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ここ異世界みたいです 〜スキルの解放条件?〜  作者: 蓬(よもぎ):


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2/13

2・遭遇!

 思わず縋りつきそうになったけれど、残っていたわずかな理性がストップをかける。

 どう見たって自分より随分年下のお嬢さん。オバ…お姉さんとしてどうなのか。しっかりしろ、わたし。とにかくここよりは安全な場所に行きたいことをどう伝えようか。

 一瞬で自分を立て直して、改めて目の前の女の子を見た。

「あの、街へ…」

 言い終わらないうちに視界に入ったのは彼女の肩越し、森の縁に見えた動く茶色。


【検知】フェラルラビット ×5

【警告】複数敵性反応

【評価】脅威度:3(中)

【戦闘補助】開始

【補正】命中補正:有効

【選択】武器を選択してください

 

 咄嗟に右手に握っていた石を投げる。一匹仕留めた。

 音に気づいた少女が身を翻しながら背にあった小型のクロスボウを構え、足を鐙に掛けて弦を引いた。

 早い。

 わたしは続けてひときわ体が大きく見える個体に向けて、握っていた石の中でも大きいものを投げつける。そのあとを追うように次々にボルトが放たれて、大きい個体の側にいた残り三匹があっという間に転がった。


【結果】フェラルラビット ×5 → 無力化

【状態】脅威排除

 


 流れたログで、ほっと息をつく。

「!アナタ、石、ナゲ、リッパ!! 」リラさんがクロスボウを背に戻しながらフェラルラビットに近寄っていく。「繁殖期、アライ」

 なるほど、この生き物はいま繁殖期で、気が荒くなっている時期ということだろうか。

「これ、雌。コイツ、追って、雄、争い」

 リラさんがそう説明しつつ一匹のフェラルラビットの首筋を切り、内臓を出し始めた。

 え?流れるように解体作業始めたけど!え?

 あのくらいの体積でもあんなに血が出るんだ…。目を逸せないまま思考が逃避を始める。

 彼女が繁みの陰に置いていたらしい水袋を取り出して、水を流して死体を洗っているのを見て、はっとする。ぼんやりしてていい場面じゃない。解体はできないけど水を適量かけるくらいはなんとか。

「アナタ、獲物、マ…石、重要。肉、ドウする?」


 さっきより少し聞き取りやすくなった気がする。要は、わたしが投石で倒した二匹分の肉と、マ…石?魔石?をどうするか聞いているようだ。反射的に全部あなたへ! と言おうとして、思いとどまった。

 今の自分は右も左もわからないし、解体はできない。言葉がどこまで通じるかも怪しい。彼女はおそらくいい人だと思うけど、まだ判断できる材料がない。

 

 倒した数はあちらが多いが、どうやら他より一回り大きな個体の魔石がそこそこ大きかったらしく、取り出しながら「おお!」って喜んでいたみたいだし、肉も大きい方がより量があるだろう。

 さっき最初に見たあの死体から出た石、魔石っていうのか。

 解体は彼女に任せているから、わたしの取り分としたら本来は三分の一以下、くらいが妥当なんだろうけど。と考えていたら。

 

「ハンブン、いい?」

「え?」

 まさかの向こうからの申し出。

「り…了承!」咄嗟に答えるとリラさんが満面の笑みを浮かべた。いい?はこっちのセリフなんですけど…。

「今日、狩り、コレデおしまい。カエろう」

 肉はそれぞれ大きな葉で包んで、魔石は別の皮の袋に入れたようだった。明るい栗色の短い三つ編みが背中で跳ねて、心なしかウキウキしているように見える。

 当たり前のようにわたしを促して歩き出すリラさん。

 

「リラさん、ワタシ、名前、エリカ」

 まだ名乗ってもいなかったと思い出して、自己紹介してみた。

「リラ、さん、イラナイ、リラ いい」

 〝さん〟付けは不要と。にっこり笑って答えた「承知、リラ」


 わたしが向かっていた方向は合っていたようで、歩きながら情報を交換した。

 

 どうやらここは、魔物もいて、冒険者ギルドというものがあるらしい。リラに冒険者の証になるというタグを見せてもらった。灰晶級だそう。それがどんなクラスかはわからないけれど。 ファンタジーか?そういう世界?もしかして魔法とかある?

「遠いトコロ、来た?ボウケン、登録する、必要」

 

 そうね、多分遠いところから来たんだろうなぁわたし。

 

 なんか駅に居たのに気がついたらこんなところで。帰れるかどうかも怪しいけど、恋人とは別れたところだし、去年両親も亡くなったし、一人娘だし。友達はいるけれど…と考えたらなんだか気持ちがとっても落ち込んでいきそうになったので、その考えを振り払った。まずは生き延びなければ。だってわたし、いま生きてるんだもの。

「冒険者、登録、誰でも、了承?」

 にこにこしてリラが答えた。

「誰でも、ダイジョブ、身分 証明、イル」

 

 なるほど。身分証明書。確かに必要。ここでわたしの保険証や免許証が通用するとは思えないし。

「おカネ、必要?」ふと思いついて尋ねた。

 

「必要、ケド、ダイジョブ」

 大丈夫らしい。


 現状、今頼れる人はリラだけ。信じるしか選択肢がない。

 ふっと思いついたようにリラが、とても真面目な顔をした。

「ア…年齢、問題、ないか」

 年齢?

 上限があるとか?それはまずい。

 だってわたし32歳。日本では何事にも問題がない年齢だけれど、ここもそうとは限らない。一気に冷や汗が出てきた。

「登録、14歳 以上。エリカ、年齢」

 わたしは実年齢を答えようと口を開いて…。

 

 どういうこと。

 まさか14歳前後に思われているわけないよね?いや、待って。東洋人って幼くみられがちとか、一瞬でそういった言葉を思い出した。

「幾つに見える?」

 本当はこういう問いかけって、変なマウントとか〝私若く見えるでしょ〟的な圧とかで出る言葉だと知っていたけれど、そこは無視して純粋に聞いてみた。

「同じくらい、マタハ、下?」


 なんですと⁉︎ なんですとー?

 

 今まで、やや若く見られることはあっても、十代に間違われたことはなかったよ?

 いくら東洋人マジックあったとしてもさすがに…。と思った時に、さっきの流れたログを思い出した。

 

【転移完了】

職業:?? (封鎖値有り)

肉体年齢:18


 〝肉 体 年 齢 18〟!?


 手を見た。手の甲。

 明らかにシワもなくなってハリがある。

 爪を見る。

 ……うん。今朝までの見慣れた肌とはどうも違う。


 疑問は山ほどあるが。


 もういい。決めた。

「年齢。18歳!」多分これが正解なんだろう。

 ええ、自分で言ってても意味がわからないんですけど‼︎


「なら問題、ないね、わたしより、ヒトツ、うえ」

 リラは17歳だということはわかった。うん。


 考えることが山ほどあるけど、とりあえず空腹だし、安全な場所に行きたい。今はそれが最優先。

 リラが指し示す方へ歩いていくと、道をいく荷馬車が見えた。

 おー、道だ、街道だ、人工物に人間だ。


 リラが荷馬車の御者台にいる男性に話しかけてる。

 その間、わたしは引いている馬のような生き物を観察する。一見馬に見えたけど、わたしが知っている馬より体高が低くて足ががっしりしている。あと短いけど角が二本額に見えた。体毛もやや長いしゴワゴワしてそう。

 話が終わったらしく、リラが振り向いた。

「ノせて、もらう、いい」

 街に向かっているから乗せてもらうらしい。正直本当に助かる。長距離の徒歩はあまり経験がないし、脛がもうぱんぱん。荷馬車の後ろに腰掛けた。

 

 運がいいのかこれが普通なのかは知る由もないけど、それからは獣の襲撃もなく。多分二時間ほど移動するとうっすら見えていた外壁がはっきり見えてきた。馬車だの人間だのがたくさん並んでいる。とはいえ、荷車を引いているのは見たこともない生き物。牛っぽいけど、体毛の色や毛の長さ、細部が明らかに違う。

 牛みたいな生き物は濃い茶色の体毛でツノはない。けど脚が太くて短い。身体は牛より大きく見える。馬車を引いているのは体毛が砂色だ。サンドベージュというのだろうか。こっちも脚が太くて背が低く思える。

 もっとも、間近で牛や馬を見たことがないからイメージだけど。


 ほんとに異世界来ちゃった?

 今更だけど実感が出てきて震えてくる。


「門、こっち」

 お礼を言って荷馬車から降りるとリラは道を逸れて森側に向かう。こちらにも道がある。

 人々が並んでいる門はとても大きいけれど、それより森に近い方にもっと小さい門があった。リラはそちらに向かうようだ。

 当然かもしれないけど門番がいる。

 軽鎧というのだろうか、胸当てと下半身を覆う鎧をつけた男性が立っている。

 リラはそちらにずんずん進む。

 緊張で体が冷たくなった。

 

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