒する俺……なにかを考える俺……巨人……鋼鉄の容器の中に水と一緒に入っているふたりの女の子……。
「なに、ボーっと突っ立ってんだ、ボケェ!」
どん!
俺は仮面の男に体当たりされ吹っ飛ぶ。いてぇ!
――ドックンッ!
ま、まただ! なにかの映像がフラッシュバックしてくる。
――ほら、おまえの妹たちだ。喜べ、○○○○○君!
な、なんだ! 誰だ、おまえは!
「舐めてんのかぁ! てめぇ!」
仮面の男が俺に叫ぶ。
――ほら、おまえの妹たちだ。喜べ――
――――――――――――――――――――――――――っ!
…………。
「……思い出した」
「あぁん? 俺とやってることかぁ? なんだよ、忘れてぼけーとしてたのかい?」
「――違ぇよ」
そうだ、俺は――。
「じゃあなにがだよぉ、杉並俊輝ぃッ!」
俺に殴りかかってくる仮面の男。
「『杉並俊輝』……か。たしかに、俺はそんな名前で呼ばれていたなぁ……。それは俺の偽名だよ。誰が付けたかは知らんがな」
ひょいっと軽く避ける俺。遅いな。止まって見えるぞ。
「な、なにもんだ! てめぇ!」
驚く仮面の男。こいつ、俺にかわされたことに信じられないような顔してやがる。
「訊くなら、答えてやるよ」
――どッ!
俺は男のもとに瞬時に走り、目の前に辿り着く。
「!? は、速ぇえ!」
「俺の名前はな――」
驚いて、隙だらけの男に俺は冷たく名前を答える。
「――十七夜鏡輔、だ」
――ドンッ!
男の右頬にストレートを叩き込み、
「ふんッ!」
――ベキッ!
左に向いた男の顎を右足で蹴り上げ、
「はッ!」
そのまんま、蹴り上げた足を勢いよく頭に落とす。
――ボコンッ!
「がっ!」
俺の踵落としで、男は気を失った。
ほんの数秒の出来事だった。……ふぅ、ブランクがあるなぁ。こんぐらいの連続格闘技で息が上がってやがる。
――Kyoukas story 名前――
「……う、うそ……」
十七夜、鏡輔だって……?
「な、なんでわたしと同じ名字なの……?」
「そうですね……それじゃ――」
歩美が本当に辛そうな顔で言う。
「――少し、昔話をしましょうか……」
歩美は過去の真実を語った。
To be continued




