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familiar  作者: 酔海無鱗
第一章
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第一話『攻撃手段を身に着けよう』

 目が覚めると、さわやかな風が頬を撫でた。

青すぎる空が目の前に広がっていた。上体を起こそうと力を入れるが、頭が重くてうまくできない。

寝返りを打って、全力で踏ん張ってやっと起き上がれた。それだけでドッと疲れる。

あたりを見渡すと、どこまでも森が広がっている。空気がやけに澄んでいて、胸いっぱいに吸い込むと少しだけ気持ちが落ち着いた。

 眼前を、頭と同じぐらいのサイズの虫が横切る。その瞬間強い風が吹き、金属光沢のある羽毛を持った、見上げるほどの大きさの鳥がその虫を丸のみにし飛び立った。


 ここは間違いなく、異世界みたいだ。


 少し俯くと、小さくムチムチした手があった。自分が思ったように動かせる手が。

 自分でも驚くほど今の状況を冷静に把握する。

俺は、異世界の森に赤ん坊の状態で放置されたのだ。しかも全裸。

 せっかく起き上がったが、再び寝転がる。目を瞑り、木の葉が風に揺られる音に耳を傾ける。

…これはきっと罰だ。

なにか特別な者になれると調子に乗ったから、渇を入れられたんだ。

これからどうしようか。赤ん坊の体じゃできることが少ない。

とりあえず必要なものは、食料と水と服と住むところ。まあ服はなくてもなんとかなるだろう。ちょっと気恥ずかしいけれど。


 謎の声は、迎えに来ると言っていた。それまで生き延びるのが第一目標だ。

この森にはなんのモンスターがいるんだろう。

さっきの鉄の鳥みたいなのがゴロゴロいるようじゃ困る。さっきは興味を持たれなかったからなんとかなったものの、いざ戦うとなったらきっとあっさり殺される。

 まずは自衛する術を身につけなければ。

今の俺に使えるのは魔法だけだ。けれど、ちゃんと俺に扱えるだろうか。

 異世界物のアニメの真似事でもしてみるか。

もう一度起きて、腕を前にかざす。何の魔法がいいだろう。水分補給用に、水魔法を覚えることにしよう。

目をギュッと瞑り、集中する。体中の血流を意識して、一緒に体を流れる魔力を感じる。

そして、手の平から水が出るよう強く強くイメージする。

すると、規則正しく巡っていたはずの血流が手の平に集まり、熱が籠り、

スゥっと一筋の水が、手の平から流れた。


「あれ、詠唱は…?」


 何も唱えずに水が出た。不思議だが、今は放っておくことにする。どうせなんて唱えればいいか分からないし。

 手の平から流れた水を舐めてみる。変な味はしない。ちょっと冷たい。飲料水に代用しても問題なさそうだ。これで水の心配はいらない。やったね。

 案外あっさりできて拍子抜けだ。

同じことを何度も繰り返すと、手から出てくる水の量がどんどん増えていく。

次はこれを攻撃に転用する。

玉を作って打撃するもよし。刃のようなものを作って斬撃するもよし。

単純に相手を燃やしてダメージを入れられる炎魔法の方が攻撃に適しているかもしれないが、水魔法をもう少し極めてからでもいいだろう。

たくさんの属性の魔法を使えて悪いことはないが、どれも中途半端だといつか必ず通用しなくなる。

焦らず、1つずつ習得していこう。

そもそも適正属性みたいなのがあって使えないかもしれないし。


 最初は簡単そうな水の玉から作ってみる。

 少々苦戦したが、コツを掴んだらすんなりできた。イメージ力がものをいうようだ。

しかし、玉を飛ばすのはなかなか一筋縄ではいかなかった。

想像はバッチリなのに、水の玉は虚しく地面に落ちる。

腕を一緒に振ったり、水の玉のサイズを小さくしたりしたが、一向に飛んでいく気配がない。

 …やめたくなってきちゃった!

z世代の男子中学生そんなに我慢強くない。

でも、防衛手段がないと一瞬でプチッだ。

地球にいた頃と同じ感覚で怠惰に過ごして生き延びられる状況じゃないんだぞ!と自分に言い聞かせ、試行錯誤を重ねる。

地面がビッチャビチャになり、俺の体より大きな水溜りができて、やっと水の玉は飛んでいった。


「よっしゃぁ!」


 立ち上がって歓喜の舞を舞いたかったが、赤ん坊だからか立てなかった。

地味な赤ん坊デバフが痛い。

 水の玉は、魔力で無理矢理押し出したら飛んでいった。割と力技だ。

少量の魔力で結構飛ぶから問題ないはず。

しかし、攻撃に使うにしては全然威力が足りない。

最低、木をへし折れるぐらいにはなりたい。

ちなみに、今までバカバカ魔法を使っているけど、魔力切れになる気配がない。謎の声のおかげだろう。


 威力を増すのは、水の玉を飛ばすよりも簡単にできた。

魔力でゴリ押す、という手段を身に着けたからだ。

単純に押し出す魔力を増やし、更に水の玉に回転をかけるように勢いよく押してやれば、簡単に木はへし折れた。

素晴らしい成長速度。天才かもしれない。

この水玉打撃はアクアアタックと名付けよう。


 太い木の幹が簡単に折れるのが楽しくて、何も考えずにアクアアタックを打ちまくる。

ただ飛ばすだけじゃ退屈になってきて、グニャグニャと軌道を曲げて飛ばす。かなりの集中力を要し、少しでも気を抜くと落ちる。

しかも滅茶苦茶スピードが遅くなった。

息抜きの遊び感覚で始めたのに、いつの間にかムキになって、気づけば周りの木を殆ど折ってしまっていた。軽い自然破壊だ。

ま、まあ、アクアアタックのコントロールをマスターしたし、木の犠牲は無駄じゃなかったということで。


 なんとなく罪悪感が湧いたので、その場を離れる。

ハイハイしかできないから進む速さはカタツムリに負けない遅さだ。

本気出せばそれなりのスピードが出るのか?

赤さんに教えを請いたくなってきた。

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