27
盛り上がるパーティーに背を向けて、私は会場をあとにした。
打って変わって静かな廊下を進み、惨めな気持ちでエレベーターホールに向かっていたときだった。
誰かに腕を掴まれ、非常階段のほうへ引っ張られる。
「どこに行くんだよ!?」
息を切らして、私にそう言ったのは、修弥だった。
「修弥!?
どうしたの!?」
なんでわかったんだろう……。
「それは、こっちの台詞だろ?
梓のことが気になって見ていたら、急に部屋を出ていくから。
どうしたのかと思って追いかけてきたんだよ。
どこへ行くつもりだったんだ?」
まさか、来てくれるなんて。
胸がいっぱいの私は、呆然と修弥を見つめることしかできなかった。
「梓?
どこへ行くつもりだったんだって、聞いてるんだよ!」
「あ、うん……。
帰ろうと思って……」
「帰る?
なんで?」
どうしよう。
本当のことを言うべき?
怪訝そうな顔をしている修弥を見ながら黙っていると、イライラしたようなため息をつかれた。
「あのさ、梓。
今日は大事なパーティーなんだよ。
勝手なことするなって」
そんなこと、言われなくてもわかっているわよ。
本当は素直になりたいのに、修弥の態度に無性に腹が立ってきた。
「別にいいじゃない。
私がいなきゃいけない理由がある?」
つい、突っかかるような言い方をしてしまう。
だって会長にも、修弥にも、声をかけるなって言われたのよ。
人前で『おめでとう』も言えない私の気持ち、修弥にわかる?
「おい、なんだよ、その言い方」
「だから!
私がいる必要はないって、そう言ってるのよ!」
もうせっかく堪えていた涙が、零れてきたじゃない。
「……そうかよ。
だったら好きにしろ」
明らかに怒った口調で修弥は言った。
「好きにするわよ」
私が吐き捨てるように言うと、修弥は黙ったまま非常階段のドアを乱暴に開けて、パーティー会場に戻っていった。
「仕方ないじゃない……私は、認められてないんだもん」
取り残された私は、独り言を呟く。
そしてその場にしゃがみ込むと、声を押し殺して泣いた。
こんなに泣いたのなんて、光太に失恋したとき以来かも。
本当に最悪の気分だった。
修弥の出世を一緒にお祝いしたかっただけなのに、こんなことになるなんて。
マンションに帰った私は、バルコニーから夜景を眺める。
もう二十四時を回ったのに街の明かりは輝いているし、車も多い。
パーティー、もう終わってるよね?
でも、きっと二次会、三次会があるんだろうし……。
修弥、今夜も帰ってこないのかな。
そんなことを考えると、また涙が溢れてくる。
つき合っていて、お互い好きなのに、
こんなに不安な気持ちになるなんて……。
やっぱり恋愛って難しいよ。
そのときだった。
ドアの鍵が開いて、修弥が帰ってきた。




