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―第壱拾壱章 銀色のインダクション―

 翌朝。この日は幸い日曜日だったので寝坊しても別にいい日。

 というわけで、俺はまどろみタイムを楽しんでいた。しかし……。



「ほらっ、俊輝。早く起きなさいよ」



 それを普通に邪魔してくるやつがいた。歩美ではない。鏡花だ。…………。



「……なんだ? まだ十時じゃないか」

「『まだ』じゃないわよ! 『もう』よ!」



 ……五月蠅いなぁ。近所迷惑になるぞ。そんな大声出しちゃ。



「……まったく。昨日は遅かったんだぞ? もう少しまどろみタイムを楽しませてくれよ……」

「わたしだって昨日に限らず、一週間ぶっ続けであんな時間まで起きて、ちゃんと通学してるのよ? それ

とね、わたしはそのまどろみタイムとやらはね、とっくの昔に放棄してんのよ」



 そんなこと言われても……。おまえ、軍隊育ちだからそんなこと出来るかもしれんけどさ。俺は一般人だよ?

 俺は鏡花を無視して布団に潜りこんだ。



「……なるほど。まだあんたはまどろみタイムを続けるというのね?」

「…………」



 寝たふりをする俺。知るもんか。……う~ん。やっぱいいなぁ。この時間は――。



「起きぬなら 起こしてしまえ ホトトギス!」



 一句詠んだ鏡花は俺の布団を剥ぎとる。!?



「さっぶ!」



 パジャマ姿で小さくベッドに丸まる俺。な、な、な、なぁ!?



「ふっふ~ん。これなら嫌でも、まどろみタイムは続行できないでしょう? あっはっはっは!」

「く、くそぅ……」



 高らかに笑う鏡花。なんか凄く気持ちがよさそう! お、俺のまどろみタイムは終わってしまうのか……?――否!



「……なに勘違いしてるんだ」

「ひょ?」



 ネタがわかっているのか、鏡花がそう返す。



「まだ俺のまどろみタイムは終了してないぜ」

「な、なぁに言ってんの? もうあんたには寝るための布団がないじゃない」



 ふふんと大きな胸を張りながら俺に奪った布団を見せつける鏡花。い、今だ!



「速攻魔○発動! 強奪!」

「え? それは装○魔法でしょ? そこは『狂○士の魂』――」

「DA☆MA☆RE」



 ネタがわかっていたらしい鏡花のツッコミを軽くあしらい、俺は鏡花の脇腹を思いっきりくすぐる!



「きゃん! あははははははははっ。や、やめてぇ。エッチぃ~」



 くすぐられ大爆笑をする鏡花。鏡花の柔らかい体と艶っぽい声に少し怯みそうになる俺だったが、そんなの関係ない。俺は鏡花が笑って隙を見せた途端に彼女から布団を強奪、もとい奪還した。……ふ、貰った! 



「どうだ。これで俺はまどろみタイムを続行できるぜ。わははははは!」



 高らかに笑い返してやる俺。なんだこれ。めっちゃ気持ちがいい!



「はっ……はぁ……ふっ。それはどうかしらね……」



 鏡花は不敵に笑って俺に言う。



「残念だけど、あなたはまどろみタイムを継続させることは……できない!」



 ! なん……だと……?



「ど、どういうことだ?」



 断言する鏡花に怪訝に返す俺。当たり前だ。何を根拠にそんなこと言えるんだ?



「ふふふ。なぜなら……」



 鏡花は俺に指さして勝ち誇ったような表情で告げた!



「あんたはもう目がパッチリしていてまどろんでなんてないからよ!」

「な、なにいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいっ!?」



 ほ、ホントだ! 俺もう目ェパッチリじゃん! なんてこった!



「あとさ、俊輝。わたしをくすぐったとき変なところ触んなかった?」



 怖い笑顔を浮かべて鏡花が俺に迫る。



「い、いや。触ってないと思うんだが……」

「ふん。どうかしらね……」

「えええっ!?」



 いやっ、触ってない! 絶対に触ってないよ?……うん、触ってなんかいないッ!



「まぁ、触られてないわよ」

「なんなんだよ!」



 しれっとネタ晴らししやがるな、こいつ。



「ほら、今日は話したいことがあるからさ。これには歩美の意見も聞きたいから。今日歩美、どっか行くらしいのよ」

「なんだ? まだ話していないことでもあったのか?」

「まあね。だから、そのだらしない寝癖を整えて、とっとと下に来なさい」



 ニコッと笑って下に降りる鏡花。……笑うと可愛いよな、こいつ。



「はぁ……。どうせもう寝れねえし、起きるか」



 俺は鏡花が言うだらしない寝癖を整え、階段を降りる。



「あら、兄さん? 随分早いですね?」



 玄関に鏡花と一緒にいた歩美が不思議そうな顔で俺に話しかける。

 どうやら鏡花の言った通りどこかに行くらしい。



「鏡花に俺のまどろみタイムを強制終了させられたんだよ……。なにやらまだ話したいことがあるんだと」



 鏡花をジト目で見る俺。



「ああ、それに私は了承しますのでオッケーですよ」

「……へ?」



 歩美の言葉に鏡花は間の抜けたような声を上げる。

 そんな鏡花に歩美は少し寂しそうな笑顔を浮かべて言った。



「兄さんをよろしくお願いしますね」

「?」



 あ、歩美はなにを了承したんだ?



「…………」



 口をポカンと開けている鏡花。「こんなにあっさりでいいの?」って顔だ。



「では、私はこれから出掛けるので失礼します」



 もう言うことはないらしく歩美は玄関から外に出て行った。

 しばらくして、鏡花がポンっと手を叩いた。



「よし。じゃあ決まりね」



 な、なにを決めたんだこいつ。



「お、おい鏡花。おまえ、俺と歩美になにを話そうとした?」



 鏡花はもうケロッとしていて自分のバッグからなにかを探しながら答える。



「いやなに。あんたをわたしのとこ、SICの十番隊に入れようと思ってね」



 ……は?



「俺がSICに? しかも、おまえ、隠密機動隊にか?」

「よく覚えているじゃない。わたしの担当」



 平然な顔で返す鏡花はバッグから一枚の紙を取りだした。



「はい。ここにサインお願いね。歩美も了承をくれたみたいだし。あなたはもう十番隊の隊員――わたしの部下よ」



 ……。…………。……………………は?



「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっ!?」

「近所迷惑よ?」

「『近所迷惑よ?』じゃねぇっ!」



 たしかに近所迷惑だけど! 俺の反応は当然だろ!



「まあまあ。リビングにでも行きましょうよ」



 鏡花に手招きされてリビングに向かう俺。ここ、俺の家だったはずなんだが……。



「どういうことだよ、鏡花さんや」



 目をひくつがせながら訊く俺。



「いや、文字通り。あんたはもう十番隊の隊員だからここにサインしろっていう意味よ? わかんない?」

「喧嘩売っとんのか! そんぐらいわかるわ!」

「だったらほら。ここにサインちょうだい」



 サインを書くところに指さして言う鏡花。……こいつ、俺がなにを聞きたいのか本当にわかってねぇようだな。



「あのな、そういうことじゃねぇんだよ。俺が訊きたいことは大きく分けてふたつだ。ひとつ、なぜ俺がおまえの下で働かなければいかんのだ。ふたつ、勝手に一般人の俺を簡単に入れちゃっていいのか、だ」

「ああ、なぁんだ、そんなこと?」



 納得したように鏡花が俺に答える。



「そうしないといけないからなのよ。SICの掟でね。存在を知られた部隊の隊長は知ってしまった一般人を教育させてそこに入れないといけないの」



 ……え、えー。



「マジで?」

「うん。マジ。まぁ、あんたの場合は妹の歩美の下で働くこともできるかもしれないけど歩美の許可は通ったし、だから、あんたをわたしのとこに入れることになったのよ」

「はぁ、そうだったのか……」



 そのことを相談しようとしてたのか。でも、歩美が相談するまでもなく了承したからこうなったと。



「へいへい。わかりましたよ。ここでいいんだよな?」

「ええ、そこでいいわ」



 サインを書く俺。



「意外に物分かりがいいのね」

「まぁな。どうせ断れないだろうし」



 断った瞬間、永久幽閉とか穴だらけとか言われたら堪ったもんじゃない。



「SICって一般人から隊員を取っちゃうのか?」

「ん? ああそうね。だいたいは。あとね、余談になっちゃうんだけど、SICはもちろん犯罪者を逮捕したりする警察みたいな組織なんだけど、決定的に違うとこがあるのよ」

「なんだ?」

「望めば隊員になれるのよ。二十人の隊長のうち三人、了承すればね。犯罪者は」

「!?」



 ……………………えー。



「なんか、すっごくイヤそうな顔になったわね」

「当り前だろ」



 犯罪者さえ取り込むのかよ。SICってのは。



「まあまあ。っていうか、元犯罪者と訓練された元一般人だらけよ。最初からプロのひとなんて一番隊と十二番隊、科学研究科の十三番隊、それと格隊の隊長ぐらいだし。ま、圧倒的に多いのは元一般人だけど。京竹龍侍さんなんて元ヤクザや暴力団の女の人ばっかり雇って鍛えさせてるし」



 ……あなたらしいや、龍侍さん……。まぁ、ちゃんと彼女たちも望んでそこにいるだろうけど……。



「あれ? 一般人だったやつの方が多いのか? 俺はてっきり、元犯罪者の方が多いと思ってたんだが」



 笑って鏡花が答える。



「うんうん、たしかにそう思うわよね。でも犯罪者はね。前にもわたしたち、SICの組織の元であるFBIの敵対している組織から、何回も色々な依頼を引き受けているひとが多いのよ。だからむしろ、命が狙われやすいから入らないひとが多いのよ。この世界の犯罪者は、色々条件やリスクのことを考えて用心深いからね。入っているひとは大体自信家で結構実績を積んでいるひとよ。普通のテレビとかに報道される程度の犯罪者は警察に引き渡しちゃうから」



 ふーん。なるほどなぁ。この世界は奥が深いね。「程度」って。犯罪者にもそれなりのランクがあるんだな。――さてと、書いたぞ。



「ほれ、書いたぞ。一応訊くが、俺の死ぬ確率は?」

「ありがと。うーん。訓練次第かな。わたしが死ぬ確率が一パーセントだとすると、四十八パーセントぐらい?」

「すげぇリアルな数字が返ってきたなぁ……」

「だって、あんたの運動神経はいいから鍛えれば死ぬ確率は減るだろうし、あとあんた、経験不足だしね」



 なるほど。こいつなりに色々計算していたわけね。自分自身、死ぬ確率が一パーセントあると言っているあたりが謙虚だね。



「よしっと。じゃあ、今日からあんたは十番隊の隊員よ。よろしくね」

「おう、よろしく」



 改めて何回も挨拶してくるのは癖なのかな? 鏡花は軍隊にいたらしいし。

 そんなわけで、俺はSICの十番隊に入ることになった。



                         To be continued

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