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私の彼は御曹司  作者: アルケミスト


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『梓が好きだ。

 だからずっとそばにいてほしい』


 その言葉を、私はどんなことがあっても信じることにした。


 そして数日後、修弥が社長の息子だということは、みんなが知ることになった。


 もちろん、私との関係も。


『隠してても必ず噂になるから、きちんと話そう』


 修弥から、そう言われたんだよね。


「まさか、梓とリーダーがつき合ってたなんて……ここ最近で一番の驚きだわ」


 仕事が一段落すると、ちーちゃんが声をかけてきた。


「ちーちゃん、ごめん!

 黙ってて」


「ううん。

 別にいいんだけど……」


 彼女がどんな反応をするか、ちょっと怖くてドキドキしていたけれど、ちーちゃんは冷静だった。


「ところで大丈夫なの?

 かなり、大きな噂になってるけど」


「……実は、あんまり大丈夫じゃなくて。

 ふたりで社長に呼ばれちゃった。

 だからあとで、本社に行くの」


「ええー!!」


 さすがに、社長の耳に入るのは早い。


 私たちの話を社長は誰かから聞きつけてさっそく呼び出されたのだ。


 やれやれ、というような顔でちーちゃんが言う。


「いろいろと難関が多いね、梓の恋愛は」


「うん。

 なんでだろう……」


 はあーと、ため息が出ちゃう。


「そういう人を選ぶからよ。

 でも、私は応援する」


「本当!?

 ちーちゃんは、味方でいてくれる?」


 相手が御曹司とあって、まわりからは嫌みも言われるだけに、最近ちょっと凹み気味。


 だけど、ひとりでも応援してくれる友達がいるとわかっていれば、頑張れそう。


「うん。

 私、社内恋愛には興味ないから」


「ハハ……。

 ちーちゃんがそういう人でよかった」


 このサバサバした性格、私は大好き。


「それより、社長とのこと!

 そっちをちゃんと考えなよ?」


「はぁい」


 反対、されるよね?


 修弥は社長に、なんて言ってくれるんだろう?


 緊張はするけど、私は信じている。


 反対されたって、私たちの関係は終わらないって。


 支店勤めの私が、社長室に入ることになるなんて、想像もしていなかった。


 本社ビルの中にある社長室は、ドアを開けるとまず秘書室があり、その奥の部屋が社長の執務室、という造りになっている。


 執務室は全面ガラス張りで、オフィス街が一望できた。


 デスクの前には、革張りのソファ。


 さらに奥にも部屋があるのか、ドアが見える。


 この部屋も、いずれは修弥が使う場所なんだよね?


 そう思うと、この場所も、特別に感じられるから不思議。


 こんな状況なのに、私は呑気にもそんなことを思ってしまう。


「お前たちを呼んだ意味は、わかるよな?」


 ソファに向かい合って座る社長は、すごいオーラを放っている。


 威圧感があり、長い時間、目を合わせられなかった。


 社内報と入社式でしか見たことはなかったけれど、こうやって間近で見ると、やっぱり修弥は社長に似ている。


 社長も引き締まった体型の二枚目だ。


「最初に言っておくけど、オレは、梓とは別れない」


 修弥は社長をまっすぐに見据えていった。


「ああ。

 今は別れろとは言わないよ。

 そう返されるのはわかっていたからな」


 やっぱり反対なんだ。


 はっきり『別れろ』と言われなくても、突き放すような口調でそう言われたら、イヤでもわかる。


「それより修弥。

 お前は本社に戻す。

 これは会社のルールだ」


「……わかった」


 修弥、やっぱり本社に戻っちゃうんだ。


 じゃあ、もう今までみたいに、毎日会えなくなっちゃうんだね。


 でも、それは仕方ない。


 会社の決まりだし、修弥はいずれ、この会社のトップに立つ人。


 恋愛を優先している場合じゃないんだから。


 私もちゃんと理解しなくちゃいけない。


「それから、香川梓さんだったね?」


「は、はい!」


 突然、社長が私に声をかけてきた。


 反射的に、背すじがピンと伸びる。


「君は、修弥とは覚悟の上でつき合っているんだね?」


「え?」


 それは、どういう意味?


 私が言葉に詰まっていると、修弥が社長に食ってかかる。


「オヤジ!」


「お前は黙っていなさい。

 どうなんだね?」


「あ、あの……」


 社長の本意がわからないけど。


 でも……。


「これから先、想像以上に大変なことがあるだろうとは思っています」


 きっと、甘い気分を味わわせてもらえなくなるくらいに。


 噛み締めるように、私は言葉を続ける。


「それでも、私は修弥さんが好きです。

 次期社長でも社長じゃなくても、修弥さんという人自身を、愛しています」


 それだけは、揺るぎない思い。


 すると、社長は小さくため息をついた。


「……今は、全面的に賛成はできない」


「……はい」


 わかっている。


 でも、改めてはっきり言われると、ショックだった。


「だから、修弥に梓さん。

 ふたりがいつか結婚したいと私に行ってきたときに、もう一度答えを出そう」


 そう言って、社長はデスクへと戻った。


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