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私の彼は御曹司  作者: アルケミスト


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25

 本社から社用車で支店へ戻る途中、渋滞にはまってしまった。


 クラクションが鳴り響き、どこまでも続いていそうな車の列を、運転席の修弥はぼんやりと眺めている。


 いったい、何を考えているの……?


「梓、今、何を考えてる?」


「えっ!?」


 まさに今、私が思ったことを言われて、びっくりしちゃった。


 こういうの、前にもあったよね。


「私は、修弥が何を考えてるのかなって思ってた」


「なんだよ、それ」


 私の返答に、修弥がプッと吹き出す。


「オレは、梓の心が変わらないかなって、心配なんだ。

 ……情けないだろ?」


「そんな!

 変わるわけないよ!

 私だって、離れ離れになるのが心配……」


 同じことを考えていたのだとわかっただけで、心が少し軽くなる。


 そんな話をしていると、少しずつ車の列が動き始めた。


「そのことなんだけど」


 そう言うと、修弥はぐっとアクセルを踏み込んだ。


 どこへ向かっているんだろう。


 ようやく快適に流れ始めた道路を、修弥は黙って進む。


『そのこと』ってなんのこと?


 聞き返したかったけれど、それができない雰囲気が修弥から感じられて、私は口を閉ざす。


 支店とは正反対の方向へ走って、辿り着いた場所は、大きな川沿いだった。


「寄り道。

 天気いいし、ちょっとだけ歩かないか?」


「え?

 うん、いいよ」


 路上駐車場に車を停め、外に出た私たちは、手を繋いで川沿いの道を歩いた。


 舗装された道は、犬の散歩をする人やジョギングをする人で、賑わっている。


 そして対岸には、オフィスビル群が見えた。


「気持ちいいね」


「だろ?

 海が近いからな」


 そうなんだ。


 どうりで、潮の香りがすると思った。


 緊張で汗をかいたせいもあってか、風の冷たさがちょうどいい。


「ねえ。

 さっき、何が言いたかったの?」


 ゆっくり歩きながら私がそう聞くと、修弥は柵に近づき、対岸を見つめた。


「近い将来、本社をあの川沿いのオフィス街に移す予定なんだ」


 少し重みのある修弥の発言に、私は目を輝かせる。


「そうなの!?

 すごい!」


 あの一帯は、有名企業が軒を連ねているエリアだよね?


「まだまだ、事業を拡大していく予定だしな。

 あっ、このことは、誰にも言うなよ?」


「うん。

 わかった」


 そんな大事な話、私にしてくれるんだね。


 じわりと、あたたかい気持ちになる。


「それで……当分仕事が忙しくて、梓に会う時問も作れそうにないんだ」


「あっ、そっか……うん。

 仕方ないよ」


 覚悟はしていたけれど、やっぱり寂しい。


 だけど、それは言っちゃいけない。


 すると、修弥はひと呼吸おいてから、思い切るように口を開いた。


「……だから、梓。

 オレと一緒に暮らさないか?」


「えっ!?」


 驚いて、思わず大声をあげてしまう。


 そ、それは……同棲ってこと!?


「オレ、梓と離れるのは正直寂しい。

 それに……梓がそばにいてくれるだけで、仕事ももっと頑張れるからさ」


 そんなふうに思ってくれていたの?


 嬉しさで、涙が込み上げる。


「嬉しい。

 私も、修弥のそばにいたい……」


 そう言ってゆっくり抱きつくと、気持ちを確かめるように、修弥も私の身体を抱き締めた。


「梓。

 ずっと、ずっと一緒にいよう」


「うん。

 私、修弥となら、どんな壁も乗り越えてみせるから」


 不安は残るけど、修弥と一緒ならきっと私も強くなれる。


 そんな気がする。


「頼もしいな。

 オレもどんなことがあっても、梓を守るよ」


 修弥の手に、力が入る。


 その腕の力強さに、私の胸は苦しくなった。


 幸せな未来までに、いったいどれくらいの困難が待ち受けているんだろう。


 だけど、きっと大丈夫。


 そう思っていれば、絶対にかなうよね?


 私と修弥の幸せな未来は。


 いつか必ず、本当の意味で、あなたのそばにいられるように。


 同じ夢を、同じ希望を、同じ未来を、いつまでも、私は修弥と見ていきたい。


 ずっと、ずっと……。


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