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familiar  作者: 酔海無鱗
第一章
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3/4

第二話「初めての戦い」

 倒木地帯から逃げるようによちよち森を進む。

雑に所々道ができてるから、人が出入りしない森、というわけではなさそうだ。

たまに誰かが焚き火でもしたのか、土が焦げてるところもある。

もし人が入れる森ならば、森を出た直ぐ近くに街かなにかがある可能性が高い。

よしよし、少しずつ希望が見えてきたぞ。


ピイィィーッ!


「!?」


 突然、鷹のけたたましい鳴き声がした。

思わず空を見上げると、最初にみた鉄の鳥がこちらに向かって飛んでくる。

鉄の鳥はまさに鷹のような見た目をしている。

鋭い鉤爪を構え、俺を目掛けて急降下した。


「うおぉっ!?」


 危機感を感じ、咄嗟にアクアアタックを鉄鷹の足に放つ。

見事命中した。しかし、あまりにも急で上手く威力を出せず、ただ弾くだけにとどまった。

鉄鷹はもう一度鳴き、一度上昇する。

少しの間滞空したかと思えば、また俺を狙い降下してきた。

さっきダメージは入れられなくても対処はできたおかげで、俺は非常に冷静だった。

ずっと空中から狙われればこちらが不利なので、地上に引きずり落とすため今度は翼を狙う。

威力に全振りして、大きさを抑え、鉄鷹の降下に合わせて勢いよくアクアアタックを放つ。

的は大きかったため、容易に当たった。

そしてしっかり片翼を貫通した。

しかし、それだけでは鉄鷹の飛行を封じられなかった。貫通したといっても空いた穴は極小で、しかも片方だけだからあまり影響がないようだ。


 何度も急降下する鉄鷹にタイミングよくアクアアタックを当てる、単なるリズムゲーが始まった。

鉄鷹はアクアアタックに被弾すると、ひるんで上空に戻っていく。

途中、胴体に命中したが、翼より硬くノーダメだった。鉄の羽毛は飾りじゃないらしい。

鉄鷹は翼を使って強風を起こし、俺を吹き飛ばそうとしてくる。

俺は地面に生えてた雑草を掴み必死に耐える。雑草の根の強さに感動した。

鉄鷹の猛追は続く。

何度もアクアアタックを放ち、強風に耐えた俺は体力を消耗し、翼を傷つけるのもかなわなくなってきた。

魔力自体はまだ十分にある。けれど肉体的疲労と魔力は関係ない。

疲労により焦りが出てきた。鉄鷹は、さすがモンスターというべきか、疲れなど微塵も感じさせない。

とうとう、アクアアタックが当たってもひるまなくなってしまった。

鉄鷹は勢いを殺さず迫ってくる。

トラックとは違い、明確な殺意を抱いた鉄の塊。

俺は死を覚悟し目を瞑って、自分自身を庇うように腕を前に掲げた。


シャアアァッ!


ビエエェッ!?


 鋭いなにかの鳴き声と、鉄鷹の驚いたような鳴き声とともに、ずしんと地面が震える。

おそるおそる目を開けると、なにやら鉄鷹が地上で悶えていた。ひどい地鳴りはあの巨体が地に落ちた衝撃で起きたようだ。

鉄鷹は身をよじり、翼をはためかせ、必死に何かを振り落とそうとしている。

よく観察してみれば、鉄鷹を悶えさせている者の正体が分かった。


「蛇…?」


 毒々しい色をした蛇が、鉄鷹の首を絞めあげていたのだ。

鉄鷹は悲鳴を上げ、これでもかというほど暴れまわる。散々のたうち回った挙句、蛇ごと木に突撃し、その衝撃で蛇は地面に叩きつけられてしまった。

蛇は鎌首をもたげ、鉄鷹を威嚇する。

鉄鷹も完全にターゲットを蛇に変更したようで、威勢よく翼を震わせた。

客観的に見て、蛇に勝ち目はなさそうだ。

まず蛇のほうが鉄鷹よりはるかに小さい。カラスとミミズのサイズ感である。首を絞めれたのが不思議なくらいだ。

さらに、なぜか蛇は大怪我を負っている。深い切り傷が多い。

なんで喧嘩を売ったんだ?と聞きたくなるような状態である。

こっちとしては、逃げる隙ができて大変ありがたいが。

 蛇に鉄鷹を押し付けてとんずらここうとしたが、ちょっと動いた瞬間鉄鷹が翼を振って羽毛を飛ばしてきた。

そんなことできたのかお前!

ヒュンっと音を立て、羽毛は俺の頬を掠め地面に突き刺さる。鉄鷹は俺を逃がすつもりはないらしい。執念深いな。もちもちほっぺが切れてしまった。

というか、さっき俺と戦ってた時はそんなことしなかったじゃん。もしかして舐めプされてたのか?

 鉄鷹は蛇を殺したら俺も殺す算段なんだろう。

蛇頑張って!

勝利した蛇が俺を襲う可能性もあるけど、鉄鷹よりかは勝てそうだから大丈夫。多分。


 蛇が、羽毛を飛ばして隙ができた鉄鷹の足に巻き付く。そのまま器用に胴体まで登る。

鉄鷹は再び暴れだす。鉄鷹には手がないから、体に密着している蛇をどうにかする術がないようだ。

蛇はいつのまにか鉄鷹の首元まで到達していた。

今度は首を絞めず、思いっきりかぶりつくと、そのまま羽毛を毟り取る。

鉄鷹のピンク色をした柔肌が露わになる。鉄鷹は金切り声をあげてさらに激しく暴れた。

蛇は振り落とされないよう鉄鷹の首に巻き付き、露出した柔肌に牙を突き立てた後、自ら地面に降りた。

やっと蛇がとれた鉄鷹は素早く上昇する。そしてお得意の急降下。一気にケリをつけるようだ。

対する蛇は静かに鉄鷹を見つめている。まるで、もう勝負はついた、といっているみたいだ。

空に舞い上がった鉄鷹の挙動が、ふいにおかしくなる。

急にふらふらと体を不自然にゆらし、そのまま重力に従い落ちてきた。殺虫剤を吹きかけられた虫に似ている。

鉄鷹はビクビクと痙攣し、嘴から血と泡を吐き出すと動かなくなってしまった。

 蛇の毒にやられてしまったのだろうか。なんか毒持ってそうな色してるし。


 戦いの勝者は蛇であった。

かなり予想外だ。

重傷を負っていた蛇は力尽きたようで、その場でへたりこんでしまった。

ラッキー、このまま逃げよう。

鉄鷹と蛇を背に歩き出す。

いやあ本当に運がよかった。蛇には感謝しかない。

鉄鷹はなかなかに強敵だった。

 鉄鷹戦を経て課題ができた。大まかには二つ。

一つ目は攻撃に決定打がないこと。攻撃手段がアクアアタックしかなかったため鉄鷹をしとめきれなかった。大技の一つでも編み出そう。

二つ目は、単純に体力。魔法を使うときは、魔力と一緒に体力も消耗するのだ。これから体力づくりもしていこう。

魔法使いって非力で運動不足なイメージがあったけど、結構体力必要なんだな。

この世界で強い魔法使いってムキムキマッチョだったりするのかな?


 あれこれ考えているうちに俺の足取りは重くなる。

あの蛇のことが頭から離れないのだ。

助けてもらったのに放っておいてきてしまった、という罪悪感に時間差でさいなまれる。

心の中で、『モンスターなんだし放置でいいデショ』と言う俺と、『命の恩蛇に恩を返すべきだよ』と言う俺が戦っている。

これが心が二つある、という状態か。

でもなぁ、戻ったところで治す手段がないしなぁ。

んー、水魔法の感じ治癒魔法も案外あっさり…?

いや、治癒魔法って先天的な才能が必要そうじゃない?だから異世界物で聖女が重宝されるんじゃん。

まあ、物は試しってやつか?そうだよ、やってみる価値はある。もし治癒魔法が使えるようになったら、多少の怪我の心配はいらなくなる。

 しばらく悩み、考え、結局戻ることにした。

助けなかったことを後悔するより、助けたことを後悔するほうがいい!誰かが言ってた!!言ってないかも!!!


 元居た場所に戻ると、蛇と鉄鷹の死骸はしっかり残っていた。

蛇は最後に見た場所から少しも動いていない。もう手遅れか?

にじり寄ると、微かに体が上下していた。よかった、まだ生きてる。

意識があるか確認のためちょっとツンツンしてみる。

はんのうがない。まるでしかばねのようだ。

襲われる危険性はないだろう。


 鉄鷹の死体の側でやるのは気分的に嫌だったので、蛇を引き摺りながら場所を移動する。

蛇は鉄鷹と並ぶと小さかったが、実際は結構でかい。太さは俺の手首よりあるし、長さは1m以上ある。結構重い。怪我を増やしているような気がする。

 しばらく歩いて、ある程度鉄鷹の死体から離れた。

最初に、水魔法で蛇の体を綺麗にする。引き摺りまわしたせいで土だらけだ。

溺死させないようにちゃんと首を持ち上げる。蛇は瞼がないせいか、動かないのに目が開いていてちょっと怖い。よく見れば、蛇の瞳は透き通った飴色で結構綺麗だ。鱗は紫紺一色で、日光に照らされ鈍く光っている。イケ蛇だイケ蛇。

 おっと、ゆっくり観察してる場合じゃなかった。早急に治療に取り掛からなければ。

今の時点では、主人公の歩く=ハイハイです。

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