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ここ異世界みたいです 〜スキルの解放条件?〜  作者: 蓬(よもぎ):


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1/12

1・異世界転移?

初の長編です。よろしくお願いします。

完結まで執筆済み。本日三話分投稿、以降毎日更新です。


【時震検知】

発生源:異常転移

対象個体:人間(女性)


【CHRONOS SIGNAL DETECTED】

【CANDIDATE DETECTED】

【GENETIC COMPATIBILITY : 99.998%】

【SURVIVAL PROBABILITY : 0.02%】

【TRINITAS PROTOCOL : STANDBY】

 

 


――え? なに?


 


(締切が今週末までのデータ、昨日作成済みだから今日は朝イチで再チェックして送信ね)

 今日のルーティンを考えながら駅への階段を登っていたので注意力が散漫になっていたのだと思う。


 はっと目をあげた時には中年男性が勢いよくぶつかってきた。

「っ!」

〝ぶつかりオジサン〟⁉︎

 いやここ階段登ったとこだよ‼︎

 落ちるっ‼︎



 ぐらり、と目眩のような感覚。

 身体が宙に浮く。


 その瞬間——


 頭の奥に、知らない文字が流れた。


【転移処理進行】

対象:L-112-004

分類:人間 / 女性

年齢:32

転移先:領域・エルダーラ

 

【TRINITAS PROTOCOL : ACTIVE】

【REGENERATION PROTOCOL : EXECUTING】

【適応処理開始】



 次の瞬間。


 とすん、と尻もちをついた。


 ……あれ? 痛くない。


 いや、そんなことより――

「痛くないけどここどこよ!」


 反射的に立ち上がって周りを見る。

 左側に森。

 目の前は草原。


 ……草原⁉︎


 駅前の階段だったはずなのに、ここには建物が無い。


 無いどころか――

 人工物が一つも見当たりませんが?


 頭の中に、また文字が流れる。


【転移完了】

職業:??(封鎖値有り)

肉体年齢:18

基礎体力:+20%

適応処理:継続中

持ち物:バッグ



「いや普通、異世界転移とかだったら王城の広間で聖女様〜! とかじゃないの⁉︎ 」


 よくわからないが、なんかUI(ユーザーインターフェイス)っぽいものにツッコミを入れる。

 大体なんなの、この頭に流れるログ。

「いやマジで異世界とかじゃないよね?生きていける気がしないんですけど」


 とりあえず遠くを見る。


 草原の向こうに、かすかに何かが見えた。遠すぎてよくわからないけれど。

「あれ……もしかして街?」

 人工物なら人がいるはず。単なる山とか崖かもしれないけれど、何もない方向に進むのは怖い。


 あっちに行こう。



 今日の出勤用の格好。


 セーターにストレートタイプのパンツ。薄手のコート、足元はブーツ。

 パンプスでなくてよかった……!

 あといつものショルダーバッグ。服はどこも破れていない。


 もしあのまま階段から落ちてたら――


 後頭部強打?


 ……ゾッとする。

「あんのクソオヤジ、次見つけたら絶対蹴り入れてやる!いやむしろ今からでもハゲ散らかす呪いかけてやる〜っ!」

 

 とはいえ。この状況。


 もしかしたら運良く怪我なく助かって、記憶喪失のままフラフラ電車に乗って、どこかで降りたって可能性もあるし。

 ……こんな景色は、少なくとも近隣でまったく思い当たらないけども。


 でも異世界転移とかより現実的よ。


「そうだ、スマホ!」

 慌ててバッグを探る。取り出して電源ボタンを長押し。

 ……反応がない。


「え、嘘! 電源つかない⁉︎ 」

 画面は真っ黒のまま。何度押しても沈黙。


「壊れた……?」転んだ拍子にぶつけた?あり得る。

 

 諦めてバッグにしまい、歩き出す。

 太陽の感じからして、さっきの出勤前とそこまで時間は変わっていない気がする。


 なんだかのどかだ。風が強い。


 空気が、違う。

 美味しい……ような気がする。でも匂いが違う。なんだか緑が濃いような。

 風の音。

 鳥の声。

 そして――


 ガサゴソ。

 ……異音。



 音につられて目をやる。


 十メートルほど離れたところの草むら。

 何かが動いている。


「あら、ウサギさん?」

 野うさぎ……に見えた。後ろ姿。

 少し大きい気もするけど。まあ個体差もあるし。

 なんだかちょっとほっこりして、近づこうと足を踏み出す。


 その時。

 ふと、違和感。


 そうだ。

〝異音〟がしたんだ。


 異音ってことは、不自然な音。

 足を止める。


 見えた。


 死んでいる、と思われる異形の物体。

(ゴブリン……?)

 それを――


 一心に喰らう、ウサギのようなもの。


 ガリガリ。

 ボキボキ。

 クチャクチャ。

(これヤバいやつ‼︎)一瞬で血の気が引いた。

 

 逃げる‼︎

 逃げるしかないじゃない︎‼︎


 私は全力で走り出した。

「うわっ、追ってくる⁉︎ 」


 全然ウサギじゃなかった!

 小型犬くらいの大きさ。大きく裂けた口に牙。爪。

 噛まれたら、絶対ちょっとした怪我じゃすまない!


 いや勝てるわけないじゃない‼︎

 なんかさっきログで〝職業:??〟みたいなの出てたけど︎‼︎

 装備もなにも無いですし!

 そもそも何するのか知らないし!!


 マニュアルくださいマニュアル!!!

 とにかく全速力で走るけれど、どんどん距離は縮まる。


 そのうえ。

 普通のアラサーOL、運動不足。そんなに長く走れるわけもなく。

 案の定――

 つまづいた。

 転んだ。

「いやこれ無理じゃ――」


 その瞬間。

 また文字が流れた。


【検知】フェラルラビット

【評価】脅威度:1(低)

【戦闘補助】開始

【選択】武器を選択してください

 

 

「武器なんか持ってないわよ!!」


 でもあっちは捕食する気満々で迫ってくる。ザザザッと音が迫る。

 必死に考える。何かないか?何か!あ!

 

 転んだところの石を掴んで投げた。何もしないよりはマシ。

 

【武器認識】石

【行動】投擲

【補正】命中率 +75% / 威力 +30%

【結果】フェラルラビット → 無力化

【状態】脅威排除

 

 一瞬確認できたのは、胸の少し下あたり。

 ウサギもどきの、そこに石が命中し、そのままそれは動かなくなった。


「……は?」

 

 ノーコンとまではいかないけれど、そんなにコントロールいいわけでもないし筋力も普通なのに当たった、しかも〝脅威排除〟って?

「ほ、補正効果?」


 本当に? 本当に死んだ?

 起き上がって、そこらの草を千切る。

 根本に近い少し太い方を先にして数本握りしめてさっきまで追いかけてきてたウサギもどきをツンツン。動かない。


 そうこうしているうちに、石が当たったと思われる傷口?その胸元から、じわりと押し出されるように小指の爪より小さな石が落ちた。

 むかし父が「生き物が死ぬと、寄生虫やらウイルスやらが表に出てくるから、やたらに触るのは良くない」って言っていたのを思い出した。死体はそのままなので、消えないみたい。そして変な石は気になるけど触るのはやめよう。

 いやゲームじゃないんだからそりゃそうでしょ、とひとり突っ込んで、なんだかログ流れるからゲームみたいな気分になってたと気付いた。

 

「いかん。気を引き締めてあっちに向かおう」

 これはもう、命かかってる。多分。


 手元で手頃な石を集めてバッグに入れ、念の為いくつかは右手に握り込んだまま、何かが見えた方に私は歩き出した。


 体感で、一時間以上は歩いただろうか。ゆるい登り坂になっていたようで、右方向にうっすらと道らしきものが見えてきた。きっとそっちの方が、さっきのような怖い生き物はいないような気する。

 本当は森から離れたいけれど、どうやらようやく見えてきた石壁?のようなもののそばまで森は続いているらしい。延々と左側にある森にびくつきながらもひたすら歩いていく。


「ねぇ! ダイ……ジョウブ?」

 不意に声をかけられ腰を抜かしそうになる。

「ど……どちら様デスカ」

 

【適応処理中】適応率:62%・順次処理


 また何かログが流れる。


 振り向いたら女の子が心配そうに近寄ってくるところだった。どうやら気にしていた左側の森から出てきたらしい。


 わぁ!現地人!

 

 だって明らかに日本人じゃない明るい栗色の髪に、ちょっと赤い光が入った凄く透き通った茶色の瞳!日本人じゃなくてもこんな瞳の色した人知らない!服装も革のベストに、動きやすそうなブーツ、背負ったクロスボウっていうのかな、弓みたいなの。こんなの現代日本にいるなら逮捕されるし!

 内面でパニックになっていると

「アー……村……リラ」

 早くて聞き取れない。

 

「ゆっくり、お話、してください」

 一応言葉は通じるみたいなのでお願いしてみる。


「わ…し…リラ。アナタ、ダイジョウブ?」

 リラさんというらしい。明るい色の瞳が心配げに揺れている。

 こう、なんだかどこかの、訛りの強い方言を早口で喋っているのを聞いてるような感じ。単語を拾って繋げて意味がわかる、みたいな。

 ごめん、見た感じ明らかに成人前の若いお嬢さんで私の方が断然年上なんだろうけど!

 なんかもう色々、無理!

 

「ダイジョウブ…ないです!」

 

 半泣きで訴えてしまった。

 

 

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