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私の彼は御曹司  作者: アルケミスト


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 修弥に初めて抱かれた夜から、一週間が経った。


 私はやっぱり、気がつけば修弥のことを考えてしまっている。


 お互いのデスクの距離でさえ遠くに感じるし、会議で向かい合う距離でさえもどかしい。


「報告は以上です。

 みなさんのおかげで、目標数字を大幅にクリアしました」


 修弥は、分厚い資料を手に取りながらそう言った。


 いけない。


 会議中なのにぼーっとしてしまっていた。


『目標達成』の言葉に、拍手が起こる。


 自慢じゃないけど、業績が決してよくなかったうちの支店の売上を、こんなにアップさせるなんて。


 修弥の采配に感心する。


 やっぱり修弥って、すごい人なのかも。


「このまま成績を上げ続けられれば、常勝支店の仲間入りだからな」


「実は高城リーダーは、 この支店の業績の底上げのために赴任されていました。

 こうして結果も出たことなので、晴れて本社にもどられます。

 まだ、はっきりとした予定はわからないそうですが」


 支店長の言葉に、笑みを浮かべて頷く修弥とは裏腹に、私は目の前が真っ暗になったような気がした。


 本社に戻るなんて聞いていない。


 それは、営業マンもちーちゃんも同じで、みんな驚いてざわつき始める。


「監査じゃなくて、底上げが目的だったのね」


 ちーちゃんの呟きにも、反応できないくらいにショックだった。


 修弥が本社に戻ってしまったら、ほとんど休みがとれない彼と、プライベートでしか会えなくなる。


 想像するだけで、不安に駆られて呆然とする。


 もしかして、配属のことを話すって、このことだったの?


 いろいろな思いが頭を駆け巡り、会議が終わってからも、私は放心状態だった。




「香川、ちょっといいか?」


 会議以降、まったく集中できずにいる私を、修弥が呼ぶ。


「……はい、リーダー」


 六畳ほどの小さな応接室に、私は連れていかれた。


 何を話されるのかドキドキしながらドアを閉めた途端、修弥は私を抱き締めた。


「ちょっ!?

 何!?」


「シーッ。

 大きな声を出すなよ。

 怪しまれる」


 人差し指を立て口元に当てながら、修弥はしかめっ面をした。


「だって……急にこんなこと。

 ……びっくりするよ」


 違う意味で心臓がドキドキしている。


 それにしても、修弥って意外に大胆なことするのね。


 私は面食らっていた。


「お前、会議が終わってから、ずっとぼーっとしてたろ?」


 修弥は心配そうに私を見つめる。


 それも、かなりの至近距離で。


「あ、うん……わかっちゃった?」


 苦笑いで誤魔化すと、彼はため息をついてから、軽く睨むような視線を向けてきた。


「無理して笑うなよ。

 さっき支店長から発表されたこと、気にしてるんだろ」


「うん」


 だって、修弥を問い詰めるようなことは、できるだけしたくないんだもの。


「本社に帰るって、まだ決まったわけじゃないから」


「でも、もし戻ることになったら?

 可能性としては高いんでしょ?」


「もちろんそうだけど、そうなったからって変わるものは何もない。

 距離で負ける程度の気持ちじゃないよ。

 梓だってそうだろ?」


「……うん」


 私の不安な気持ちなんてお見通しの修弥は、私の両肩に手を置き、必死にそう言った。


 こんなふうにフォローをしてくれる彼の優しさが嬉しい反面、いつまでも心配ばかりかける自分がイヤになる。


「ありがとう、修弥。

 そう言ってくれて安心した」


 強がっているのがわかったのか、修弥は何も言わずにもう一度、私を抱き締めた。


「でも、やっぱり……修弥が帰っちゃったら寂しいな」


「泣くなよ、梓」


「ごめんね。

 だけど……」


 寂しいよ。


 不安だよ。


 私のそばを離れないでよ。


「元彼みたいに、私から心が離れたりしない?」


「するわけないだろ?

 何言ってんだよ」


「うん。

 ごめん」


 ああ。


 やっぱり光太のことは、 私の中でトラウマだ。


 あんな思い、もう二度としたくない。


「信じろよ、オレを」


 力なく頷いた私に、修弥はキスをした。


 もっと、もっとキスをして。


 私の不安を、修弥のキスで消し去って。


「なあ梓。

 オレとつき合ってること、みんなに知られてもいいか?」


 唇を離した修弥が、おもむろに言った。


「えっ?

 どうしたの、突然」


 急に思いもよらないことを言われて、涙が止まる。


「どうだ?」


「……私は、もちろんいいけど。

 でもどうして急に?

 まだ無理だって言ってたじゃない。

 私に気を遣ってるなら、やめて」


 そう言うと、修弥は優しく微笑んで首を横に振った。


「そうじゃない。

 オレが梓との関係に、きちんとけじめをつけたいだけだよ」


「本当に?

 ……それなら、すごく嬉しい」


「ありがとう。

 オレは、全力でお前を守るから」


「うん。

 信じてる」


 そのことで、どんな噂になろうと、私は平気。


 でも、どうやって言うつもりなんだろう?


 どこかで正式に発表するとか?


 そんなことを考えている私に、彼が言った。


「なあ、今度の会社のパーティー。

 梓も一緒に来てくれないか?」


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