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ここ異世界みたいです 〜スキルの解放条件?〜  作者: 蓬(よもぎ):


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5・魔法?

 内心あわあわしながら、手を伸ばした姿勢のまま顔だけゲイルさんに向けた。多分わたし今、とっても無表情だと思う。

 

「あー。今度は念のため光もやってみるか?」半ばため息をつきながらゲイルさんが別の杖を出す。

 ほとんど同じに見える杖だけど、こっちはさっきとは石に書いてある模様、刻印が違う。

 

「光……光ってどうすればいいのかな」レーザーみたいな?ちょっとそれはそれで怖いというか殺傷力が高すぎるような。いや、水流カッターも充分怖いと思うけど。

 

「光らせてみてくれればいい」

 なるほど。それなら安全そうですね。

「あ、街灯くらいでいいからな!」何かに気づいたように慌ててゲイルさんが言い添えた。

 街灯…懐中電灯のちょっと大きいやつ!

 

「ライト」

 今度はふわっと杖が光った。大丈夫、そんなに眩しくない。

 ちょっとドヤ顔してしまったが、そこは勘弁してもらいたい。

 

「うん、わかった。火や闇は危ないから、専用道具を持てるようになるまで少し我慢して。当分は水と光、余裕があれば土と風の属性を使う方向で」

 ゲイルさんがゆっくり、まるで説得するような口調で話してくれた。

 わたし32歳。大人なので調子に乗って暴走とかしませんよ、失礼な。あ、今は18歳だったっけ。

 

「エリカは魔法、全然知らない?なら、字は、読める?」リラが聞いてきたので逆に聞き返した。

「魔法は知らないけど字は読める。何か資料あるの?」

 リラの顔がぱっと明るくなった。

「あのね、ギルドの二階に資料あるの。でもわたし、あまり字が読めないから一緒に読んで欲しい」

 おお!それなら一石二鳥。


 冒険者ギルドでは登録料に簡易な武器や道具代も含まれているらしく、ひとまず水属性の刻印の杖、光属性刻印の短剣、それと水袋に火起こしの道具などを支給してくれた。

 まるでRPGの初期装備みたい。でも〝木の棒〟とかじゃなくて良かった。軽いし長持ちはしなさそうだけど一応鉄っぽい素材の短剣だ。先程着替えたズボンの腰回りや後ろには、ちゃんとそれらを引っ掛けるフック部分が付いている。あとはベルトである程度固定させればいいのかな。幸い元々していたベルトがあるから暫くはこれでいいか。

 そして少しこの世界のことを知らなくては。


 二階に上がって廊下を数歩進めば、右手に資料室があった。ちょっとした図書館みたい。

「ここで読むのは問題ない。写すのもいい。ただ、持ち出しは厳禁だ」とゲイルさんが説明してくれたので、とりあえず読み上げてもいいのかは確認して中に入った。人はまばらにいる程度。

 識字率が高くなければ、それはそうなるか。

 リラは、自分の名前は書けるし、簡単な決まり言葉なら書けるけれど文章を読めないそうだ。ただ、出身の村で算術だけは習ったらしい。二桁や三桁までは計算できるようで、それでも相当優秀だったと。


 まずは魔法の基礎みたいな本を探す。

「多分、このあたり」リラが指した方を見たら確かにそれらしい本があった。読めないのにわかるのかな?

「わたしね、勘がいいの」

 ほうほう。なんとなくそれは感じてた。


「ええと、属性は大別して六。光・闇・火・水・風・土」ふうん、そうなのか。

 光は文字通り光、明るさ。ほかにも殺菌や炎症抑制にもいいとか。闇は基本的に吸収だそう。火は文字通り熱や着火。水は水生成と流体制御。風は素早さや気流、土は物質強化。組み合わせで他にも色々出来るらしい。

 

「わたし、風の魔石を付けてるから動きを早くできるの」

 そう言ってリラが見せてくれたのはブーツ。魔石がセットされてて、刻印がある。

 だからあんなに動きが早かったのね!

「クロスボウも」

 見せてもらうとこちらにも魔石が。なるほど、そういうふうに使うのか。

「魔力って増えるの?」単純に疑問に思って聞いたところ、なんだか小さい子を見るような目で見られた。

「魔力量は生まれつき決まってる。たまに増える人もいるけど、それもちょっとだけだよ」


 どうやらそれは常識らしい。

「魔力35って少ないの?」

「多い方かな」そう答えながらリラがもう一冊、本を渡してきた。

 

「多分これ、人の身体のこと書いてあると思う。ナハルみたいな離れ島の田舎だと、神殿もないし外と付き合いがなさそうだから、基本を知らないかもと思ったけど、どう?」

 そういえばそんなところ出身設定だったわ。ナハルがどんな場所か知らないけど、島なのか。覚えておこう。

「ありがとう。助かる」ほんと助かる。

 受け取ってお礼を言うとリラが笑顔になった。かわいい。


 その資料は、多分獲物の解体のための指南書でもあるらしくて、人の身体と家畜、魔獣の違い、魔獣の解体方法や魔石の取り出し方が書いてあった。人の体のところはさらっと数行触れているだけだけど。


 〝人や家畜は体内に魔力器官がある。魔獣の魔石は、人や家畜が持つ魔力器官が高濃度の魔力環境へ適応した結果と考えられている〟

 魔力器官はいわゆる循環器みたいなもの?魔獣は魔石でそれを担ってるから毛が硬くなったりするらしい。一方で人や家畜はその器官で魔素の侵入を防いだり魔力を出力させたりするそうだ。ただし出力できるのは一定以上の魔力が必要。家畜の場合魔力量は最低限といわれる1〜5程度、一般的な人間の魔力量は5〜20。それ以上であれば冒険者や狩人として活動する場合が多いらしい。また、魔力量に関わらず筋力や腕力、剣技などに優れる場合、冒険者だけではなく騎士や傭兵といった仕事は可能のようだ。

 つまり体内に魔石ができるのが魔獣。魔力器官があるのが動物や人、ということ。…というのを理解した途端に、何だか嫌な汗が出た。

 魔法使えて魔力あったよね、わたし。いつの間にか体内にそんなものができてたってこと?どうやら年齢も若くなってたし。生理的な嫌悪感で指先が冷たくなった。

 

「どうかした?顔色が悪い」

 リラが心配そうに声をかけてくれて、はっとする。


 【適応処理中】適応率:92%


 頭の中でログが流れた。


 そういえば今日起きてから、どんどん会話がスムーズになってきてたことに今更ながら気がつく。資料の文字も昨日の登録時よりずっと読みやすい。そう、さっき見せてもらったリラの魔石の刻印、なぜ分かったの。

 睡眠時って脳内では情報処理してるって何かで読んだなとも思い出す。

 

 よし!これはきっと転移チート!

 ひとまずそういう事にしておこう。

 これは考え出すときっと危険な領域だ。湧き上がってくる不安や恐怖心に無理やり蓋をして空元気を出す。

 それに今考えたってわからないことを考え込んで動けなくなるより、まずは生きること、生活、知識!

 

「そういえば昨日会った時、リラは一人だったけど、いつも一人で討伐してるの?」

 嫌な考えを振り払って頭を切り替える。

 

「うん。いつも一人。だからあまり遠くには行けないけど、何ヶ所か森に罠を張って狩りをしてる。昨日は罠用に置いた食べ物に、ラビの雌が寄ってきて、それを繁殖期の雄が何匹か追ってきてたんだと思う」

「ラビ?」

 聞き返したら資料の絵を指差して教えてくれた。「これ。ラビ」

 あ、正式名称がフェラルラビット、通称はラビなんだ。

「だからあの状態だったのね」

 納得。

「じゃあラビの解体は知ってるみたいだから他に知りたいのはどこ?読むよ」

 

 資料をどんどん捲っていくと、ふと気になる表示があった。

 人型に見えて人より小型、手が長く体毛が多い。これ、ラビを最初に見かけた時に死んでたあれじゃない?

「ゴブリン!これをラビが食べてた!」

「ゴブ…?なにそれ」

 リラに特徴の文章を読んで聞かせた。

「ああ、それ、グラウル」

「グラウル?」

「グラウルと呼ばれる、そこそこ知能があって群れを作る魔獣だね。でも解体はいらない。あれは食べられないから魔石だけ取れたら取るかな」

「お、女の子を好んで襲う、とかは?」

「?たまに小さい子供や赤子が攫われることはあるけど、普段はあまり人間を襲うことはない。自分より小さい魔獣や動物を食べるよ」

 

 やっぱりファンタジーの世界とはちょっと違うんだ。よく考えたらそうよね。一対一なら多分、道具や魔法使うことを考えても人間のほうが強そうだし、群れで襲って来ても人間相手なら実入りが少ないよね。食べなきゃ生きていけないんだし。効率いい方を選ぶのが当然かぁ。

 そのあとはいくつか資料を読み上げて、近隣の森にいる魔獣や解体方法を一応頭に入れることができた。

 明日はリラが仕掛けた罠を一緒に見に行くことに。

 

 いよいよ冒険者開始だわ。


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