表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の彼は御曹司  作者: アルケミスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/37

「ねえ、ちーちゃん。

 あのリーダー、なんか感じ悪くない?」


「そう?

 しっかりしてそうで、好きだけど」


「……へえー、そう……」


 仕事大好き人間のちーちゃんに聞いたのが間違いだった。


 赴任初日だというのに、リーダーはにこりとも笑わないし、誰も寄せつけないような冷たい空気を醸し出していた。


 今は、フロア全体を見渡せる場所に置かれたデスクで、黙々と書類に目を通している。


 あの雰囲気、好きになんて、とてもなれそうにない。


 でもまあ、いいや。


 私はもう会社を辞めるわけだし、高城リーダーの下で働く期間も、そんなに長くないはず。


 早いところ仕事を終わらせて、今日は光太に会いに行こう。


 このまま連絡をとらない状態が続くと、自然消滅しちゃう気がして、不安で仕方がない。


 光太だっていいかげんに、あの夜のことを謝ろうと思ってくれているだろうし。


 彼から連絡をしにくいなら、こっちが行ってあげればいいんだ。


 光太の口から、きちんと説明を聞きたい。


 ちーちゃんにも、昼休憩で改めてちゃんと聞いてもらおう。


 そう思っていたのに。


「私、昼休み返上。

 仕事するわ」


 と、あっさり言われてしまった。


 まったく、ちーちゃんは真面目すぎ。


 リーダーに触発されちゃったみたいで、やる気に溢れた目で、モニターを見つめている。


 仕方なくコンビニでお昼を調達し、ひとり寂しく給湯室へ向かうと、そこには高城リーダーがいた。


 手元を見ると、コーヒーを淹れているみたい。


「あっ……、お、お疲れさまです」


 改めて近くで見ると、本当に美形でスタイルがいい。


 足は長くて、腕にはほどよく筋肉がついているのがわかる。


 インスタントコーヒーを淹れる姿すら、色気を感じさせて悔しいけど、見とれてしまいそうになる。


「ああ、お疲れ」


 彼はこちらをちらっと見てそう言っただけで、また視線を手元に戻した。


 やっぱり、ぶっきらぼうな言い方。


 休憩中くらい、もう少し愛想よくできないのかな……。


 だけど、こんな狭いところにふたりきりで黙っているのも気まずいし、何か話しかけてみるか……。


 そんなことを考えて、私は口を開いた。


「あの、リーダーって、ここにいらっしゃる前は、どちらの部署にいらしたんですか?」


「え?」


 すると、私の突然の質問に驚いたのか、彼は目を丸くしている。


 何かいけないことを聞いちゃった?


 当たり障りのない質問をしたつもりだったけれど、もしかして、余計なことだったのかも……。


「あ、いえ、なんでもないです。

 変なこと聞いて、すみませんでした」


 一応会話をしようとしただけで、そんなに興味があるわけでもないし。


 そう思っていたはずが、リーダーの予想外の反応に焦ってしまったのか、カップ麺にお湯を入れようとした途端、手が震えてカップが滑り落ちそうになった。


「きゃ!」


「危ない!」


 カップを取り落して、ポットから注ごうとしたお湯が手にかかりそうになったところを、リーダーはとっさに私の腕を掴んで自分のほうに引き寄せた。


「大丈夫か!?

 ヤケドしなかったか!?」


「あ、だ、大丈夫です……。

 ありがとうございます」


 見上げると、至近距離に整った顔があり、一瞬ドキッとしてしまう。


 そして今気づいたけど、この人、いい香りがする。


 落ち着いた大人の、甘い香りだ。


 って、私は何を考えているのよ。


 そう冷静になって床を見ると、カップ麺の中身が零れていた。


 お昼ご飯がなくなっちゃったとがっかりしていると、リーダーが言った。


「……お前の昼飯、カップ麺だけなのか?」


「い、いえ、いつもは江本さんとランチに行くんです。

 でも今日は彼女、お昼ご飯いらないって言うから、これにしたんですけど……あーあ……」


 私って、本当にトロいな……。


 こんなんだから、ちーちゃんも呆れちゃうのかも。


 しょんぼりとうなだれていると、リーダーが意外な台詞を口にした。


「ふぅん……。

 じゃあ、一緒に飯でも行くか?

 オレも今からだし」


「えっ!?」


 リーダーと一緒にランチなんて、即答で拒否したいところなんだけど……。


「近くに、いい和食の店があるんだよ。

 どうだ?」


「は、はい……」


 思わず返事をしてしまっていた。


 だって、このとき初めて、彼の笑った顔を見たから。


 さっきまでの仏頂面から、打って変わって穏やかになったリーダーの表情に、つい引き込まれてしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ